◉ニュースにすべき選手の順番を間違っている

8月22日に天皇杯の4回戦が各地で行なわれた。その中のひとつ、マリノス対ベガルタの一戦は、3-2の点の取り合いでベガルタが勝利。でも、多くのメディアで取り上げられたのは、今夏にFC東京からマリノスに移籍した久保が1アシストを決めたことだ。
 
 ただ、アシストしたぐらいで少し騒ぎすぎじゃないかな。そもそもチームは負けているし、たいがいの見出しが「久保、アシスト」で、肝心の誰が点を決めたのかが分からない。得点とアシスト、どっちが重要なのか。スコアラーが不憫でならないよ。
 
 ニュースにすべき選手の順番を間違っているんじゃないかな。ネームバリューではなく、活躍の度合いで取り上げてあげないと。そうすれば、活躍した選手も名前が知れ渡り、街で声をかけられ、応援されて、「よし、また頑張ろう」ってなる。励みに。それがその選手の成長を促せば、チームも強くなって、ひいては日本サッカーの強化につながっていくはず。メディアにはそういう役割、責任があると思うんだ。
 
 ちゃんと“真実”を伝えないと、日本人は一生、サッカーを理解できないままだよ。誰が頑張っていて、結果を出しているかを公平に報道する。同じ天皇杯で、サガンのトーレスが待望の移籍後初ゴールを挙げたよね。ヴィッセルのイニエスタとの直接対決など、ホットなトピックが満載だった。でも、例えば清水のドウグラスはすでにリーグ戦で4得点しているのに、あまりニュースにならない。それもどうなんだろうね。

◉ 必要以上に大きく見せれば本人が犠牲になる可能性も

直近のリーグ戦では、ヴィッセルの三田がベルマーレ戦でファインゴールを決めている。でも、イニエスタのゴールと比べれば、報道のされ方に温度差がある。これもおかしな話だよ。僕からすれば、三田が「背番号8を返せ!」とイニエスタに要求してもいいぐらいの、それほど美しいゴールだったと思うんだけどね。
 
 イニエスタやトーレスの加入で刺激を受けて、ステップアップしようとする日本人がいる。そういう選手たちにも目を向けないと。大物助っ人だけを切り取って、紙面を埋めるのはもったいない。
 
 イニエスタやトーレス、あるいは久保もいいけど、フロンターレの小林やアントラーズの鈴木らも奮闘している。その活躍に応じてスポットライトを当てないと。彼らも負けていないんだから。
 
 久保の取り上げ方にしても、メディアがなんとかスターを作って、売り上げを伸ばそうと躍起になっているような気がするよ。大きな注目を集めているのは分かる。でも、今回はアシストだったけど、そのうち“起点”になったとか、よく分からない評価で紙面を飾るんだろうね。
 
 久保のアシストがそれなりに報じられた一方で、それでも甲子園を沸かせた秋田の金足農のピッチャー吉田君の話題性には及ばない。ふたりとも同じぐらいの年齢だよね。久保にはまだまだ頑張ってもらいたい。だからといって、必要以上に大きく見せれば、本人が犠牲になる可能性もある。それだけは避けなければいけないよ。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180823-00046139-sdigestw-socc