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なおぼうの中に俺を刻みこむかのように腰を振るのだった
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2018/11/13(火) 23:31:15.230

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2018/11/13(火) 23:31:24.79p
それから僕らは電車に乗ることなく、そのまま買った切符で駅を出て、繁華街の方へ向かった。
途中、師匠は自販機の前で立ち止まった。あまり見ない、サンガリアの自販機だった。
そこでメロンソーダを三本も買ったので、どうするのかと訊くと、差し入れだという。
「あのデブ、これが好きだからな」
その一言で、これから向かう所がどこなのか分かってしまった。
それから僕らは繁華街から少し裏へ入った通りを進み、
薄汚れた小さなアパート、いやアパートのようなマンションの前で止まり、中へ入っていった。
なんだか小汚い印象のエレベーターを使い、三階の中ほどにある部屋が目的地だった。
表札はない。新聞の勧誘や訪問販売の人間につけられたのか、小さなシールがドアの端に幾つか貼られている。
『写真屋』と呼ばれる男の部屋だった。
本名は確か、天野と言ったか。
通り名のとおり、写真を生業にしている男だったが、いわゆる普通の写真屋ではなかった。
街なかの普通の写真屋に持ち込んだのでは、フィルムを現像してもらえないような種類の写真を、
少々割高な値段で何も言わずに現像してくれるという類の、そういう商売だ。
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2018/11/13(火) 23:31:43.96p
いや、僕も最初のころは単純にそう思っていた。
この『写真屋』は、小川調査事務所も浮気調査に関する証拠写真などの現像で贔屓にしているのだが、
師匠は個人的にもこのアンダーグラウンドな世界の住人と仲が良く、悪友とも言える関係を築いていた。
「写真屋、いるか」
師匠はチャイムを鳴らした後、ガンガンとドアを叩く。
中から物音がしたかと思うと、しばらくしてドアが細く開けられる。
「ぼくがいないことがあったか」
眼鏡の奥の暗い目がドアの隙間から覗く。
ドアチェーンが外され、僕らは部屋の中に招き入れられた。
中に入ると、異臭としか言いようのない匂いが鼻をつく。
部屋中のいたるところにゴミが散らかっているが、匂いの原因はそれだけではない。
この部屋の主人は、その一室を暗室に改造して、そこで現像作業をしているのだ。
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2018/11/13(火) 23:32:27.36p
その時に使う液体の匂いがこの異臭の主たる原因だった。
『写真屋』はその暗室のドアの前を通り過ぎ、片方の足を引きずりながら部屋の奥に進むと、
三台のパソコンに囲まれた机にとりつくようにして座った。
「差し入れだ」
師匠が三本のメロンソーダを差し出すと、彼は薄っすらと笑いながらそれを受け取った。
いや、笑っているというより、癖なのだろう。
喋っている間もずっと、しゃっくりあげるように変な笑い声のような空気が漏れるのだ。「ひ」「ひ」という具合に。
髪は伸び放題で、見るからに風呂にもめったに入っていないような不潔感がある。
そしてはち切れんばかりに膨れた腹や顎、そして二の腕の肉。
部屋に満ちているのか、自身の身体から漂ってきているのか、その匂いも含め、
すべてが生理的な嫌悪感を抱かせる男だった。
「今日は助手君も一緒か、探偵」
僕はこの男を好きになれないのだが、どうも、と当たり障りのない挨拶をする。
「今日はちょっと訊きたいことがあって来た」
師匠は背負っていたリュックサックを下ろし、その中をガサガサと漁る。
「おっと、その前に、報酬を決めようじゃないか」
「あん?」
師匠が手を止め、険悪な顔をして睨みつけた。
こういう悪そうな顔をさせると、師匠は本当に様になっている。
「どうせやばいネタなんだろう。
 僕の口を硬くするのは金の額だけだ。
 金は要らないなんていう『写真屋』に、誰が人間の真実の姿が写り込んだフィルムを持ち込むもんか」
「なにが人間の真実の姿だ。変態どもがお前のところに持ち込んでるのは、ただのエロ写真だろうが」
「失礼だな、それも真実の姿の一つさ。
 アホなカップルが街なかで顔をくっつけ合ってイ、エーイって間抜け面晒して写ってる写真に、
