コラム【今週グサッときた名言珍言】

「頭きちゃってさぁ、頼むから記事差し止めたいくらい。800万払うから!」(太田光/テレビ朝日「爆問ファンド!マネーの成功グラフ¥」8月20日放送)

「週刊新潮」が報じた爆笑問題・太田光(53)の日本大学裏口入学疑惑。記事では、太田が敬愛する立川談志の名言「業の肯定」を引き合いに出しながら、
勉強のできない太田を溺愛する父が800万を支払って裏口入学したとつづられている。それに対し、太田が「800万」というキーワードをネタにしつつ、反論した言葉を今週は取り上げたい。

太田は記事発表後、この番組に限らず出演するテレビ、ラジオ、ライブで疑惑をネタにしつつ、否定している。
特に自身のラジオ番組「爆笑問題カーボーイ」(TBSラジオ)では、笑いを交えながら約45分以上にわたって反論を展開していた。

談志や両親への思いを吐露する太田。何より、既に亡くなってしまい、「やっていない」と証明する術もない父親が、不正を働いたことにされたことへの怒りとやるせなさにあふれていた。

ところで太田の父親とは、どんな人物だったのか。かつて太田は「寺内貫太郎的な父親ではなく、情けないことばっかりいう父親だった」(フジテレビ「ボクらの時代」09年11月22日)と語っている。

彼がまだ子供だった頃のある日、両親と太田の3人で家族旅行に出かけたことがあったという。父は、車の運転が好きだった。けれど、下手。だから、太田はすぐに酔って気持ち悪くなるのが常だった。

その日、父の運転する車が急に止まった。前を走る車が止まったからだ。何をやっているのだろう、とのぞき込むと、前の車とさらに前の車を運転していた人が、もめだした。
一番前の車がヤクザ者で「テメエ、このヤロウ!」と相手をバコバコと殴り始めたのだ。

しばらく息を潜めて見守っていた父は、車が行き去った後に言った。

「あぁ、怖かったなぁ。俺なんかブルブル震えちゃってさ」

その言葉を聞いて母は「情けないわねえ、あんた」と笑ったが、太田はそんな父親がなんだか面白く、逆にカッコいいと子供心に思った。

戦争の話をする時もそうだった。父は「俺、ヤでさぁ。だって、タマとか当たったら絶対痛いだろ!」と言う。どこまでも弱さに正直な人だったのだ。

「無理してアメリカみたいにマッチョみたいなフリしてもしょうがねえだろって。なんか、それが僕は根っこにあるような気がします」(同前)

そんな父の姿に、太田の立ち居振る舞いの美意識の在りかがあるような気がしてならない。
「裏口」なんてレッテルを貼られるのは情けなくて嫌だと嘆きながらも、その情けなさごと笑い飛ばすその姿勢こそ父親譲りの太田の業と矜持だ。

http://news.livedoor.com/article/detail/15246012/
2018年9月2日 10時26分 日刊ゲンダイDIGITAL