それに比べると2位の川崎は支配する位置が高い。平均的位置が、ハーフウェイラインの少し手前まで上昇する。おおよそその位置でプレーする大島僚太を軸に、パスワークが展開されていることがよく分かる。ただし、ボールを奪う位置は決して高くない。相手陣内でボールを奪う頻度は、例えば鹿島に比べ2割ほど少ない。川崎は奪う力ではなく、パスを繋ぐ力でマイボールの時間を生み出している。

 また、ボールを支配する場所に注目すれば、川崎はサイドでも高い数値を維持していることが判明する。エウシーニョ(右)、車屋紳太郎(左)の攻撃参加が光るのだ。「現代サッカーではサイドバックが活躍した方が、試合を優位に進めることができる」とは、欧州でよく語られているサッカーの常識だが、これに従えば、川崎の優勝には必然性を感じる。

 一方、鹿島は右と左で大きな差がある。右は川崎にも勝る高い数値を示すが、左は低い位置に止まる。右SB西大伍を軸とする、右サイドからの攻撃は円滑だが、左は高い位置まで進出できずにいる。

 川崎の左サイドバックが、左利きの車屋であるのに対し、鹿島の左サイドバックは右利きの山本脩人。両左SBの利き足の差は大きい。さらに、鹿島は山本の前で構える左サイドハーフ、レアンドロが中央でプレーする機会が目立つ。つまり鹿島の左前方には、誰も選手がいない状態が多いのだ。

 川崎と鹿島。優勝を分けた差はわずかに1ポイントだが、それと両サイドのバランスは密接な関係にある。左サイドをどう強化するか。鹿島の問題はここに尽きる。だが今季、目玉として加わった選手は、右サイドバックの内田篤人。欲しいのは左サイドができる左利きだとデータは語っているのだが。

 それはともかく、もし鹿島と川崎が合体すれば、それはとてもよいチームになるだろう。高い位置でプレスが掛かり、パスがよく回り、そしてサイド攻撃も充実したサッカー。攻撃的サッカーの要素を完璧に満たした好チームだと言える。

 この考え方をベースに日本代表を作った方が遙かに期待が持てるチームになる。この日本サッカーを否定的な目で見るハリルホジッチが監督を務める日本代表より。そう考えるのは僕だけではないはずだ。日本代表の現状が残念で仕方がない。
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