トランプ大統領との自動車戦争、日本はこう攻めろと元経産官僚
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181205-00010006-flash-peo

「日本では100キロのボウリング球を20フィート(約6メートル)の高さから車のボンネットに落としてテストする。それでへこんだら不合格になる。なんとひどい国だ!」

 これはトランプ大統領が安倍晋三総理と自動車問題を語るとき、口癖にしているセリフだ。日本市場の閉鎖性を象徴する事例として、トランプ大統領が繰り返し語るエピソードだ。

 米国は常々「日本の自動車市場には非関税障壁がある」と主張する。かつて私自身も経済産業省時代に米国と自動車交渉をしていた頃、米国の理解不足、誤解に何度も直面して
辟易した。なかでもトランプ大統領自身の誤解は強烈なのだ。

 確かにこうしたテストを行っているのは事実だ。しかしこれは歩行者を保護するため、人の頭部がぶつかっても大丈夫なように、車のボンネットが十分柔らかいかどうかを
確認するものなのだ。

 したがって、ボンネットが「へこんだ方が合格」する。トランプ大統領が言う、「へこんだら不合格」とはまったく逆なのだ。

 しかもこの歩行者保護のためのテストは国際基準になっており、米国以外の世界各国が採用している。米国だけが特殊なのだ。

 もちろん日本はこれまでも米国に事実を丹念に説明している。

問題はトランプ大統領自身で、安倍総理に会うたびに、このセリフをくどいぐらい繰り返すのだ。その都度、安倍総理は根気よくトランプ大統領に説明している。

 しかしまた日が改まると、何事もなかったかのようにこの話題を持ち出すのだ。トランプ大統領の頭に一度刷り込まれたものはなかなか消せない。

 話はこれで終わらない。

 実は米国政府は、国際基準に合わせるために米国の制度改正の準備をしていたのだ。そこにきてトランプ大統領のこの驚きの発言だ。米国政府も制度改正を大統領に
言い出せなくなってしまった。

 こうした笑うに笑えない事態が政権内で起こっている。

 2018年9月、トランプ大統領は国連演説においてグローバリズムを明確に拒否した。世界貿易機関(WTO)に対する批判も強め、WTOの脱退までちらつかせている。

 日本もその米国問題の標的にされそうになっている。

 日本と米国の間には、かつて、大きな自動車摩擦があった。1995年の日米自動車交渉が「第一次自動車戦争」だとすると、これから始まるのは「第二次自動車戦争」だろうか。

 今後の新交渉に臨むに当たって、注意しなければならないことがある。日本は「受け身一辺倒」にならないことだ。日本はメディアも含めて、伝統的に「米国から
攻められるのをどう守るか」にばかり関心がいく悪い癖がある。

 しかし交渉は相手を攻めることも大事なのだ。攻撃は最大の防御だ。

 具体的に米国を攻めるべきポイントは「米国の自動車関税」だ。実はこれが米国のアキレス腱であることは、あまり知られていない。

 ビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)の儲け頭であるピックアップトラック、SUV(スポーツ用多目的車)などには、「ライトトラック」として25%の関税が
かけられている。乗用車では収益を上げられないビッグスリーにとってこれを死守することは死活問題だ。

 驚くことに米国は50年以上も前からこの高関税を譲らない長い歴史がある。米国の「ライトトラック」へのこだわりは尋常ではない。