まさに群雄割拠――。

 それが四半世紀を迎えたJリーグの「現在地」だろうか。実際、今シーズンも一寸先は闇の戦国模様。J1の優勝争いにしても、J2の昇格争いにしても、絶対的な本命が見えてこない。

 J1なら5、6チームくらいに覇権を狙うチャンスがありそうだ。バイエルン1強のブンデスリーガ(ドイツ)やレアル・マドリーとバルセロナの両横綱が君臨するリーガ・エスパニョーラ(スペイン)みたいな「バレバレ」のリーグでは味わえない、サプライズ含みの面白さがある。

 何しろ、J1に昇格したばかりのクラブがいきなりリーグ制覇をやってのけることもあるくらいだ。実際、過去10年で2回もあった。2011年の柏レイソルと2014年のガンバ大阪である。

 ちなみに、昨シーズンも昇格組のセレッソ大阪が天皇杯とルヴァンカップの2冠を手にした。他の強豪クラブは何をやっていたのか、みたいな話になりかねないが、事の真相は別にある。

 そもそも戦力面や資金力を考えれば、J2に降格するようなクラブではなかったのだ、柏も、G大阪も、C大阪も。
グランパスは残留が目標ではないはず。

 本来、落ちるはずのないクラブが落ちてしまう。そんな「波乱含み」の残留争いもまた、Jリーグの醍醐味(!? )か。

 J元年(1993年)にリーグの覇権を争った「オリジナル10」のなかで一度もJ2に降格していないのは、いまや鹿島アントラーズと横浜F・マリノスだけである。

 ちなみに、今シーズンはまさかのJ2転落から1年で戻った「昇格組」の名古屋グランパスが台風の目になる番か。そもそも、J1残留を目標にするようなクラブではないだろう。戦力面や資金力を考えても。

 しかも、風間八宏監督の率いる名古屋は「攻めてナンボ」のチームだ。超のつくパスワーク志向。それだけのタレントを抱えてもいるが、普通は強気一辺倒のスタイルを選択しにくい。上位チームとの戦力格差をにらみ、こつこつと勝ち点を拾おうとすれば、守備重視のカウンター志向にならざるを得ない。

 ところが、である。今シーズンは例年にも増して、ゲームの主導権を取りに行くポゼッションスタイルのチームが多いのだ。少なくとも、それを「表看板」に掲げている。


堅守が伝統の横浜まで攻撃サッカーに。

 堅守を伝統にしてきた横浜FMがアンジェ・ポステコグルー新監督の下で敵陣にぐいぐい押し込む大胆な攻撃サッカーへ鞍替えし、堅守速攻に徹して残留を勝ち取った昇格2年目のコンサドーレ札幌もミシャ・ペトロヴィッチを新監督に迎え、後ろからパスをつなぐ戦法へ大転換を図った。

 さらに、G大阪もレヴィー・クルピ新監督が「攻撃的に戦う」と宣言すれば、ヴィッセル神戸も新任の三浦淳寛スポーツダイレクターが「バルセロナのようなサッカーを目指す」とぶち上げた。

 ひと足先にポゼッション志向を強めたベガルタ仙台を含め、パスワーク主体の攻撃的なサッカーへトライするクラブが明らかに増えている。
スタイルが同じなら、タレント力が勝負。

 昨シーズンのJ1における1試合平均のボールポゼッション率をみると、1位がアジア王者の浦和レッズ、2位がJ1王者の川崎フロンターレだ。そして3位に鹿島、4位に柏が続いている。

 今シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権を手にした4チームのうち、C大阪を除く3チームが上位に食い込んでいた。

 概して似たようなスタイルで戦えば、人的資本(タレント力)に恵まれた強者が優位になる。戦力面で及ばぬ弱者は「位負け」しやすい。上には上がいるのだ。そこでポイントになるのがディフェンスだろう。

 しかし、引いて守れば、パスをつないで押し返すのが難しくなる。しかも、自陣のビルドアップでミスが生じると、失点に直結しかねない。がっちり引くなら、カウンター狙いのプランBへ切り換えるほうが得策だろう。機に臨み、変に応ずる鹿島はこの分野のスペシャリストだ。