データは冷酷な現実を突きつけてくる。W杯の出場国数が現行の「32」となり、4チームずつ8つのグループに分かれた中で上位2位まで、合計16チームが決勝トーナメントに進出する方式となった1998年のフランス大会以降では、例えば「91・25%」という数字がはじき出されている。

 何を表すデータかといえば、過去5大会で決勝トーナメントへ進出した延べ80チームの初戦における結果だ。初戦で勝利したチームが「51」、引き分けたチームが「22」をそれぞれ数える。要は80チームのうち、初戦で勝ち点を獲得したチームが、実に「73」を数え、確率は「91・25%」となる。

 逆に見れば初戦を落としながら短期間で立て直し、グループリーグを突破した例はわずか「7」で、確率は「8・75%」に激減する。2010年南アフリカ大会を制したスペイン代表や、日本代表のバイド・ハリルホジッチ前監督に率いられた前回ブラジル大会のアルジェリア代表が該当する。

 日本代表の歴史を振り返っても、初戦が持つ重要性がはっきりと伝わってくる。ベルギー代表と引き分けた2002年日韓共催大会、カメルーン代表を撃破した南アフリカ大会はともに決勝トーナメント進出を果たしたが、黒星発進した残る三つの大会はすべてグループリーグで姿を消している。

 特に攻撃的なスタイルを掲げ、期待値が非常に高かった前回ブラジル大会はMF本田圭佑のゴールで先制しながら、コートジボワール代表による怒涛(どとう)の猛攻の前に、後半の3分間で2ゴールを奪われた。グループCの最下位に終わった理由を、DF長友佑都がこう振り返ったことがある。

「ブラジルの前は完全に力んでいましたよね。先ばかりを見て、ものすごく高くジャンプしようとしていた。一気に飛んでいきたいくらいの気持ちでしたけど、物事はそんなに簡単にはいかない。自信が過信に変わっていて、そこを相手に突かれて足元をすくわれたというか。足元をしっかり固めないと、うまくいかなくなったときに崩れるのも早い。土台となる部分がどれだけ大事なのかが、ブラジル大会までの4年間で学んだ部分だと思っています」

 いかにして勝ち点を手にするか。ロシア中部サランスクのモルドビア・アリーナで、日本時間19日午後9時にコロンビア代表との初戦に臨む西野ジャパンのテーマは明確だ。勝利はもちろんのこと、負けないという観点で見れば、引き分け発進でもベターと言っていい。

 もっとも、前回大会得点王ハメス・ロドリゲス、「点取り屋」ラダメル・ファルカオを擁するコロンビアを相手に自陣に引く形で耐え忍び、引き分けに持ち込むプランは現実的ではないだろう。ワールドクラスを誇る攻撃力の脅威にさらされ続けた揚げ句、守備網が決壊する光景が目に浮かんでくる。

 コロンビアの武器の一つでもあるカウンターに細心の注意を払いながら、相手のゴールネットを揺らす。難しい戦い方を演じる上でカギを握る選手が、西野ジャパンが発足3戦目で初勝利を挙げた、12日のパラグアイ代表との国際親善試合(オーストリア・インスブルック)で見えてきた。

西野ジャパンとして臨んだガーナ代表戦、スイス代表戦でともに途中出場だったMF香川真司は、パラグアイ戦ではトップ下で先発フル出場した。1点のビハインドで迎えた後半、香川はMF乾貴士の連続ゴールをアシストしただけでなく、アディショナルタイムに約8カ月ぶりの一発となる代表通算30得点目をたたき込んだ。