■ほとんどのJリーグクラブはブレークイーブンか赤字

続いて各クラブの利益について調べた。ただし、どのクラブも十分に利益が出ているとは言いがたいのが現状だ。
図4を見るとわかるように2017年度は、浦和レッズ、川崎フロンターレ、ジュビロ磐田、FC東京などで営業利益および当期純利益が出ている。しかしそれ以外はブレークイーブンまたは赤字だ。

利益が出ているクラブチームといっても数億円程度である。営業収益規模は数十億円を超えるものの、利益的には中小企業といえる状況で、知名度と比較すると利益規模が伴っているとは必ずしも言えない。

企業決算の場合、当期純利益がしっかり計上され、場合によっては株主に配当が支払われた残りが株主資本として積み上がり、財務体質が強固となる。
財務体質が強固となれば、外部からの借入などによる資金調達がしやすくなり、業績が好調であれば財務レバレッジもかけやすくなる――

といったように、企業の事業拡大を実現するには継続的に当期純利益が計上されることが必要であるのだが、その類推からすると、多くのクラブがダイナミックな業績サイクルを十分に実現できていない状況である。


■20冠の鹿島と2冠の川崎の間にタイトル数ほどの財務規模の差はない

さらに、各クラブの財務状況についてより詳しく見てみよう。
図5は、J1のクラブの総資産とそれに対する純資産比率を示したものである。総資産も純資産比率もいずれもバラつきがあるが、最大のポイントは総資産が40億円を超えるクラブがないということである。

先ほど、ガンバ大阪の新スタジアムの建設費用が150億円だと述べた。年平均40億円の営業収益というJ1クラブの経営状態では、これだけの資金調達は外部の支援がなければ不可能である。
クラブが自前のスタジアムを持つべきか持たざるべきかという議論はさておき、スタジアムを自ら建設・保有できる企業規模にはない。

先日のACL優勝で主要タイトル累計「20冠」を実現した鹿島アントラーズであるが、財務規模と体質について目を向けると、2017年度の総資産は27億円で純資産は17億円。
純資産比率が65%と高く、健全な財務体質とはいえるものの、その総資産や純資産によって他のクラブと大きな差が生まれているとは言えない。

たとえば、現時点で「20冠」の鹿島アントラーズと「2冠」の川崎フロンターレを比べるとタイトル数の差ほどは財務規模の差があるようには見えない。財務規模やその体質は過去の業績の積み重ねであるはずだが、
数多くのタイトルを獲得してきた鹿島アントラーズが他クラブに対して圧倒的な財務力を持っていないことは議論すべき点かもしれない。

これはこれまでの国内リーグ戦やカップ戦の優勝賞金額がそもそも少ないこと、放映権収入を原資とした「ダゾーン」マネーの恩恵にあずかっていないことがあるだろう。
結果として、海外の有力選手が特定のクラブチームへ偏ることはなく、欧州各国のようなビッグクラブは生まれなかった。

もちろん、それは、長い目でみて、J1では拮抗する試合が多いという傾向につながっていると感じるが、Jリーグがさらに飛躍して世界と肩を並べられるクラブを作るという点では課題と位置づけることができる。

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