テレビ各局はこのクラスの大型会見に番組ごとに複数のクルーを送り込む。カメラマン、音声担当、ディレクター、そして番組を担当するアナウンサー。
ここ2年、数多くの大型会見を取材したが、メインキャスターが来ることは少なく、サブキャスター的な存在の女性アナウンサーやキャスターが現場に来ることが多いと思う。

こうしたアナウンサー、キャスターたちが自らの番組名と名前を名乗り、質問合戦を展開する。その際、会見場のサイドに陣取る当該番組のカメラが、それぞれの番組の顔たちの質問する映像を撮る。この際、米倉氏を“キレさせた”類似質問が頻発するのだ。

この日の大塚学長の会見の中盤にも民放ニュース番組の女性アナが会見前から隣に座ったディレクターと綿密な打ち合わせの末、質問した。
しかし、その内容はそれまでに複数の一般紙記者から出た質問とほぼ似通った情緒的な質問。学長の答えも、ほぼ同じものになることが事前に想像できるものだった。

ちょっとだけ意地悪な見方をする。この女性アナの質問は自局のニュース番組で流す自身が質問している瞬間の映像を撮るための質問ではないか。自分が本当に聞きたかった質問なのか。
申し訳ないが、そんな疑問が頭に浮かんでしまった。冒頭の疑問、会見の主人公は誰なのか。視聴者が、そのやり取りの際の表情、話し方に注視し、「見たい」と思っているのは誰なのかという問題になる。

“逆ギレ司会者”として一躍有名になってしまった米倉氏は共同通信社で論説委員室長を務めた元記者で、02年に同社を定年退職した古いタイプのマスコミ人。
共同通信ではワシントン特派員、経済部長、ニュースセンター長などを務めたという報道一筋だった“御大”にとっては、
「あれ、また、〇〇テレビか? さっきも同じような質問を〇〇テレビの別の記者がしていたじゃないか? イラッ!
ムカッ!」(かぎカッコ内は、あくまで私の想像)という感じだったのではないか。

私自身のことも書く。どんな取材でも「これだけは聞こう」という質問を用意して現場に行くようにしているが、先に質問した他社の記者が自分と似通った質問をした場合や異なった質問でも「たぶん同じ答えが返ってくるな」と思った場合は質問はしない。
違う人間が同じ質問を繰り返すことで取材対象者の本音が徐々に漏れてくるというのも確かだが、それも時と場合、会見の性質による。

失礼な言い方かも知れないが、会見の場を自己表現の場と捉えてしまっているキャスター、アナウンサーが一部いるのは確かだ。
あなたは取材者か。それとも出演者(表現者)なのか。それは、あらゆる取材者に日々、問われ続ける問題でもある。