11/7(水) 11:00配信
https://www.tokyo-sports.co.jp/sports/baseball/1179277/

【広瀬真徳 球界こぼれ話】先日、クライマックスシリーズ(CS)を取材している最中のこと。某外国人選手との談笑の際、ある質問が投げかけられた。

「なぜ日本の野球選手の多くはたばこを吸うんだ? 熱心にトレーニングに励む選手ばかりなのに、そういう選手に限ってたばこを吸う。矛盾していると思わないか?」

 あまりに唐突だったため、思わず答えに窮してしまったが、確かに野球選手の喫煙率は他のスポーツ選手と比べて高い気がする。CS試合前に球場内の喫煙室をのぞくと、主力選手4〜5人が同時に一服している姿があった。おそらく助っ人はそんな光景をシーズン中、毎日見続けたこともあり、チームとは無関係の私に本音を漏らしたのだろう。スポーツ界や一般社会で禁煙が進む中、いまだに多くの野球選手がたばこに依存するのはいかがなものか。

 実はここ数年、各球団では体力維持や故障予防の観点から春季キャンプや新人研修等で積極的に禁煙を勧めている。パ・リーグのトレーナーに聞いたところ、1年に最低2回はトレーナーや栄養士が講師となり、たばこの有害性を選手に説明。一日でも長く選手生活が送れるよう助言を与えているという。にもかかわらず、「残念ながらやめる選手はあまりいない」(前出トレーナー)と嘆く。

 たばこは嗜好品ゆえに、吸うことは自由。ただ、サラリーマンやOLとは違い野球選手はアスリートであり、スポーツで大金を稼ぐプロである。「体が資本」の選手が運動機能を低下させるたばこを手放さない一方で、サプリやマシンを使って肉体強化に励むのは冒頭の助っ人でなくとも疑問に思えてしまう。

 以前、ヘビースモーカーである某チーム主力選手に禁煙を勧めたことがあるが、その選手は「野球はサッカーやバスケと違って持久力が重視されるスポーツじゃないので、たばこの害を意識しづらい。それにシーズン中に禁煙するとストレスがたまり、逆にたばこを我慢することでプレーにも影響が出る。だからやめたくてもやめられない人の方が多い」と胸の内を明かしてくれた。

 だが、シーズン中のパフォーマンス低下を恐れてたばこを吸うのであれば、オフを利用して禁煙を試みればいいだけのこと。シーズン中の成績のための喫煙は言い訳にすぎない。

 11、12月は野球選手にとって一年で最もストレスなく過ごせる時期と言える。選手寿命を伸ばすためにも今オフ、一人でも多くの選手が禁煙に取り組んでくれればいいのだが…。

 ☆ひろせ・まさのり=1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。