「本当にこの国のマスメディアは異常というか、新しいスターをつくり出したくてしょうがないのでしょう。早実清宮の100号ホームランの報道を見て、あらためてそう思いましたね」

こう語るのは、スポーツファンの松野弘氏(東農大客員教授)だ。

早実3年の清宮幸太郎内野手が去る4日、愛知県で行われた招待試合で史上2人目となる高校通算100号を達成。

翌日のスポーツ紙はこぞって1面でデカデカとそれを報じ、テレビのワイドショーは、推定135メートルの記念の場外弾を拾った男性を見つけてマイクを向け、
ボールを拾った時の詳しい状況をわざわざ聞き出していたのは呆れるより、お笑いだ。前出の松野氏が声を荒らげて続ける。

「100号本塁打といっても、ほとんどは練習試合のもの。過去に107号を打った選手(山本大貴=神港学園―JR西日本)はプロの選手にはなっていない。
狭い球場でレベルが低い投手から打ったホームランも数に入れて何を大騒ぎしているのか。メディア不況とはいえ、まったくバカバカしい」

稀勢の里と同部屋の高安が大関に昇進した時も似たようなものだ。子供の頃に野球をやっていた話、角界に入門後に何度も脱走したことや行きつけの店、
元AKB48で女優の秋元才加が幼なじみであることなど、どこのテレビ局も横並び報道に終始していた。スポーツライターの工藤健策氏が言う。

「日本人の特質なのか、メディアは同じことを一斉に報じ、熱が冷めるか、新たな“獲物”が見つかると、一斉に引いていく。
あれだけ注目された森友学園の問題も、今ではすっかり忘れられてしまった感がある。

マスコミが追及をやめたら、元理事長だけが悪者で疑惑は疑惑のままで終わってしまう。メディアが清宮選手の100号ホームランで騒ぐのも基本的な図式は同じようなもの。
プロ野球は二刀流の大谷選手が故障中だし、サッカーではこれといったスター選手がいないですから。ここぞとばかり飛びついて騒ぎ立てているのです。

ワイドショーでは見慣れた顔のコメンテーターたちが、清宮や新大関の高安について『プロに行って欲しい』『兄弟子の稀勢の里と優勝争いをして欲しい』と言う。
世に言う電波芸者たちが連日、得意顔で愚にもつかないことを言っている。確かに、加計学園疑惑などで言い訳している安倍首相の顏を見ているより、
スポーツネタの方が視聴者には受けがいいでしょう。しかし、報道のバランスからいっても、今は多くの時間を割いて国民に報じるべきこと、厳しく追及しなければならないことが山積している」

■ヨイショと及び腰

政府は、かつて国会で3度廃案になった共謀罪法案を「テロ等準備罪」に名称を変えてゴリ押ししようとしている。
理事長が安倍首相の「腹心の友」である加計学園獣医学部の認可・新設問題。

その裏に、安倍総理の意向があったと暴露した前川喜平前文部科学事務次官を、何とか悪者に仕立て上げたい政府の詭弁。
安倍首相に近いといわれる元TBSワシントン支局長のレイプ問題が闇に葬られた件も、被害者の女性が顔をさらしてもみ消し疑惑を訴えているのに捜査機関は知らんぷり。

どれもマスコミの“援護射撃”が必要なものばかりだ。

前出の松野氏が言う。

「かつて大宅壮一(作家・社会評論家)が一億総白痴化と言いましたが、まさにその通り。低俗なテレビ番組ばかり見て頭を使わず、感情で動く者が増えている。
例えば、清宮選手はこの夏、予選を勝ち抜いて甲子園で活躍するかどうかで真価が問われるわけで、練習試合のホームラン数など関係ない。

若いスポーツ選手をヨイショしたり、政府の悪事に及び腰のテレビや新聞の報道姿勢をどう見るか。常に疑問を持つことが、スポーツでも政治においても大事なことです」
清宮でバカ騒ぎすることが、結果として諸問題を追及してしかるべきメディアの矛先を鈍らせているとすれば、看過できないのではないか――。

写真
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2017年6月7日 日刊ゲンダイ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/206839/1

2017/06/09(金) 00:18:49.66
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