ミクシィにとっても、本社がある渋谷にスポーツを通じてエンターテイメントを発信できる拠点ができることは大きい。両者の思惑は一致しており、前向きに話し合いが進んでいく可能性は十分にある。一スポンサーからパートナーへ。関係が発展していくにつれて、実現に近づくことになる。
 
 ここで少し時計の針を戻して、なぜFC東京がスタジアム建設を目指すに至ったのか、振り返ってみたい。01年に完成して以来、ホームスタジアムとして使用してきた味の素スタジアム(調布市)は、クラブと共に数々の歴史を共有してきた大切な場所。だが観戦する環境として見た場合、グラウンドとスタンドの間には陸上トラックのスペースがあり、臨場感に欠ける部分があった。

 また、京王線飛田給駅から徒歩5分と交通アクセスも悪くはないが、FC東京の本社がある江東区など23区内からは遠いという難点もある。FC東京は、スタジアムが調布市、練習場が小平市にあるため、東京西部のチームというイメージが強いが、東京都全体をホームタウンとしているのだ。今後「首都クラブ」として発展していくために、23区内に本拠地を持つことは必要不可欠なことではあった。
 
 具体的に動き出すきっかけとなったのは、新国立競技場の建設遅れだ。2020年東京五輪で使用する新国立競技場は、当初は19年ラグビーW杯のメイン会場になる予定だった。だが建設費が莫大になることからいったん白紙となるなど計画が遅れたことで、15年9月に急遽、味の素スタジアムがラグビーW杯の会場に追加された。すでに開幕戦や3位決定戦の会場に決まっており、大会期間中はラグビーW杯の独占使用期間となる。現段階では約2か月使えない見通しとなっている。
 
 FC東京の昨季のホーム平均観客数は2万6490人で、浦和に次ぐリーグ2位を誇る。だが東京にはこの人数を収容する陸上競技場すらなく、現状ではナイター設備のない駒沢陸上競技場(約2万人収容)で代替するしかない。リーグやカップ戦など4試合前後は代替開催が必要で、クラブは収益面で大きな打撃を受ける。そんな大事な問題にも関わらず、味スタ側から事前に連絡がなかった。このことが“新居探し”に拍車を掛けた。

つづく