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2017/07/06(木) 22:09:30.31ID:CAP_USER91998年、当時アストン・ビラ(イングランド)を率いていたジョン・グレゴリーの名言だ。現代におけるセンターバックの価値を、とてもシンプルに言い表している。
別の言い方をすれば、それだけ理想の人材が少ない、ということでもあるだろう。だから、トップレベルで活躍するセンターバックは選りすぐりのエリートと言ってもいい。
そもそもセンターバックは、過酷な宿命を背負ったポジションである。何しろ、彼らが相手にするのは、これ一つで大金を稼げる、というくらいの強力な武器をもったスペシャリストばかりだ。
空域を我が物にする巨人、高速で駆け抜ける韋駄天、こつ然と姿を現す伏兵、さらには蝶のように舞い、蜂のように刺す魔人……。多士済々の大駒を向こうに回して、自軍の玉(ゴール)を守り抜かなければならない。
したがって、どんな相手にも出し抜かれない、すぐれた対応力が必要だ。相手が高ければ高いなりに、速ければ速いなりに、巧ければ巧いなりに、知恵を働かせ、適当なスキルや駆け引きを用いながら、刺客を危険地帯から締め出していく。
一対一の強さだけではない。相手の企図を見透かし、危険な「共謀」(数人が絡むコンビプレー)を防ぐ、深い洞察力も必要だ。これもまた、センターバックの良し悪しを左右する要件かもしれない。
アタッカーなら、90分のうち1回でもチャンスをものにすれば英雄になりうるが、センターバックはわずか1回のミスで戦犯扱いされかねない。ゴールキーパーと同様、失点に直結しやすいポジションの難しさだ。精神的にもタフでなければ務まらないだろう。
かつては90分、敵にべったり張り付いて、仕事をさせないマンマーク専門のストッパーもいたが、いまや絶滅危惧種に近い。ひと昔前と比べても、センターバックに求められるハードルは、きわめて高いのだ。
アタッカーの高速化、大型化が加速している。それに対抗するだけのサイズや運動能力がなければならない。加えて、攻撃側に有利なルール改正(バックパスの禁止、オフサイド基準の緩和、ファウルの厳罰化など)も、センターバックの仕事を難しくしてきた。
さらに、現代では「攻撃の始点」としても相応の能力が求められている。球を奪うまでは一流でも、せっかく奪った球を簡単に失うようではまずいわけだ。
かつての基準に照らせば、当代の最高峰にあるセンターバックは「超人」と言ってもいい。その代表格が、セルヒオ・ラモス(レアル・マドリード)だ。
速い、強い、高い、巧い――。
三拍子どころか、四拍子がそろった「怪物」だろう。身長183センチと現代の基準では決して高くはないが、そのハンディを補って余りある運動能力の高さをもっている。
若い頃にスペイン屈指のサイドバックとして鳴らした走力と攻撃センスは抜群。後ろからの組み立てを難なくこなし、スピードスターにも競り負けず、巨人がひしめく空中戦でも無双の強さを誇る。事実、これまでに何度も価値あるゴールを決めてきた。
球際で激しくファイトする闘争心も別格。勢い余ってカードをもらうこと以外に、これという死角が見当たらない。現代でもっとも完成されたセンターバックだ。
同じ万能系としてチアゴ・シウヴァ(パリ・サンジェルマン)の名前を挙げてもいい。S・ラモスほどの尖った個性はないものの、目立った弱点がなく、こと安定感では世界でも一、二を争う存在だろう。
S・ラモスに「速さ」で勝るのは、ラファエル・ヴァラン(レアル・マドリード)だ。スピードスターの天敵で、火消しに回る疾風のカバーリングも出色。このヴァランのようなタイプがいれば、最終ラインをぐっと押し上げて戦うことも難しくない。