NHK・Eテレの「趣味の園芸」(日曜朝)が放送50年を迎えた。「季節の草花の楽しみ方、育て方を分かりやすく、正確に伝える」というコンセプトはそのままに、放送2500回を超える老舗番組は、園芸好きの日本人から愛されてきた。

 「20世紀はブームに乗っかってニーズに応え、最先端の情報を伝えてきた。近年は、新しい園芸のスタイルや花と緑との関わり方を発信してきた。その姿勢が視聴者の信頼につながったのではないか」。2010年から今年6月初めまで担当してきた土田貢司前チーフプロデューサー(CP)は、これまで番組が続いてきた理由をこう分析する。

 1967年に始まった番組の歴史は、そのまま日本の園芸史と重なる。開始当初は、盆栽や国内に自生する山野草などを紹介していたが、海外の植物が身近になってくると、それらをいち早く取り上げた。90年代に「ガーデニング」が流行語に選ばれるほどのブームになれば、それを意識したテーマを設定し、マンション住まいが増えると、庭がなくても楽しめる園芸を提案した。常に時代の流れをくみ取って視聴者に寄り添ってきた。

 21世紀に入りガーデニングブームが下火になると、園芸に対する需要は伸び悩み、番組のメイン視聴者も60〜70代のまま。これまでのスタイルを続けても尻すぼみになるという危機感から、高齢者や愛好家以外の新しい層を取り込もうと、リニューアルを進めてきた。

 2011年から司会を務める30代の俳優、三上真史(まさし)さんは、視聴者目線の丁寧なナビゲートが好評。「園芸王子」として幅広い層から親しまれ、裾野の広がりに一役買っている。「園芸は暮らしを豊かにするし、植物から教わることも多い。興味はあるけど、やり方が分からないという人が園芸を始めるきっかけにしてほしい」と呼び掛ける。

 番組では、従来の「植物の育て方」に加え、「花と緑との新たなつき合い方」を提案する。視聴者から園芸にまつわるエピソードを募集して紹介する「花信」や、番組の講師が視聴者の庭を訪れ、リフォームする「解決!ガーデンマスター」というコーナーをここ数年で立ち上げた。中でも「解決!−」は若い層から応募が多いという。

 今年からは、花を写真に撮るテクニックを紹介するコーナーを始めた。「自分で育てる」ことからハードルを下げ、より多くの人に興味を持ってもらうのが狙いだ。土田前CPは「花と緑には、人を感動させたり、人生を変えたり、人と人とをつなげる力がある。その可能性を訴えるのがこの番組」と力を込める。「趣味の園芸」という“庭”にはますます多くの人々が集いそうだ。

◆バラの達人・平泉成が語る魅力

 俳優平泉成(せい)さん(73)は、二十年ほど前から自宅でバラを栽培している。一、二本から始めて、現在では三十種五十本ほどになったという。「趣味の園芸」五十周年の記念番組にも出演した平泉さんに、園芸の魅力などを聞いた。 (聞き手・鈴木学)

 −始めたきっかけと、お気に入りの種類は。

 家を建てた時、近所にキレイなバラを育てている家があって「おれもやってみようか」と思って始めました。バラは咲いたところだけではなく、咲き終わった後も見て、香りもかいで選びます。洋服選びと一緒で好みが出ます。お気に入りは、薄いピンクで花が比較的大きなロココ。可憐(かれん)な一重のデンティベスも好きです。

つづく

2017年7月30日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2017073002000204.html