熱戦が続く全国高校野球選手権の地方大会。試合を支える審判員の人繰りが近年、高齢化などで厳しくなっている。岐阜や三重では、平日の試合に都合を付けてもらおうと、審判員の勤務先に「依頼状」を送ったりと涙ぐましい努力が続く。一方、早くから若手の呼び込みに注力した愛知は人材を確保しており、明暗が分かれている。

 「10年もしたら、態勢が持たないのではないか」。岐阜県高野連審判部の川島稔部長(69)は、審判員の年齢層の高さを危惧している。県高野連に登録する審判員は現在106人。うち60、70代は50人と半分近くも占める。最年長は78歳。一方、20〜40代は21人しかいない。

 各校の監督らを通じて生徒や保護者に呼び掛け、今年は6人が入った。だが、今年も準々決勝から決勝の3日間は平日に試合が組まれ、人繰りは厳しい。審判員の勤務先に高野連会長名の依頼状を送り、「何とか試合に出てもらえないか」と1人ずつ電話で懇願している。

 70人の審判員が登録する三重県も、平日の試合に参加できるのは25人程度。炎天下で行われる夏の大会で、1人の審判が一日2試合を掛け持つケースも多い。

 審判歴32年の加藤剛さん(51)は「熱中症で体調を崩した審判もいる。体力的にきつい」とこぼす。2試合を担当する審判員は、体内から水分が抜けるアルコールの摂取を前日は控え、当日は小まめに水分をとるなどしている。

 体力のある若手が頼みの綱だが、審判部の堤長功副部長(52)は「会社を休むと、居場所がなくなったり、クビになったりしないかと恐れ、休みづらいだろう」と頭を悩ませている。

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 愛知県高野連は今年の登録者が286人。ピークの2009年の301人よりやや減少気味だが、人材は豊富だ。数年前から練習試合や地区大会の塁審に入った高校生たちに声を掛け、卒業後に審判員になってもらうよう力を入れる。

 日本高野連(大阪市)によると、高校野球の審判員になるための資格などはなく、都道府県ごとに高校球児経験などを条件にしているところもある。通常は研修を受けてデビューする。

 愛知県高野連の場合、春と夏大会前に講習会に参加した後、練習試合の審判などで経験を積み、おおむね1年ほどで公式戦の球審を務めていく。

 今春、高校を卒業した会社員河合拳汰さん(18)=愛知県豊橋市=は「好きな高校野球に一番近くで携われる」と審判員になり、今夏の愛知大会では球審を務めた。「仕事と両立ができれば野球好きな人は入ってくると思う」と話す。

 日本高野連事務局は「競技人口の減少の影響もあり、特に少ない地域は深刻だろう」としつつ、「審判員確保の方法は都道府県ごとに異なるため、それぞれの工夫に任せている」と話している。

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