マルクス主義者の動揺せる戦術

このころに、われわれの敵の戦術がたえず動揺して、途方
にくれており、また援助もないのを見て、追撃していくことは、すばらしいことであった。まず
かれらは、かれらの支持者に対して、われわれに注意せず、われわれの集会を避けるように勧告し
ていた。
 これはまた一般にじゅん守された。
 だが、時がたつにつれて、それにもかかわらず個々に集まってき、その数は徐々にではあるが
しかしだんだんと増加し、われわれの教説の印象が明白だったので、その指導者たちも次第に神
経質に、不安になってきた。そしてかれらは、この発展を永久に傍観していてはならず、テロで
始末しなければならない、という確信にこりかたまったのである。
 その結果、われわれの集会の代表者の「君主制的、反動的扇動」にプロレタリアートの鉄拳を
みまうために、「階級意識にめざめたプロレタリア」に、いまや大挙してわれわれの集会に行く
べしという教唆が発せられた。
 そこでわれわれの集会は、突然に開会四十五分前に早くも労働者でいっぱいになった。かれら
は火薬だるまと同じで、いつ爆発するか、しでに火縄に火がついているようなものだった。だがい
つも反対の結果になった。人々はわれわれの敵としてはいってくるが、われわれの支持者となら
ないまでも、自分たちの教説の正しさを考えて、実際批判的な検討者となって、出て行くのだっ
た。

そこで、かれらの指導者たちは、はじめてほんとうに不安になってきた。そしてすでに以
前にこの戦術に反対して、労働者に原則としてわれわれの集会へ出席することを禁止することだ
けが正しいのだという意見をいまやさももっともらしく論じている人々のいうことを、ふたたび
聞くようになったのである。
 そこで、かれらはもはやこなくなったか、きてもわずかだった。だがしばらくすると、この演
技がすべて、はじめから新たにはじまったのだ。
 だが禁止は守られない。同志はだんだんとふえてくる。そしてついにふたたび急進戦術の支持者
が勝つ。われわれをたたきのめさなければならないのだ、と。
 さらに、二回、三回、しばしば八回も十回もの集会が開かれた後に、集会を解散させるなどと
いうことは、いうはやすく行なうは難しということがわかり、そして集会のたびごとの結果が赤
色闘争軍の崩壊を意味するということがわかると、とつぜんまた他の合言葉があらわれた。「プ
ロレタリアの男女同士諸君! 国家社会主義の扇動者の集会を避けよ!」 と。

アドルフ=ヒトラー著 「わが闘争」