“キー局NG”名作ドラマも再放送 “遺産を継承”するローカル局の役割
6/23(土) 8:40配信 オリコン
https://www.oricon.co.jp/special/51322/

神奈川県とその周辺を放送対象とするテレビ神奈川、通称tvk。現在同局では、毎週月曜〜水曜の夜10時から故・松田優作さんの『探偵物語』(1979年)を放送している。
過去には、萩原健一『傷だらけの天使』、舘ひろし・柴田恭兵『あぶない刑事』も放送しており、同地域にお住まいなら、ザッピング中に突如、懐かしい4:3の画角が出現し、思わず手が止まった経験のある方も多いだろう。
かつての名作ドラマが、制作した本来のキー局ではなく、ローカル局で放送することはこれまでにもあったが、昨今ではその意味合いが大きく異なってきているようだ。

■時代劇・韓流ドラマ・刑事ドラマ…需要ある世代に向けたローカル局の編成プログラム

ローカル局とは、東京キー局(日本テレ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)に属するネットワーク局、そしてそのネットワークに属さない「独立U局」に分類される。
独立U局は、TOKYO MXテレビ、テレビ神奈川、テレビ埼玉、チバテレビ、岐阜放送、京都放送など13局が存在。
関東近郊の放送局では主に朝9時台や正午前後に、時代劇や韓流ドラマなどを放送。
故・萬谷錦之助さんの『鬼平犯科帳』や里見浩太朗さんの『大江戸捜査網』などの名作を編成。高齢者や主婦層向けの編成で支持を得ている。

tvkは00年代、“UHFのアニメの雄”としてアニメファンからも注目された。
だがTOKYO MXがアニメの本数を増やし、その地位が奪い取られるや、『あぶない刑事』、『傷だらけの天使』、『探偵物語』など、主に40代向けラインナップを送る現在の枠を構築していった。

■スポンサーへの配慮もキー局ほど“ガチガチ”ではない!?

なぜこれら再放送が元のキー局ではなく、ローカル局なのか? メディア研究家の衣輪晋一氏は「理由の一つとして“コンプライアンス”への配慮」と解説する。

「一昔前のテレビは、プライム帯でも暴力シーンや喫煙、未成年の飲酒シーン、女性のむき出しのバストなども放送されていました。だが昨今、これに不快感を示す声が増え、放送がためらわれる傾向に。
一方で独立U局は“メインではない”ことから批判されにくい強みがあります。また独立U局の収入源は通信販売が断トツで多いとする研究があり、スポンサーにそこまで縛られていない。
それゆえ自由で、コンプライアンス的にやや“ユルい”体制が取りやすくなっていると考えられます」(衣輪氏)

■キー局の現状は? かつては隆盛だった再放送ドラマ枠の今…

現在のキー局の再放送事情についても考えてみよう。今も再放送枠を設ける局はフジテレビとテレビ朝日だ。
テレビ朝日は『相棒』、『科捜研の女』など刑事ものやミステリー、早朝の時代劇枠が好評。
フジテレビは現在、夕方帯に『コード・ブルー』を放送中だ。これは7月の同映画に向けての宣伝であり、これまでも新ドラマに出演する俳優の直近の過去ドラマを再放送してきた流れがある。

日本テレビは2003年3月まで、夕方4時台に再放送していた。TBSでは5時からの再放送を観た視聴者も多いだろう。だが日テレは同時間帯を情報番組へと変え、TBSも2009年を境に午前中に再放送していた「三井奥様劇場」枠、夕方5時の再放送ドラマ枠を情報・報道番組へと改編。
情報番組や報道バラエティは増加の一途を辿り、現在はバラエティも情報番組的なアプローチのコンテンツが多くなっている。

情報番組が増加した背景について、「そもそも情報番組は、“ネタ切れ”のときに、安価にそこそこ数字がとれる“逃げ”の優良コンテンツとして重宝されていた。
だが80・90年代のテレビ黄金期を経て、バラエティもドラマもネタが枯渇。もちろん再放送ドラマもネタ切れし、その結果、“逃げ”だったコンテンツがメインとなっているのが現状のようです」(衣輪氏)

>>2以降に続きます。