水谷八重子×波乃久里子×喜多村緑郎×河合雪之丞×春本由香×瀬戸摩純|1色に染まらないのが新派─古典の名作から「犬神家の一族」まで─

2018年に創始130年を迎えた新派。明治・大正・昭和の日本人の生活や息遣いをそのまま写し取ったリアルな舞台には定評があり、近年は山田洋次監督が演出で参加するなど話題を呼んでいる。本特集では、その歴史を担う劇団新派を牽引する水谷八重子、
波乃久里子をはじめ、歌舞伎から新派に“移籍”した喜多村緑郎と河合雪之丞、そして水谷の弟子として研鑽を積む春本由香と瀬戸摩純が大集合。6人それぞれが思う新派について、ざっくばらんに語ってもらった。

取材・文 / 熊井玲 撮影 / 川野結李歌


新派との出会い

──まず、皆さんそれぞれの、新派との出会いについて教えてください。できましたら入団順に……。

水谷八重子 最初は私ね。私は昭和30(1955)年の8月5日に歌舞伎座での新派公演で初舞台を踏み、師事していた服部良一先生のもと、同じ日に「ハッシャ・バイ」で歌手デビューもして、同時スタートでした。その頃の新派は新作含め5、6本立てで、その中の“今一番新しい人たちを扱った”というような作品にしか私は起用されなくて。
当時の私は銀座を我が庭のように歩いている女の子で、母親(初代水谷八重子、1905〜79年)が新しい風のほしい現代劇にのみ起用されていました。新橋演舞場や歌舞伎座の舞台を、ヒールで闊歩する役ばかり。着物を着たり鬘を付つけたりというのは全部、映画で学ばされました(笑)。

波乃久里子 私の場合は歌舞伎役者の娘ですから、15歳までは歌舞伎の子役で舞台に出させていただいて。「文七元結」のお久と「筆屋幸兵衛」(「水天宮利生深川」)のお雪は、必ず勤めておりました。明治座に出演したあるとき、川口松太郎(編集注:小説家、劇作家。1899〜1985年)先生がそれをご覧になって
「あの子はなかなかいい。新派に来ないか」と誘ってくださったんです。でも実は私、歌舞伎役者の娘なのにそれまで新派を知らなかった。ですから今の十代の方が新派を知らなくてもしょうがない(笑)。ただ、水谷先生(初代水谷八重子)のことはその直前に舞台で拝見して「すごい人がいる、マリア様のようだ!」
と心酔しきっていたところでしたので、そのとき初めて水谷先生が新派の方だと知り「あの人のところにとにかく行きたい!」と思って、一も二もなく新派に入団しました。ですから今私がここにいるのは、水谷八重子先生のおかげなんです。

瀬戸摩純 私も全然新派を知らなかったんですね。高校3年生のときにある踊りのお稽古に通っておりまして、そこにたまたま(坂東)玉三郎さんがいらして、「あの子、新派向きね」とおっしゃってくださったんです。
当時、大学の付属高校だったので、そのまま短大に行ってOLになると進路を決めていたのですが、玉三郎さんがおっしゃってくださるならと新派に入団いたしました。


新派ってすごい劇団なんじゃないかと
     ===== 後略 =====
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