2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は7月30日、福島県のJヴィレッジで開いた理事会で、両大会の開閉会式の企画・演出体制を承認した。五輪は映画監督の山崎貴氏(54)、パラはクリエーティブディレクターの佐々木宏氏(63)を選出。そして狂言師の野村萬斎(52)が4つの式典の総合統括を務める。なぜこのような人選になったのか? そして気になる演出内容を、関係者に予想、提案してもらった――。

 五輪・パラの開閉会式を議論する組織委の有識者懇談会(座長・御手洗冨士夫キヤノン会長)は様々なアイデアを募り、話し合ってきた。その中で最も重視したこと。それは計4つの式典を起承転結の流れがある4部作にすることだった。

「開会式は、これから国を背負って戦う前の段階にあり、閉会式は世界が一つの仲間になることが求められる。当然、2つの精神は異なるし、パラの開閉会式も加わるので4つになるが、今大会は五輪の盛り上がりをパラの閉会式までつなぐことが大事。そこには矛盾なく一本につなぐ統一性がキーワードになる」(懇談会関係者)

 五輪・パラ双方の統括的な存在、それがチーフ・エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター(チーフECD)という肩書の野村なのだ。野村が選ばれたのは、古典芸から現代演劇まで幅広い知見が評価されたから。

「大変光栄で、身の引き締まる思い。機知に富んだ式典にするため尽力していく」と組織委を通じて野村はコメントした。

 五輪は「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズで知られる山崎氏、パラは多くの人気CMや16年リオデジャネイロ五輪で東京への引き継ぎセレモニーを手がけた佐々木氏が担当する。

 もともと野村、山崎氏、佐々木氏は、昨年末に有識者懇談会が設置した計8人の「4式典総合プランニングチーム」のメンバー。このチームが半年間、基本プランを策定してきたがそのまま横滑りした格好だ。

 残りの5人(椎名林檎=シンガー・ソングライター、川村元気氏=映画プロデューサー、栗栖良依氏=クリエーティブプロデューサー、菅野薫氏=クリエーティブディレクター、MIKIKO氏=演出振付家)も、継続して4式典の総合的な演出に関わることになる。

 ただ、そもそもこの8人は、ある共通点で選ばれているという。

「協調性や調整力、マネジメント力です。みなさん、構想力や演出力があるのは言うまでもないですが…。自分勝手でわがままな人はダメというわけです」(五輪関係者)

 さて、気になるのは演出の中身だ。現段階ではまだ決まってはいないが、組織委が掲げているポイントは8つある。それは「平和」「共生」「復興」「未来」「日本・東京」「アスリート」「参画」「ワクワク感・ドキドキ感」。中でも注目されるのはやはり「ワクワク感・ドキドキ感」だろう。ある映画関係者はこんなアイデアを出す。

「せっかく萬斎がいるのですから映画で演じた陰陽師を打ち出すべき。それにフィギュアスケート五輪2大会連続金メダルの羽生結弦を登場させるのです。羽生のフリーの演技はまさに陰陽師安倍晴明をモチーフにした『SEIMEI』(平昌五輪など)。五輪の顔でもあるのでインパクトを与えられるのでは?」

 もともと野村は海外ではほとんど無名。唯一、話題になったのは、2年前の大ヒット映画「シン・ゴジラ」で“ゴジラ役”を務めたことだった。これは狂言師としての野村の一挙手一投足をモーションキャプチャーし、映画の中でフルCGのゴジラに生命を与えたもので、AP通信など海外メディアも報じた。

 ゴジラファンでなくても羽生と“合体”すれば野村への注目度も一気に上がる。真夏の新国立競技場に氷のリンクを設置するのは難しそうだが、樹脂製リンクの代用や、リンクなしでの演技も考えられる。2人の陰陽師コンビが「未来」の世界に向けて「アスリート」「参画」「共生」「復興」「平和」のための“ポジティブな結界”を張るというわけだ。

「海外の人が陰陽師を理解できるかわかりませんが(笑い)。でもいかにも日本らしい衣装だし、喜ぶかも」(同関係者)

 これなら、世界中をアッと驚かせることができるだろう。
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