 本当に写るべきものは一本の棒と一つの穴だ」
ひ、ひ。と喋る合間にも空気が漏れる音が混ざる。
「だけど、最も奥深い所にある、人間の真実とは……ひ……そんな下劣なものとは程遠い、神秘的なものだよ」
こんな風に。
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2018/11/13(火) 23:32:47.22p
『写真屋』は机から一枚の写真を取り出して見せた。
何が写っているのか察した僕は咄嗟に目の焦点を合わさないようにしたが、それでも少し見えてしまった。
人間の頭が砕けて、血と脳がアスファルトの上に飛び散っている写真だった。
この『写真屋』の本当の商売がこれだ。
二倍程度の料金を払って、普通の写真屋では現像してくれないエロ写真の類を現像する仕事が世の中にはある。
しかし、その特殊な写真屋でも現像してくれない、本当にアンダーグラウンドな写真がこの世にはあり、
さらにその数倍の料金を受け取ってそれを現像する、
現行法からも、そして常識からも掛け離れた倫理観を持つ『写真屋』。
それがこの男の生業だった。
「おい、それが写真屋の守秘義務か」
師匠がそう突っ込んだが、『写真屋』はそれを仕舞いながら「これはぼくの私物さ」と言った。
まあどうでもいいけど。
師匠は溜め息をついた後、「なあ、アマノちゃん」と声色を変えた。
「わたしとお前の仲じゃないか。硬いこと言わずに協力してよ。な」
「いや、駄目だ。ケジメは大切だ。僕は金しか信用しない」
さっきの松浦と同じようなことを言っているが、その二人の人間性やビジュアルの差を思うとなんだかおかしかった。
「いや、駄目だ。ひ。ケジメは大切だ。ひ。僕は金しか信用しない。うひ」
師匠が『写真屋』の言葉を真似して、それを大袈裟に再現して見せた。馬鹿にするためだ。
からかわれて、さすがに『写真屋』は鼻白んだ。
なにか言い返そうとした瞬間、師匠はその開きかけた口を右手の手のひらで押さえ込んだ。
アイアンクローのような格好だった。
「おい、てめぇがわたしの写真でせ○ずりこいてんの知ってんだぜ。
 ご大層な理念を掲げるのは結構だが、その写真、燃やされたくなかったら黙って言うこと聞け、この野郎」
瞬間的な迫力、とでも言うべきか。
いきなり豹変したような勢いで脅しつけられ、『写真屋』は目を泳がせながら、とっさに頷いてしまった。
その顔に、しまった、という表情が浮かんだが、もう取り繕えないようだった。
0016非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:33:10.51p
「あ〜あ、汚ったな」
師匠は『写真屋』の口元の涎がついた右手を振って、机の上のティッシュを数枚抜き取った。
「くそう」
写真屋はなにかぶつぶつ言っていたが、
机の上を片付け始め、そして折り畳み椅子を出してきたかと思うと、二つ並べて置いた。
「で、なにが訊きたいんだい」
諦めたように溜め息をついて、『写真屋』は切り出した。
空気が澱みきっているが、窓を開けていないどころかカーテンも締め切っており、
それもどこで買ったのかというような厚手なので、電球の明かりの下、一体今が昼なのか夜なのか分からなくなる。
時計を見ると、まだ昼の十二時を少し回ったころだった。
「これなんだけど。専門家の意見を訊きたい」
師匠はリュックサックの中から封筒を取り出し、その中から写真を抜き出した。
田村の持っていたものと、松浦から預かった四枚。合わせて五枚すべてを。
引き出しから薄い手袋を取り出して両手にはめ、『写真屋』はそれらを手に取る。
「心霊写真かい。専門家は……ひ……そっちじゃないか」
「まあそう言うな。心霊写真は苦手なんだよ」
「ふうん」
すべてに軽く一瞥をくれてから、机の端に並べて置いた。
そして春だというのに身体を動かしもしないまま汗を額に浮かべて、差し入れのメロンソーダの蓋を開けて勢いよく呷る。
「おい、貴重な写真もあるんだ。汚すなよ」
「ふん。もう見終わったよ」
そう言って大袈裟な仕草で写真から椅子ごと遠ざかる。
「ええと。まず、飲み会の写真だけど。これは煙草の煙だろうね。
 ほら、このハゲ親父が、テーブルの上に不自然に右手を伸ばしてる」
遠くから芋虫のような指で写真を指し示す。
「手前の人の身体で見えないけど、この隠れた手の先に灰皿があるのさ。
 そこから上がって来てる煙が、ストロボで浮かび上がって見えてるだけだ。
 それが人間の顔のように見えるのは、まあ偶然だろう」
「ほう」
師匠はやけに熱心に頷いている。
