>>921
「ニセモノ」と「ニセモノ師」のエピソードを語ったものである。
いや、すごいわ、骨董の世界って。「ニセモノ」と言っても、海外で大量生産されているようなコピー商品の話ではない。
近代の名工が精魂傾けた複製に「時代付け」(汚したりくすませたりすること)を施し、さらに本物の年代物の箱や表具を添えれば、プロでも騙されるニセモノを作り出すことができる。
時には、新作陶芸の彫名を削り落として古染付に変身させたり、新作の徳利の高台を切り取って古唐津の高台をはめ込んだり、貫入(ひびわれ)にパラフィンを擦り込んで消してしまったり…。

さらに「すごい」のは、そういったニセモノに出くわしたときの、著者を含めた骨董商たちの振る舞いである。
1960年代、骨董業界には「ニセモノを売ったほうは悪くない。ひっかかったほうが悪い」という暗黙の了解があったという。
独立したての著者は、同業の先輩から1万7千円のフランスの香水瓶を”薩摩切子”と騙されて百万円で買ってしまう。
やられた!と思っても、決してキャンセルは言い出さない。「おかげさまで儲けさせていただきました」とシラを切り通す。
一方、著者の父親に騙されて「人をそこまでして騙していいかどうかよく考えるように、お前のオヤジにいっておけ」と怒鳴り込んできたお客もあるという。


中島先生の本を読む限りだとプロでも騙されるような偽がウジャウジャあるようだから
見ただけでは相当な眼力ないとキツイだろうな