「パッケージに嘘はない」。英国ではお馴染みの、品質と信頼性を強調したペンキ会社の宣伝文句だ。もしも国内で岡崎慎司のCMを作るとなれば、同じキャッチフレーズが採用されるかもしれない。
ペンキの色は、レスターと日本代表に共通するチームカラーの青。丸い缶の蓋には、岡崎の人懐っこい笑顔。唯一の懸念は、側面に入る商品説明が限られてしまいそうなことか。

攻守に献身的なパフォーマンスが、この国でも広く認められていること自体は歓迎できる。しかしながら、実際の岡崎はゴールへの嗅覚をも兼備したストライカーである。
「ハードワーカー」という特長だけが強調される状況は、本人のデメリットにもなりかねない。

例えば、レスターが金星を挙げた第14節トッテナム戦後の報道である。この日のレスターは、4対6の割合でボールを支配されてもカウンターが冴え、ジェイミー・バーディーとリヤド・マフレズがネットを揺らして勝利した。

■カウンターを促進し、ボックス内で存在感があるのに。
 
2シーズン前の奇跡のプレミア優勝を彷彿とさせる展開。国内メディアから「ビンテージ風」とその戦いぶりを称賛されたが、岡崎に対する採点は芳しくなかった。レスター攻撃陣の中では最低の10点満点中7点が多く、
大衆紙の1つである『ミラー』紙の寸評には、「お察しの通り、チームのために力を振り絞る働きぶり」という決まり文句だった。

ただ実際のパフォーマンスは、それ以上だった。レスターの十八番であるカウンターが機能し、バーディーとマフレズがゴールを奪えたのは岡崎がいたからだ。
中盤とのリンク役となってカウンターの速度を高め、自らもボックス内に顔を出して相手ゴールへの脅威となる。プレミアリーグで自己通算100得点目を決めたバーディーも
「そろそろ時期だった」とコメントしていたほど、岡崎がレギュラーに返り咲いてよい時期かに思われた。

 だが、新たに招聘したクロード・ピュエル体制下で、岡崎に先発機会が増えたわけではない。バーディーのサポート役としてマフレズの次に序列が高いのは、岡崎ではなくデマーレイ・グレイ。
本来ウインガーのマルク・オルブライトンが、トップ下で起用された試合もある。

■バーディーが生きる2トップの相棒は、岡崎が最適。
 
一方で岡崎は、終盤にインサイドハーフとして投入されたこともあった。「力のある選手だとは理解している」と語る新監督も、岡崎をハードワーカーとして買っているにすぎない。

自分の色を出し始めたい新監督の心境はわかる。ピュエルは4-4-1-1、4-2-3-1、4-3-3、追う展開になれば3バックも採用するなど試行錯誤中だ。
ただ基本的には、バーディーを生かす裏へのパスだけではなく、パスを回しながら最後は個人技でとどめを刺す攻撃パターンを加えたいようだ。

その一環として起用されている21歳のグレイに関しては、マフレズに来夏移籍の可能性があるので、それを踏まえて、状況判断など若さゆえの弱点を今季の実戦を通じて改善させる考えもあるのだろう。
とはいえ、監督交代後も不動のCFなのはバーディーである。それはリーグ戦でチーム最多の7得点を挙げていることから明らかだ。
2トップの相棒としては守備の負担を減らせる面、バーディーが外からえぐった場合にターゲットとなれる面でも岡崎が最適と思われるだけに、やはりベンチスタートはもったいないように思える。

つづく

12/21(木) 11:01配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171221-00829541-number-socc