0022非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:33:27.98p
「あと、この海辺の家族連れの写真。
 たぶん、右膝が消えてるとか言って、心霊写真扱いされてるんだろうけど、よくある勘違いだね。
 これは撮影速度が遅いせいで、男の子が右足を動かした瞬間に、透けたように見えているだけだ。
 こっちの手をごらん。お父さんの腰のあたりを掴んでいる。
 ここで重心の変化を支えているから、足以外はぶれてないんだ。そのせいで余計に足が透けているのが目立っている」
『写真屋』は解説を続けながら、二本目のメロンソーダの缶を手に取った。
「……それから、と。カップルの写真はどうかな。これはイタズラの可能性が高いね。
 二人の背後に、ちょうど人間一人くらい隠れられる。
 二人の身体が離れている部分があるから、
 そこを上手く避けて、となるとかなりアクロバティックな格好になるけど、不可能じゃない。
 偶然なはずはないから、こういう写真を撮ろうとして三人で遊んでたんだろう。
 あと、この家の窓に男の上半身が薄っすら見えてるのは、どうだろうな。
 二重露光にも思えるし、室内灯の光の当たり具合が良く分からないけど、単にそこに人がいたという可能性もある。
 少なくとも、幽霊なんてものを持ち出さなきゃならない写真には思えないな」
彼は二本目を半分ほども飲んだところで、ゲップをした。長いゲップだった。
師匠は良くこんな生理的に気持ちの悪い男と一緒にいて平気だなと感心する。
「最後は、なんだこりゃ。年代ものだけど、普通の写真じゃないか。どこが心霊写真なの」
逆に訊ねられた。
「この中の誰かに、不自然なところはないか」
師匠にそう言われ、もう一度写真に顔を近づける。しばらく唸ったあと、彼はやはり同じ答えを出した。
「古い写真は得意じゃないけど、別におかしなところはないと思うよ。影のでき方なんか見てもね」
そう言って二本目の缶の残りを飲み干す。
僕ももう一度まじまじと、その戦時中に撮られたという白黒写真を眺める。
整然とした和室に、和服を着た初老の男が腕組みをして座り、その周囲に軍服姿の青年たちが正座をしている。
彼らは二十八、九から三十歳くらいのはずだったが、どの顔も現代の同じ年齢の日本人よりもどこか幼く見えた。
だが、誰一人として笑いもせず、唇を引き結んで、正面を見据えている。
0027非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:33:49.45p
画質のせいなのか、彼らのその相貌がやけに青白く見えた。
「こいつはどうだ」
師匠はついに、左隅にいた正岡大尉を名指しした。先入観を持たせないために、ここまであえて避けていたのだろう。
だがその問いにも『写真屋』は大した関心を示さず、「おかしなところはないね」という答えを繰り返しただけだった。
だが師匠は諦めず、表現を変えて質問を続ける。
「偽造の可能性は」
「偽造?写真の加工ってこと?」
『写真屋』は鼻で笑った。
「おかしなところは……ひ……ないって、いったろ」
「こいつが、実際にはここにいなかったのに、いるように見せるのは無理か」
「このくらい違和感のないフェイクを作るのは難しいね。ネガの編集にしても、プリント後の加工にしてもね。
 今の技術でも、難しいんだ。当時のテクじゃ無理だろう」
まあ、これからはこいつが……と、『写真屋』はパソコンの箱を手のひらで叩いて見せた。
「あらゆる写真を自由自在に編集するようになっていくだろうけど」
そのころはワープロがやっと普及してきた時期であり、パソコンなど持っている人はまだまだ少なかった。
僕自身、キーボードに触ったことすらなかった。
「撮影は戦時中でも、偽造を施すためにプリント時期を偽っている可能性は」
師匠はまだ粘っている。
「最近プリントしたってことか。ふん。紙質にも違和感はないね。それ相応の年代モノだよ」
それを聞いて、ようやく納得したように一つ頷くと、師匠は背中を掻いた。
「ここに来ると、なんか痒くなるんだよな。ダニとか、ノミとか、飼ってるんじゃないか、お前」
「ノミは知らないけど、水虫は飼ってる」
うへ、という顔をして師匠は後ずさる。
「うつされる前に退散するが、あと一つだけ教えてくれ」
そう言って師匠は封筒に指を入れ、まだ中に残っていた一枚の紙を取り出した。
松浦に預かったコピーの方だ。
それを『写真屋』の方に向け、こう訊ねた。
「このコピーと、その写真は、同じものか」
ふいに、僕の中に疑念が湧く。
なぜ師匠はそんなことを言うのだろう。コピーだと今自分でも言ったではないか。
それに言うまでもなく、同じ構図、同じ男たちなのだ。
