宮崎駿作品をはじめとする、数々の名作アニメを生み出してきたスタジオジブリ。その語源であるイタリア語“GHIBLI”と同じ由来によって名付けられた雑誌がある。そのスタジオジブリによって2003年に創刊され、現在も刊行を続けている月刊誌「熱風(GHIBLI)」だ。

 この「熱風」は、スタジオジブリ関連書コーナーを常設している書店での店頭配布と、定期購読によってのみ入手可能な無料配布の冊子だ(定期購読は事務経費のための購読料が必要)。

 ……こう紹介すると、ジブリの関連情報を伝えるパンフレット的なものが想像されるが、さにあらず。確かに「熱風」には、そうした特集やアニメに関する記事が掲載されることもある。
 しかしそれ以外の、憲法改正や人口減少といった政治的社会的な問題、エコカーや人工知能をはじめとする最新テクノロジーについての論議、さらには“コンビニ”や“ヤンキー”といったユニークな切り口のテーマまで、多種多様な特集が中心となって誌面が構成されているのだ。
 それは冊子のキャッチに「スタジオジブリの好奇心」と銘打たれているとおり。

 これらの記事に登場する人々も、宮崎駿氏や高畑勲氏といったジブリに縁のある人々だけではない。現・外務大臣の河野太郎氏や、新国立競技場のデザインを担当した建築家の隈研吾氏、『ONE PIECE』作者の尾田栄一郎氏や映画評論家の町山智浩氏など、硬軟取り混ぜた著名人が毎号のように居並んでいる。

 ここで湧き上がるのは、「この熱気に満ちた雑誌は、いったいなんなのか」という疑問だ。この雑誌のありようを探ることで、活字メディアとネットメディアの未来が見えてくるのではないか。そう考えたのは、以前の記事でも語っているとおりだ。

 そこで今回は、スタジオジブリのプロデューサーにして「熱風」の発行人でもある鈴木敏夫氏を訪問。さらに「熱風」の初代編集長で現・編集人である田居因氏と、現・編集長の額田久徳氏にも併せて話を伺った。また今回の取材には、ドワンゴのエグゼクティブ・プロデューサーで、「熱風」の寄稿者のひとりでもある吉川圭三も同席している。

 ちなみに、あえて説明をしておくならば、「熱風」の仕掛け人である鈴木氏は、いまでこそスタジオジブリの“顔”として広く認知されているが、そもそもは徳間書店で「月刊アニメージュ」の創刊に携わり、二代目編集長を務めた人物。

 つまり今回の取材は、ベテラン編集者に「メディアとは何か? 編集とは何か?」を訊くというものでもある。
 取材中に“取材のまとめかたの善し悪し”を聞いてしまうなど恐ろしい展開にもなり、そこでは映画プロデューサーの顔とはまた違う、雑誌編集者としての鈴木氏を見ることができた。

取材/TAITAI
文/伊藤誠之介、TAITAI
構成/小山太輔

宮崎駿が看破した「熱風」の本質は──鈴木氏の“道楽”
TAITAI:
 今回の取材の主旨を軽く説明しますと、僕はゲーム雑誌やゲーム情報サイトの編集者を長らくやっていまして、そのあいだ「編集者ができることってなんだろう?」ということを考えているんです。それをこれだけ熱量のある雑誌を作られている大先輩にお伺いできればと思いまして。

鈴木敏夫(以下、鈴木)氏:
 編集者ができること?

TAITAI:
 ええ。鈴木さんはもともと、徳間書店で「アニメージュ」の編集長を務めるなかで宮崎駿さんと知り合われ、映画を仕掛けたりなど、いろいろな取り組みをされてきた方ですよね。

 そういう経歴に加え、この「熱風」では、アニメスタジオながら雑誌を立ち上げて展開するということをやっている。“アニメスタジオが編集部を持って雑誌を作る”というのはあまり聞かない話ですし、しかもその雑誌の質が非常に高い。「この雑誌はいったい、何なんだろう?」と思ったんですね。

鈴木氏:
 ああ、それは宮崎駿【※】がひと言で看破しましたよ。

TAITAI:
 宮崎さん! どんなひと言だったんでしょう?

鈴木氏:
 じつは「熱風」を始めるときに、宮さんに断りを入れていなかったんです。そうしたら宮さんが怒ってやって来たんですよ。「こんなの作ってないで、ちゃんと仕事やってよ」と(笑)。

 僕がそれを無視していたら、数ヵ月ぐらい経ってから彼が「わかったよ!」って言いに来たんです。


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電ファミニコゲーマー2018年2月15日 11:30
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