雪舞う大みそか。今年9月で引退すると表明した安室奈美恵の出演が決まり、世間の関心を呼んだ「第68回NHK紅白歌合戦」が、大団円を迎えた。

 ラスト紅白。安室の選んだ衣装は純白のジャケットにロングスカートだった。奥行きのある立体的なセットの中で、
25年の歌手人生をかみしめるようにNHKリオ五輪テーマ曲「Hero」を歌い上げた。

 午後11時すぎ。舞台裏にある楽屋付近の通路のモニターには、「安室さんの姿を見たい」と多くの出演者らがこぞって集まり、
安室の熱唱を見守った。100人ほどの人垣ができて、通路は10分ほど人が通れない状態になった。
他のアーティストには見られないような光景だった。歌い終えた安室が涙を見せると、拍手が起きた。

 追い込み作業まっただ中の報知新聞社編集局内でも、多くの社員が、テレビ画面に映る歌姫の姿にくぎ付けとなった。
紅白でここまで注目されるアーティストが近年いただろうか。トリ前の出演だったが、事実上のトリといえる存在感だった。

 NHKも歓喜に沸いた。ある同局関係者は「安室さんに出演していただけて本当に盛り上がった。ありがたいのひと言」と声を弾ませた。
本番開始前、普段クールな印象の上田良一会長も「本当に良かった。いろんな思いで紅白出て下さるのでしょうし、
期待されている視聴者も多いと思います」と珍しく喜色満面だった。

 「夢を歌おう」をテーマに、同局は一昨年から2020年東京五輪・パラリンピックに向けた4か年計画を掲げた。
2年目となった今回は、出演46組が登場する豪華な最新CG技術を駆使した特別映像で幕開け。
総合司会のウッチャンナンチャンの内村光良が、コントを舞台に取り入れるなど新たな試みが随所に光った。
一昨年の映画「シン・ゴジラ」のパロディー、タモリ&マツコ・デラックスの“徘徊”寸劇をさらに進化させた形の演出に見えた。

 ただ一方で「これだけ盛り上がってしまうと次回へのプレッシャーになる」と話す関係者も。苦い記憶がある。
一昨年、解散を表明したSMAPに出演オファーを出し、本番直前まで粘り強い交渉を行ったが断念に追い込まれた。
“目玉”不在となった結果、平均視聴率は歴代ワースト5位の40・2%(第2部)にとどまった。

 今回は安室同様、桑田佳祐も直前に特別枠での出演が決まり、横浜のライブ会場から生中継で盛り上げた。
局を挙げて成功裏に終えた紅白の平均視聴率は17年ぶりに「50%の大台を突破するのではないか」との声もある。
あす2日に発表される視聴率は、おそらく一昨年を上回る結果となるだろう。だが仮に大台を突破すれば、
同局にとってよりハードルは高くなる。4か年計画の3年目は、「安室奈美恵ラスト紅白」以上のインパクトを期待されることになりそうだ。(記者コラム)

報知
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