比嘉、900グラム超過で王座剥奪 日本人世界王者で初の計量失敗

<記者の目>階級上げる前に取り返しのつかないことに

 1回目の計量。900グラムオーバーとの発表が絶望的な状況を告げた。
徹底して体を絞ってきたボクサーが、再計量猶予の2時間で落とせる体重ではない。
比嘉は涙を流し無言で会場を後にした。

 今のボクシング界で、比嘉ほど減量に苦しむ選手はいない。
15戦全勝全KOのパワーを生む胸囲は97センチ。
20キロ以上も重いミドル級の村田は98・5センチだ。
これほどの筋肉を50・8キロに押し込むのはもともと無理があった。

 減量は毎回、過酷を極めた。昨年5月、初の世界戦前には減量中にパニック障害を起こし
救急搬送された。今年2月、故郷・沖縄での凱旋(がいせん)マッチ直前には脱水症状から
足がけいれんする緊急事態を経験。
本人も、戴冠から毎回「すぐにでも階級を上げたい」と言い続けてきた。

 3月1日、東京・両国国技館では前WBCバンタム級王者ネリ(メキシコ)が
前日計量1回目で2・3キロもの体重超過を犯し、王座剥奪された末に
元王者・山中慎介(帝拳)に2回TKO勝ち。その姿に、国内のボクシング関係者は激怒した。

 唯一の例外が、3月4日に鹿児島・徳之島で合宿していた比嘉だった。

 「俺は責められないです。毎試合(体重を落とせるか)不安でしょうがないので、
どうしても自分がオーバーした側に立って見てしまう。
ネリがたたかれてるのを見ると、もしやったら自分もこうなるのかと思う。怖いです。
取り返しがつかないことになる前に階級を上げたい。
周りから何と言われても次をフライ級最後の試合にしたいと思ってます」

 だが、階級を上げる前に取り返しのつかないことが起きてしまった。
同情の点もいくつかあるとはいえ、プロとしての責任を果たせなかった重い事実が残った。
すべての試合をKOで制し、一歩リングを離れれば人懐っこく誰からも愛された22歳は、
リングではなく、測りの前でボクシング人生最大の危機に立たされた。 (藤本敏和)

[引用元] 中日スポーツ
http://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/battle/news/CK2018041502000166.html