サッカー先進国では当たり前の“強化策”

ロシアW杯は7月16日(日本時間)、フランスの優勝で幕を閉じた。改めて日本代表の試合を振り返れば、痛感するのが彼我の体格差だ。2022年カタールW杯に向けた強化には外国人選手の「帰化」も必要かもしれない。サッカージャーナリスト・六川亨氏の“未来予想図”をお読みいただきたい。

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 日本はベスト16と健闘したが、評論家のセルジオ越後氏はスポーツ紙で「海外出身選手の日本国籍取得を再考することも提言したい」と触れていた。有能な外国籍選手を自国の代表として迎えるのは、ヨーロッパのサッカー先進国ではいまや当たり前となっている。

 古くは1934年の第2回W杯で、イタリアはアルゼンチン出身の選手を自国代表に迎えて初優勝を果たした。近代に目を向ければ、まず第2次世界大戦の戦勝国が植民地出身のアフリカ系選手を代表に抜擢した。先鞭をつけたのはオランダとフランスで、1998年に自国で開催したW杯で初優勝したフランスのエース、ジネディーヌ・ジダンの両親はアルジェリアの少数民族だというのは有名な話。

 当時のフランスにはジダンの他にも多くのアフリカ系移民の選手がいたものの、試合前の国歌斉唱でラ・マルセイエーズ(フランス国歌)を歌えない選手に対し批判が出たものだ。オランダではアフリカ系移民の選手に対する差別意識から内紛が起こったこともあった。

 しかし、いまやアフリカだけでなく、ポーランドやルーマニア、トルコからの移民がドイツ、フランス、ベルギーなどに流入して20年以上が経つ。このため表面的な対立は以前ほど目立たなくなった。

日本では、まだまだ帰化には高い壁

 今大会でもルーツを他国に持ちながらも、自国の代表として活躍したことでファン・サポーターを熱狂させた選手がいる。フランスのキリアン・エムバペはカメルーン出身の父親とアルジェリア人の母を持つフランス代表だ。

 同じくフランスの屈強なMFポール・ポグバはギニア系の両親をそのルーツに持つ。日本戦で同点ゴールをアシストしたベルギーFWエデン・アザールはベルギー生まれだが、両親はともにアルジェリア人だ。そして彼のアシストから2-2の同点ゴールを決めた大型MFマルアン・フェライニも、ベルギー生まれではあるものの両親はモロッコ人である。

 彼ら以外にも、スウェーデンを快足で苦しめたイングランドのFWラヒーム・スターリングはジャマイカ生まれで、7歳の時に母親とロンドンに移住し、英国国籍を取得した。日本人にはあまりピンとこないが、ヨーロッパでは二重国籍はよくある話で、どちらの国籍を選択するかは本人次第というグレーゾーンがサッカー界には存在する。

 もちろん日本にも東南アジアや中東から仕事を求めて来日し、日本人と結婚して(日本で生まれて)日本国籍を取得したサッカー選手やプロ野球選手は近年増えてきた。しかし、海外出身の選手が日本国籍を取得するにはまだまだ高い壁がある。

 20歳以上で日本に滞在して5年以上になるとか、配偶者が日本人であることなど細かい規則があるからだ。ただし、日本代表に海外出身の選手が皆無だったわけではない。

つづく

ディリー新潮 7/18(水) 7:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180718-00545498-shincho-socc

写真
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