開門前からファンがゲートに長蛇の列を作り、二軍戦とは思えないほど多くのカメラがベンチ前に並ぶ。カメラのレンズが向く先にはこの日、実戦復帰を迎えた清宮幸太郎の姿があった。

 超大物ルーキーの動向に、メディアも野球ファンも熱い視線を注いでいた。

 ただし、ライオンズにも注目のルーキーがいる。西川愛也(まなや)、内野手。清宮と同い年の18歳だ。

 西川は今シーズン、花咲徳栄高校からドラフト2位で入団した。帽子のサイズが53センチという小さな顔に、長い手足。抽象的な表現になるが、打席に入ったときにピタリと絵になる、スター性を感じさせる選手だ。

 高卒ルーキーながら、イースタンリーグ開幕5戦目からスターティングメンバーで起用され、リーグ2位となる3割7分7厘の打率を残している(4月17日現在)。高校時代に痛めた古傷の影響もあり、現在は指名打者での出場に留まってはいるが、優れたミート力に加えて、脚も速い。

 『愛也』という名前の通り、ライオンズファンに愛される要素を十分に備えている選手だ。

普通のルーキーはまずバットを振れない。

 高木浩之・二軍野手総合コーチ兼打撃コーチは語る。

 「まだ50打席くらいなので結果では判断できませんが、ボールに対して手数が出るのはいいですね。普通は、なかなかバットを振れないもの。初めての対戦だし、ましてや初めてプロの投手に対するわけですから……。タイミングを合わせることが難しいし、合わないことのほうが多いのに、失敗を恐れずに振っていけるのは長所だと思います」

 普通なら「まずはボールを見よう」という心理が働くと高木コーチは言う。

 「バットを振っていこうと口で言うのは簡単。でもなかなか手が出ないものなんですよ、それをアジャストして、あれだけライナー性の打球が打てるのは高い能力があるからこそでしょう。本当の勝負はこれから。プロは変化球にキレもあるし、いろいろな投手との対戦が二回り目になったとき、どう対応していくのか。僕も楽しみにしています」(高木コーチ)

手を揺らす独特のバッティングフォーム。

 西川自身も、ここまでの好調の要因を分析している。

 「自分らしいヒットが出ていると思います。自分らしさというのは、対応力ですね。どんなボールでも、追い込まれてからでも、芯を外さずにミートすることです」

 ゆったりと構え、バットを握る手をゆらゆらと揺らす独特のバッティングフォームは高校時代に編み出したものだ。花咲徳栄高校の岩井隆監督に受けたアドバイスがきっかけだった。

 「力まないで打てるように、この形にしました。監督さんからは“こんな感じで振ってみれば? ”と、今よりもっとバットのグリップを高く上げて、振り下ろすフォームを提案されたんです。でも自分で練習しているときに、いろいろと考えて、監督さんのアドバイスをアレンジして今のフォームになりました」

「芯で打つ」のが自分のスタイル。
 今年1月の自主トレーニングでは、隣で大先輩、栗山巧のバッティング練習を見る機会があった。両手を前にきっちりと揃え、直立不動でその打撃練習を見つめる姿が初々しく、印象的だった。

 あまりにも長い時間見ていたために、栗山からは「あんまり見るなや。緊張するやんけ」と冗談を言われたそうだ。

 「栗山さんの集中力、そして山川(穂高)さんの、ボールをバットの芯でとらえる力。どの先輩のバッティングもすべて勉強になります。自主トレ期間の少しの時間でしたけど、練習を見させていただけて、貴重な経験になりました」

 西川は何度も「芯を外さない」、「芯で打つ」という表現を使う。芯でとらえることが自分のスタイルなのかと尋ねると「そういうバッティングをしたいです」ときっぱりと語った。

 子どものころ、憧れていた選手は特にいない。プロ野球中継を見るより、自分がプレーするのが好きだった。中学生以降は自分の練習に夢中で、プロ野球の試合を見る機会がなかったという。
 黒田哲史・二軍守備(内野)走塁コーチは西川をこう評する。

 「何より真面目ですよね。野球が好きだということが練習する姿勢から伝わってくる。それはいちばん必要で、大事なことですから。

 守備練習ではショート、セカンド、サードに入っているので、いずれはどこでも守れるようになってほしい。いま一軍にいる内野手、誰にでも代われるような選手が理想です」

 ライオンズの多くの選手がそうであるように、内外野どちらも守れるよう練習を重ね、試合出場の機会を増やすのが目的だ。

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