【サンクトペテルブルク(ロシア)大島祥平】サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会は第24日の14日、当地で午後5時(日本時間同11時)から3位決定戦を行い、ベルギーとイングランドが対戦する。15日にはモスクワのルジニキ競技場で午後6時(同16日午前0時)からフランス−クロアチアの決勝を行い、約1カ月に及んだ大会の幕を閉じる。

不要論もささやかれる3位決定戦だが、今回は隣国の顔合わせに加え、イングランドのケーンとベルギーのルカクの得点王争いも絡んで、主力を投入して、プライドをかけた激しい戦いになりそうだ。1次リーグではベルギーが1−0で勝ったが、双方とも決勝トーナメント進出を決めていたため大幅にメンバーを変更していた。

 国際サッカー連盟(FIFA)のランキングはベルギーの3位に対し、イングランドは12位。対戦成績ではイングランドが15勝5分け2敗と大きくリードするが、今大会前の対戦は2012年にさかのぼる。ベルギーが勝てば1986年の4位を上回る最高成績となる。66年に優勝しているイングランドも3位は初めて。

 ベルギーの計14得点は、準決勝進出の4チーム中で最多。日本、ブラジルを破った高速のカウンターには威力がある。しかし、準決勝ではフランスにゴール前を固められて無得点に抑えられた。その反省をどう生かすか。

 イングランドはセットプレーが得点源で、FWからDFまでがゴールを奪っている。準決勝のクロアチア戦でも、敵陣深くで得たFKをDFトリッピアーが直接決めている。準々決勝のスウェーデン戦を除く5試合で失点しており、守備面にやや不安が残る。カウンターを得意とするベルギーに先制点を許すことになると、難しい展開になる。

 互いに3バックを基本としており、戦術の成熟度も差を生みそうだ。

 得点王争いは現在、ケーンが6ゴールでトップ、4ゴールのルカクが2位で追う。3位決定戦は点の取り合いになる傾向が強い。イングランド・プレミアリーグのトットナム(ケーン)とマンチェスター・ユナイテッド(ルカク)でも競い合う背番号9同士。最後の戦いをゴールで飾るのはどちらか。

物静か信頼厚く クロアチア・ダリッチ監督/輝かしい選手歴 フランス・デシャン監督

決勝を戦うフランスのデシャン監督(49)とクロアチアのダリッチ監督(51)は対照的な経歴を持つ。選手としても数々のタイトルに輝いたデシャン監督に対し、ダリッチ監督は大舞台とは無縁のキャリアを積み重ねてきた。

 デシャン監督のハイライトは、フランス主将として優勝トロフィーを掲げた自国開催の1998年フランス大会。今回優勝すればザガロ(ブラジル)、ベッケンバウアー(旧西ドイツ)に続く史上3人目の選手、監督での制覇。「優勝した時のイメージや時間は素晴らしいものだが、今大事なのは決勝で勝つこと」と語る。

 運動量豊富な守備的MFとしてマルセイユ(フランス)、ユベントス(イタリア)で活躍し、欧州チャンピオンズリーグでの優勝経験もある。指導者としてユベントスをイタリア2部から1部に復帰させ、2012年からフランス代表の指揮を執る。前回の14年ブラジル大会で8強入り、16年の欧州選手権では準優勝した。

 ダリッチ監督も選手時代は守備的MFだった。クロアチアやボスニア・ヘルツェゴビナのクラブを渡り歩いた。指導者としてはアルバニア、サウジアラビアのクラブなどを率い、アルアイン(アラブ首長国連邦)では16年に、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で準優勝している。

 欧州予選途中での前監督解任に伴い、17年10月に代表監督に就任。最終節のウクライナ戦に勝ち、ギリシャとのプレーオフも制して本大会出場を決めた。W杯でもGKスバシッチを中心に粘り強く守り「W杯の旅を選手とともに楽しみたい」と平常心を強調する。

 選手にはU21(21歳以下)代表コーチ時代の教え子が多い。その一人、FWマンジュキッチは「物静かで怒ることがない。彼を信頼し、成功を収めることができている」と話す。【大谷津統一、写真は長谷川直亮】