愛弟子は「ここぞ、のタイミングで喋るひと」と評する

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 ハリルジャパン始動日となった2015年3月23日の光景は、いまだ鮮明に焼き付いている。
 
 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督を先頭に、選手だけではなくコーチングスタッフ、そして当時技術委員長を務めていた霜田正浩氏(現J2レノファ山口監督)も一緒にランニングをこなした。徐々にハリルホジッチ氏だけが周回遅れになっていったものの、選手たちは隊列を崩さずに10周以上。わずか30分弱で初日のトレーニングを終えた。
 
 あれから3年2か月の時を経て、急きょ、ハリルホジッチ氏から西野朗監督にバトンは渡された。初日は海外組のみ参加のトレーニング。負傷を抱える岡崎慎司は別メニューで、乾貴士は宿舎でリハビリとなったが、負荷の軽いランニングやボールタッチで汗を流した。約2時間、西野監督は黙って選手たちの動きを静かに観察していた。
 
 練習中は選手に声を掛けることもなかった。主に「選手とのコミュニケーションや信頼関係の部分が多少薄れてきた」との理由で解任されたハリルホジッチ氏は、合宿では選手を個々に呼び出し、何分間も身ぶり手ぶりのレクチャーを繰り返した。もちろん、一方的な会話はコミュニケーションではないが、選手との接触を積極的に図る“動的”指揮官だっただけに、西野監督とは対極のアプローチと言っていい。
 
 まだ本格的な戦術練習を行なっていない段階なので、西野監督の代表指揮官としての手腕は未知数だ。とはいえ、日本人ならではのメリットはある。やはり言葉の壁だ。
 
「日本人同士ですし、通訳がいないのでストレートに言葉が入ってくる」。そう語るのはガンバ大阪時代の愛弟子であるFW宇佐美貴史だ。
 
 コミュニケーションとは互いの意思疎通や感情、思考を伝達し合うものである以上、その点はハリルホジッチ氏よりもアドバンテージがあることは間違いない。また多くの関係者が証言するように、西野監督は自身からメッセージを発信していくタイプではなく、まず相手に対して聞く耳を持つタイプ。そして「ここぞ、のタイミングで喋るひと。ひと言、ふた言でズシリと重みがある言葉を発する」(宇佐美)。
選手をどこか“大人扱い”しているように映る

・選手をどこか“大人扱い”しているように映る

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途中離脱したMF青山敏弘とホテルで別調整だったFW岡崎を除く全選手が集まった5月25日には、「競争ではなく共存」「チームは生き物」とメッセージを発信した。西野監督は最終的な23人に絞る前に、よりチーム一丸となることを求めたのだ。そのスタンスも常に選手にダメ出しを繰り返し、反骨心や発憤を促してきた前任者とは異なる。
 
 常にピリピリとした雰囲気を醸し出しながらチームを作ってきたハリルホジッチ氏。選手をどこか“大人扱い”しているように映る西野監督。はたして、いまの日本代表にとってどちらが適任者なのかは、まだ判別できない。
 
 その答の一端が見えるのは、5月30日の親善試合ガーナ戦だ。

サッカーダイジェスト 5/26(土) 6:40配信
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