ヴィルヌーヴ監督は、最近では不可能とされている型破りな映画を作った。予算が1億ドルにも上る贅沢な映画は、派手なアクションものではなく芸術性にフォーカスした作品なのだ。映画撮影監督のレジェンド、ロジャー・ディーキンスが撮った全ての映像には、色や命、そして様々な感覚が詰まっている。

映画の上映時間は3時間近くだが、退屈することなく、むしろこの長さを活かしてヴィルヌーヴ監督がユニークな情緒と雰囲気を遺憾なく発揮することができた。
ハリソン・フォード演じるデッカードの登場はやや遅いが、彼に関する謎を中心にこの映画は作られている。そしてデッカードが現れた瞬間、待った価値が十分にあることが分かる。偉大な俳優は、デッカードというキャラクターと彼がこの30年間に経験したであろうことに独創的な解釈を加え、胸をえぐられるような、静かな演技を披露してくれる。

   
一方、ライアン・ゴズリングは、人生にウンザリするほどにたくさんの辛いことを経験した私立探偵のようにKを演じている。彼とハリソン・フォードは完璧にやり合っている。二人が「似ている」というのはもはや必須要件ではない。

彼らの組み合わせの素晴らしさは、故障したホログラフのカジノのショーの中で両者がぶつかり合う秀逸なシーンを観れば分かる。実際に観ないと信じられないほど見事な一幕なのだ。
他のキャスト、特にシルヴィア・フークス(ラヴ)とアナ・デ・アルマス(ジョイ)もそれぞれ印象深く、適切な演技をしている。だが、この映画をまだ観ていない人のためにも、私はこれ以上のネタバレを慎重に避けなければならないので、詳しい説明はやめておこう。

1作目から「ブレードランナー」は常にアイデンティティへの問いかけである。さらに問い続ける「ブレードランナー 2049」の制作陣は、映画の中でデッカードの物語を解き明かしつつ、このテーマに新しく魅力的で、バラエティに富んだ解釈を与えた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171026-00000006-ignjapan-movi