0035非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:34:15.820
ササガイジw
0040非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:34:37.58p
『写真屋』は両者を見比べ、つまらなさそうにぼそりと言った。
「コピーは専門外だけど。全く同じに見えるね。この写真をコピーしたんだろう。この中央は焼きミスだね。
 もしかして、同じネガの別プリント写真のコピーじゃないかってことか?だとしたら分からないとしか言いようがない」
師匠はその答えを反芻するように、しばらく頷いていた。
そして、「よし」と言って膝を打ってから立ち上がった。
「邪魔したな」
「あ、もう帰るの」
あれほどただ働きを嫌がっていたのに、『写真屋』はなぜか名残惜しそうに口を尖らせた。
師匠はそれを見て、ニコリと笑うと「またな」と優しい声で言った。
異臭にも少し慣れつつあったそのマンションの一室から出た直後、僕は師匠に耳打ちをする。
「その、せん……の写真って、盗撮でもされたんですか」
「なんだって?ああ、わたしの写真か。盗撮といえば盗撮だな」
「取り返した方が良くないですか」
「いいよ、めんどくさい。どうせ焼き増しして、分かんないところに隠してんだろ」
師匠が良くても僕は困る。
「良くないですよ。あの変態にそんな写真持たれて、何されるか分かったもんじゃないですよ」
「なんだ。酷い言われようだな、あいつ。そんな写真って、どんな写真だと思ってんだ」
「え」
僕は思わず口ごもった。
そういう写真に決まっているではないか。古式ゆかしい表現で言うところの、無防備な……
いやまて、もっと凄い写真かも知れない。え、うそ。まじで。
想像が頭の中をぐるぐると回る。
ええ?そういう写真なの。いやでもまさか、ああいう写真とか。まずいまずい。実にまずい。まずいですぞ、これは。
「おい。大丈夫か。とっとと出るぞ、こんな水虫屋敷」
そう言って師匠はエレベーターの方に向かって歩き出した。
0044非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:34:57.44p
マンションの外に出ると、日差しが目に沁みた。
締め切った部屋の人工の明かりは、やはり太陽光線よりも弱いものらしい。
師匠は時計を確認してから、近くの電話ボックスに入った。
そしてどこかに電話を掛け、出てくるなり「一度家に戻るぞ」と言う。
ハンドルを握るジェスチャーをしていたのから、車を取りに行くらしい。
「次はどこに」
「寺だ」
寺。
ピンと来た。
行ったことはなかったが、師匠がよくオカルト関係の怪しいモノを仕入れてくる寺があると聞いていた。そこに違いない。
焚き上げ供養で密かに有名な寺らしいのだが、
その裏では燃やしたはずの曰くつきの物件をマニアに横流ししているという、とんでもない悪徳坊主がいるそうだ。
それを買う方も買う方だが、
師匠に連れられて、そういうアイテムばかり売っている胡散臭い市(いち)に行った時、
僕もそこに出ていたクマのぬいぐるみが気に入って買ってしまったので同罪だった。
そのぬいぐるみは、夜中に時どき歯軋りのような音や、すすり泣く様な声を出して、
僕を不安な気持ちにさせるお茶目なやつだった。

途中でスーパーに寄っておにぎりや菓子パンを買い込んでから、僕らは師匠の家に到着した。
休む暇もなく、すぐに駐車場に止めてあった年代物の軽四に乗り込む。
僕は助手席に座ってシートベルトを締め、スーパーの袋をガサガサと漁る。
目の前をスケートボードでノロノロと横切ろうとしていた子どもに容赦なくクラクションを鳴らして、師匠は軽四を発進させる。
「シートベルト。シートベルト締めて下さいよ」
僕が指摘すると、
師匠は「わたしが免許取った時には、そんな義務なかった」とぶつぶつ言いながら、めんどくさそうにベルトを引っ張った。
こういう時に、僕は師匠の間のジェネレーションギャップを感じる。
おにぎりやアンパンをお茶や牛乳で流し込みながら車を走らせ続け、僕らは北へ北へと向かった。
0047非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:35:17.700
733 名前:非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ) [sage] :2018/11/13(火) 15:21:56.78 0
>>711
おまえ艦これのときのインタビュー読んだことあるの?
