2018年のサッカーを振り返ろうとすれば、ロシアW杯は外せないテーマになる。
初戦のコロンビア戦で、PK&赤紙退場という幸運なスタートを切るも、第3戦のポーランド戦でフェアプレーポイントなる新制度に混乱。

そして決勝トーナメント1回戦のベルギー戦では、後半のロスタイム、ラストワンプレーに迫った段で、逆転弾を浴敗退する。
スポーツは筋書きのないドラマだと言われるが、もし筋書きがあったとしても、この筋を思いつく人はなかなかいないと言いたくなる、ドラマ仕立てで、論点満載のロシアW杯だった。

PKに加え、相手選手まで退場にしたコロンビア戦の判定は妥当だったのか。フェアプレーポイント欲しさにボール回しに終始した日本の終盤の戦い方は、フェアプレーの精神に抵触しないのか。
そして、逆転弾を浴びたベルギー戦。本田圭佑が最後に蹴ったコーナーキックは、ショートコーナーにすべきだったのではないか。直後、ベルギーに浴びたカウンターは、イエローカード覚悟で止めるべきではなかったか。

絶対的な正解が見いだせないところが、サッカーの奥深さであり魅力だ。しかし、様々な論点があるにもかかわらず、議論を避ければ、その魅力の真髄に迫ることはできない。

先日、NHKは「ロストフの14秒」と題し、NHKスペシャルという看板番組の枠で、ベルギー戦の最後のプレーに迫っていた。
失点に至った原因について多くの人物にインタビューを行い、証言や意見、感想を得ながら、映像を駆使し、様々な角度から失点に至った原因を掘り下げようとする、まさに2018年の年の瀬を飾るに相応しい力作だった。

しかし、この番組についても意見はある。感想が湧いてくる。重要なポイントを外している。僕にはそう見えた。50分に及ぶ検証番組の中で、西野朗監督が登場して見解を述べたのは、わずか一度きり。
30秒にも満たなかった。2-0になった後に送った指示が、中途半端だったことを悔やむ言葉こそ引き出していたが、ピッチ内で起きたプレーを徹底検証しようとしたとき、現場の最高責任者の声がそれのみでは、説得力に乏しくなる。

長友佑都は「2-0になった後、攻撃的に行きすぎたのではないか」と述べていた。ファビオ・カペッロもイタリア人の監督らしく、同様の意見を吐いていたが、肝心要の西野さんはどう考えていたのか。

指示を送るチャンスはいくらでもあった。日本が2-0としたのは後半7分。フェルトンゲンに不運なヘディングシュートを決められ2-1とされたのは後半24分で、フェライーニに2-2となる同点ゴールを決められたのは後半29分だった。
西野さんは後半36分、山口蛍と本田圭佑を同時に柴崎岳、原口元気と交代で投入している。最悪、彼らにメッセージを伝えることはできたはずだ。彼らに何を託したのか。3点目を狙いに行くのか。
ここは同点で収め、勝負を延長戦に委ねようとしたのか。訊ねるべきはそこではないか。

もっとも、この交代にも問題はあった。2人同時に投入すれば、それに費やされる時間は1人ずつ交代するより短くなる。時間を稼ぐ手段として適切ではない。交代選手にメッセージを託す機会が1回分減ったことも意味する。
強者に激しく追い上げられている弱者の監督のあるべき姿とは言い難い。

さらに、である。この後半36分の山口と本田の同時投入が、最初で最後の交代機会になったことも問題だ。ご承知の通り、交代は90分間に3人まで認められている。日本にはもう1枠の余裕があった。

>>2以降につづく

杉山茂樹 | スポーツライター12/15(土) 9:02
https://news.yahoo.co.jp/byline/sugiyamashigeki/20181215-00107740/

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