スポーツメディアを展開する英パフォームグループの動画配信「DAZN」(ダ・ゾーン)は8月29日、日本でのサービス開始から1年で会員数が100万人を突破したと発表した。

ダ・ゾーンは昨年7月、Jリーグと10年間、合計2100億円に及ぶ放映権契約を結び話題となった、スポーツ専門の配信サービス。料金は月額1750円(税抜き)で、130以上のスポーツ、年間6000試合以上が楽しめる。ダ・ゾーン事業のCEOを務めるジェームズ・ラシュトン氏は「日本は複数のスポーツを楽しむファンが多い」と分析し、会員獲得に自信を見せていた。

スポーツ専門の配信サービスは、ソフトバンクグループとヤフーによる「スポナビライブ」ぐらい。日本ではなじみがなく、戦略を疑問視する声もあった。だが、ダ・ゾーンはその後NTTドコモとの提携を発表。ドコモが月額980円の専用プランを売り込み、順調に獲得が進んだようだ。

国内勢の成長速度は鈍っているのか?

しかし、国内の動画配信市場は成長鈍化、競争激化が明らかだ。ドコモとエイベックス通信放送が提供する「dTV」は一時期会員数が500万を超えていたが、最近は460万人付近で停滞している。米ネットフリックスや米アマゾンのプライム・ビデオをはじめ、競合が増えたことで、ユーザー獲得の難易度は増しているようだ。

dTVの総コンテンツは国内最多の約12万。映画やドラマはもちろん、音楽やニュース関連の動画など幅広いジャンルをそろえ、期間限定の独占配信作品や、頻繁にコンテンツを入れ替えるなど鮮度にもこだわっている。さらにサービスの裾野を広げようと、船井電機が販売する液晶テレビのリモコンに「dTVボタン」を付けるなど、巻き返しを進めている最中だ。

日本テレビ傘下のHuluも厳しい局面にある。

今年6月末の会員数は154万人と3月末の155万から減少。今期は「競争を勝ち抜くためにコンテンツやシステム面を強化する」(廣瀬健一経営管理局長)としていたが、5月のシステム刷新で視聴トラブルが発生。日本テレビが取得して以降、初の純減になった。

ただ、7月以降は盛り返しており、どのように純増ペースを取り戻すのか注目される。

一方、アマゾンはプライム・ビデオのコンテンツ拡充を進める。ビデオ事業本部長のウェイド・ワカシゲ氏は「今年、独自作品を去年と比べて2倍に増やす」と宣言。アマゾンの「プライム会員」は日本国内で800万人以上いるとみられ、影響力は大きい。業界のコンテンツ競争は過熱しそうだ。

こうした厳しい環境の中、ダ・ゾーンはどう会員獲得を進めるのか。ラシュトンCEOに聞いた(次ページからインタビュー)。

――日本でのサービス開始から1年で会員数が100万人を超えた。予想と比べてどうだったのか?

100万という数字には満足しているが、予想どおりだ。当社のサービスは30日間無料で利用できて、そのまま解約もできるが、この数字には無料期間だけで解約したユーザーは含めていない。

非常に強いファンのベースができており、1年前、ユーザーの月間平均視聴時間は10時間だったが、それが16.5時間まで伸びている。今は欧州のサッカーがオフシーズンなのでユーザーの視聴動向はやや静かだが、シーズンが始まればもっとアクティブになる。

――100万人突破はドコモプランによる加入が多いと思うが。

詳細はいえないが、ドコモは重要なパートナーで、かなりの加入者がドコモプランで加入している。ドコモも目標を予定より早く達成したようだ。

――最近ではドコモのdTVや日本テレビのHuluなども伸び悩んでいる。競争激化の影響はないのか?

たとえば映画やショーなどを配信する場合、さまざまな作品を購入して放映するが、独占配信権がなく、他社でも見られる可能性がある。独占放映権を持ちたいならオリジナル作品を製作しなくてはならない。だが、ヒットするかどうかはわからない。かなりのリスクを負うことになる。

スポーツの場合は独占配信権を獲得できる。獲得できれば当社だけがそのコンテンツを配信できるので競争を避けられる。これがスポーツ配信のいいところだ。しかも、サッカーや野球のファンがどのくらいいるか、ということを把握できるので、エンタメと比べてリスクは低い。

ただし、スポーツ業界はこうしたことをよくわかっているので、独占権を獲得するにはかなりの額が必要だ。長期的な戦略が求められる。