自分の声にコンプ抱えた凄まじい努力家だぞ彼女
0048非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:35:18.41p
「結局、あの将校たちの写真は、心霊写真なんかじゃないんですかね」
道路沿いに商店や民家が少なくなっていく景色が走り去っていくのをぼんやりと眺めながら、僕はなにげなく訊いてみた。
どうせ答えてくれないだろうと半ば分かっていながら。
「さあなあ。『写真屋』は、普通の写真だろうって言ってたな」
師匠は人ごとのようにそう言う。
「どうしてそんなに他人ごとなんですか。自分こそ専門家でしょう。家にも一杯心霊写真集めてるのに」
「好きなんだけどな。それぞれが本物かどうかは自信がないな。
 わたしは生で見るのが得意なタイプなの。写真はなあ…… 
 仮に死者が怨念だから執念だかで、フィルムに写りこんだとしても、だ。
 そのフィルムが現像され、ネガをプリントした場合、その写真一枚一枚にまで、怨念が乗っかってないんだよな。
 撮影場所とは関係ないどこか遠い場所でさ、何ヵ月後か、何年後か、そして何枚も何十枚もプリントされてさ。
 その全部に怨念がこびりついて残っている道理がない気がする。
 結局のところ、その写真がヤバいかどうかは、視覚的な情報に頼るしかないんだ。
 ありえない位置に人の顔があるとか、逆に人の顔がないとか。
 でもそういう写真って、偽造でも再現できるケースがあるじゃないか。だから、どうにも心霊写真ってやつは苦手なんだ」
そういうものか。
納得しかけたが、以前師匠がえらそうに心霊写真について語っていたこともあった気がして、釈然としないものが残った。
言ったもん勝ちかよ。と、そう思ったのだ。
「まあ餅は餅屋。蛇の道は蛇だ」
「なんですかそれ」
「だから専門家に訊きに行くんだよ」
「心霊写真のですか」
そんな、供養を頼まれた写真をマニアに横流しするような悪徳坊主に訊きに行ったところで、役に立つとも思えなかった。
そんな馬鹿にしたような僕の口調を咎める様に、師匠は意味深な言葉を吐いた。
「世の中にはな。説明のつかないことってやつは、確かにあるんだ」
説明のつかないこと? 
それと悪徳坊主となんの関係があるのか。
「まあ、行けば分かる」
師匠は口笛を吹きながら、開け放った車の窓から入ってくる風を気持ちよさそうに顔に受けている。
0051非通知さん@アプリ起動中 (スッップ)
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2018/11/13(火) 23:35:28.91d
>>17
どっちにしろ臭い(´・ω・`)
0052非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:35:34.09p
車は蛇行しながら山に登り始め、僕が助手席で車酔いしそうになったころ、ようやくそれらしい山門が見えてきた。
周囲には山の斜面にも関わらず、畑がたくさんあった。段々畑というやつか。
舗装もされていない駐車スペースがあったので、そこに車を止める。ザリザリザリというタイヤが砂を噛む音が響いた。
山門の左右には板壁がついているが、それも申し訳程度で、その外側は大きな木が生い茂っている。
その板壁の端のあたりに石柱が立っていて、『不許葷酒入山門』という文字が縦に彫られていた。
それを見ながら「禅宗の寺ですか」と訊くと、「違う」という答え。
「本来は禅宗の戒めだがな。割と節操なく他の宗派でも見るよ。ただ、ここのはちょっと趣旨が違うんだ」
「なんですか、それ」
師匠は石柱の文字を指さしながら、「なんて読むと思う」と訊く。
「葷酒(くんしゅ)、山門に入(い)るを許さず、でしょう」
葷酒、つまりニンニクやネギなどの匂いの強い野菜や酒の類は僧侶の修行の妨げになるので、持ち込んではいけない、
という戒めの言葉だ。
現代なら、餃子にビールというところか。
しかし師匠は「違うなあ」とニヤニヤ笑う。
「葷酒、許されざるも山門に入る、だ」
見えない返り点の位置を指で示しながらそう言った。
入っちゃうんだ……
僕の頭の中で住職がどういう人物か、さらに補強された。
山門をくぐると、杉木立の中に参道があり、射し込んで来る陽光に照らされて新緑が目に映えた。
