全国高校野球選手権大会がきょう5日、甲子園で開幕する。長期連載「野球の国から 高校野球編」のシリーズ7は「2018夏」と題し、100回目を迎える記念大会が生み出すドラマに迫る。今夏は西日本豪雨や記録的な猛暑に見舞われ、大会運営に大きな課題が生じた。日本高野連が掲げる「次の100回」に向け、重要な大会になる。

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 華々しく幕を開ける100回大会の裏で、選手権大会は開催そのものが危ぶまれる状況にある。今夏、記録的な猛暑が日本列島を襲う。日本高野連には、多くの意見が寄せられるという。「何もこんな時期にやる必要はないのでは?」「ドーム球場を使うべきだ」など、従来の大会運営を疑問視する声だ。熱中症で命を落とすニュースが相次いでいる。竹中雅彦事務局長は危機感を募らせた。
 「考えたくはないが、死亡事故が起これば、大会の存続に関わる。いろんな対策をやらないといけない。その必要性を強く感じている」

今大会では水分補給を呼びかけ、球場内のコンコースなどには備え付けの空調に加え、大型扇風機を設置。緊急で対策を練った。それでも来年以降の改革は避けられない。
開催時期は学校の部活動の位置づけのため、高校総体などと同じように、夏休みの時期からはズラしにくい。現実的な選択肢と検討されるのは、「2部制」の導入だ。
同事務局長は言う。「やはり熱中症が起こりやすい時間を避けてゲームを行うのは大事なこと。(開始時間を)分散してやるのも、ひとつの手」。1日4試合を午前中の2試合、夕方以降の2試合に分けて行う。異例のナイター開催に踏み切った京都大会準々決勝が、参考になった。

 11月の運営委員会で議論される可能性はあるが、実現には問題もある。「昼の休憩の間、多くの観客がどう過ごされるのか。(甲子園の周辺)地域の皆さんへのご迷惑も考えられる。入場券を2試合ずつにしたら、という意見も出るかもしれない。応援団が帰られるような時間を設定する必要もある」。ドーム球場への開催地変更の意見も出ているが、これも簡単な問題ではない。「高校野球イコール甲子園というのが定着している中で選手が納得してくれるのか。それが一番。機会があれば、アンケートも取らなければならない。現場の声を大事にしていかないといけない。議論を出し尽くすぐらいまで議論しなければ…」と竹中事務局長は力を込める。

 夏の甲子園はさまざまな困難を乗り越え、99回の歴史を刻んだ。戦争による中断、地震などの災害。今年は西日本豪雨が多くの被災者を生んだ。「野球をやっている場合だろうか」という葛藤は関わる者には常にある。2日の甲子園見学。創志学園(岡山)はわずか15分の割り当て時間に、入場行進の練習を行った。長沢宏行監督は理由をこう説明した。
「被災された岡山の方も開会式を見られる。元気のない行進だけはさせたくない。ライバルのおかやま山陽は真備町の子が多い。大変な思いをしていると思う。結局、スポーツができるのは平和であるということ」。開幕が10日遅れた広島大会では、「ユニホームがバラバラでも」「他県の球場で行う」など柔軟な対応策も用意されていたという。

 歴史をつないできたのは、主役である球児だ。日本高野連は「高校野球200年構想」を掲げる。次の100回に向け、球児にどんな舞台を用意できるか。記念大会は、未来への分岐点でもある。
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