地所は広い。参道はあまり長くなく、向こうに本堂の屋根は見えているが、その周囲にも庭園や池が広がっている。
「真宗の寺だよ」と師匠は言った。
0058非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:36:00.08p
え、と思って訊き返す。
「真宗で、心霊写真の焚き上げ供養ですか」
それはおかしい。他の宗派ならいざ知らず、浄土真宗はそのあたり徹底しているはずだ。
香典の御霊前の文字を使わせず、御仏前とすることにこだわっているくらいだ。
「お、さすがに寺のことは多少知ってるな」と師匠は嫌らしい笑みを浮かべた。
「そうだ。霊魂不説ってやつだ。
 釈尊が霊魂と肉体の同異について語っていないのだから、
 滅びる肉体と、不滅の実体たる霊魂なんていう二元論は、本来ありえないっていう考えだな。
 あくまでもすべては無自性(むじしょう)であり、空(くう)だ。
 特に臨終即往生、往生即成仏の真宗においては、当然人間が死んだ後はすぐに仏になるのだから、
 霊なんてものになって世に迷ってる暇はない」
参道の苔むした石畳の上を歩きながら、師匠は右手を広げて身体の前でぐるりとかざした。
「しかし、この日本では神仏習合や、古来よりの山岳信仰、祖霊崇拝などと結びつくことで、
 仏教の思想も様々に分かれ、変化する。
 宗派の中でも、分派や一寺院、あるいは僧侶一個人として霊の存在を認める場合もある。
 だいたい、仏教独特の説である輪廻転生ってやつを考えた時、
 転生する主体、つまり不滅の実体を想定せざるを得ないんだから、それを仏性と説こうが、どうしたって……」
「分かってますよ」
長くなりそうだったので、遮った。
それよりも、なにか人の視線のようなものを感じて、僕は周囲を見回した
薀蓄に気分が乗って来たところでそっけなく遮られ、憮然とした師匠は、
「ここ、本当は真言宗の寺だよ。それも分派も分派。各山会、十八本山にもかすってない、なんとか派だ。……ぺろぺろ派」
適当なことを言って欠伸をした。
僕は、ハッとして立ち止まる。
右手側に小山のように高くなっている場所があり、その斜面の上にこちらを伺っている人影があった。
女の子?
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2018/11/13(火) 23:36:29.04p
青いワンピースを着た、小さな女の子がそこにいた。
すぐそばのヒノキの幹の後ろに隠れて、そしてまたそろそろと顔を出してくる。
「アキちゃんやあい。おくすりの時間だよう。アキちゃんやあい」
本堂を挟んで遠く反対の方向から、そんな呼び声が聞えて来た。妙に間の抜けた調子の、年配の男性の声だった。
女の子はその声に興味を示さず、じっと僕らを見ている。いや。見ているのは師匠だ。
師匠は斜面に取り付くと、木の根を伝って小山の上に登った。思わず僕も続く。
登ってきた僕らを警戒するように、女の子はヒノキの後ろに隠れた。そしてまた、ちらりと顔だけを覗かせる。
何歳くらいだろう。小学校生なのは間違いなさそうだ。十歳くらいだろうか。
色白で、手足など折れそうなほどほっそりしている。
ストレートの髪の毛を肩口で切り揃えていて、賢そうな黒目がちの瞳が印象的だった。
「またきた」
女の子はそう言った。可愛らしい声だった。
師匠は、わたしのこと?とばかりにおどけて自分を指さす。
「またきたね」
女の子は、ひそひそとした声で真横を向いて囁いた。そうしてうんうんと頷いている。
なんだか変だった。その子が向いている場所には、誰もいない。
「そうだよ。また来たよ。今日はとっても大事な用があるんだ。お兄ちゃんはいる?」
師匠は猫なで声でそう訊ねながら、ヒノキの向こうからこちらに近づいてくる人影に気づいて顔を上げた。
僕もそちらを見て、驚いた。長身のガッシリした体格の男が歩いて来る。
黒谷夏雄だ。
我が小川調査事務所の小川所長の甥で、かつては師匠と組んで『オバケ』絡みの依頼を請け負っていたという男。
僕や師匠と同じ大学のはずだが、ほとんどキャンパスには姿を見せず、
『M.C.D.』というハードなパンクバンドを組んでいたと思うと、
ふらりと中国へ旅立ってそのまま何ヶ月も帰って来ないというような、無軌道な男だった。
なぜやつがここに。
0065非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:36:44.72p
身構える僕に目もくれず、黒谷は女の子の横で立ち止まると、師匠に向かって「早かったな」と言った。
「ああ。夏雄がいてくれて良かったよ。親父の方だと話がややこしくなる」
写真屋のマンションを出た後、電話をしていたのはこいつだったのか。
アキちゃんやあい。
アキちゃんやあい。
遠くでまだ探している声が続いている。
僕は状況をそれなりに飲み込んだ。あれが親父の方か。つまり、夏雄はこの寺の悪徳住職の息子というわけだ。
「じゃあ、この子は」
恐る恐る、僕がそう訊ねると、師匠は頷いた。
「今呼ばれてる、そのアキちゃん。夏雄の妹」
ヒノキの幹のそばで二人並んでいるのを見比べ、そのあまりの違いに僕は唖然とする。
かたや見上げるような長身に服の上からでも分かるくらいの分厚い胸板。首筋から覗く龍のタトゥ。
吊り上がった眉と鋭い目つきには、思わず目を逸らしてしまいそうな厳つい男。
かたや線が細く病弱そうな色の白い黒髪の少女。
しかも夏雄の方は大学五年目の二十二、三歳のはずなので、
女の子が小学校の三年生か四年生くらいだとすると、少なくとも十コ以上は歳が離れている。
僕の戸惑いに、師匠が「戸籍上はな」と付け加える。
あ、やっぱり。
そう思ったが、師匠は笑って「うそうそ、ホントに血が繋がってるんだって」と言い、
夏雄の方は不愉快そうに睨みつけている。
僕らは心霊写真の専門家を尋ねてきたはずだ。
住職が山師のインチキ親父だとすれば、専門家というのはこの黒谷のことか。
僕は以前、『M.C.D.』のライブの最中に現れた霊を、この夏雄が壁ごと殴りつけて撃退したことを思い出した。
そんな粗暴な男に、心霊写真の鑑定など出来るのか。
思ったことを口にすると、師匠は笑って「違う違う」と手を振った。
「用があるのは、この子の方にだよ」
そうして少し屈みながら身を乗り出し、アキちゃんという女の子に微笑みかけた。
「ね」
しかしアキちゃんは首を左右に振ると、警戒したように夏雄の背中の後ろに回って身を隠した。
0071非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:37:18.11p
「嫌われてんだよ。これが」
師匠は憮然として上半身を起こす。
アキちゃんは夏雄の後ろから出てこない。
「この子、完全になんとかコンプレックスだし」
師匠は意味深な視線を夏雄に投げかける。
ブラコンか。
あの見るからに恐ろしい男が、妹には優しいというところを想像しようとして、うへえ、という気持ちになる。
あれ?
「この子の方に用があるって、どういうことですか」
そう訊くと、師匠は夏雄の腰の辺りから髪の毛だけが見えているアキちゃんを指さして、言った。
「この子は、わたしや夏雄なんか及びもつかない、正真正銘の霊能力者だよ」
アキちゃんやあい。
アキちゃんやあい。
呼び声が続く。
山間の木々の中を走る爽やかな春の風が、一瞬止まったような気がした。
0074非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:37:25.620
      / ̄ ̄ ̄ ̄\
     /;;::       ::;ヽ
     |;;:: ィ●ァ  ィ●ァ::;;|
     |;;::        ::;;|
     |;;::   c{ っ  ::;;| おまえ艦これのときのインタビュー読んだことあるの?
      |;;::  __  ::;;;| 自分の声にコンプ抱えた凄まじい努力家だぞ彼女
      ヽ;;::  ー  ::;;/
       \;;::  ::;;/
0083非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:38:18.34p
「じゃあ、わしはこれで。でも、加奈ちゃん、頼むよ。ほどほどでね」
住職が襖を開けて出て行こうとする。電球の明かりに、脂ぎったハゲ頭がやけに照り返している。
夏雄とアキちゃんの父、黒谷正月(しょうげつ)は名前のとおり正月が誕生日という生まれついてのおめでたい男だった。
親から寺を継いだものの、除霊だの焚き上げ供養だのといった胡散臭いことに商売っ気を出し、
地元の檀家衆にも呆れられているそうだ。
それだけでなく、麻雀やパチンコ、競輪に競艇といった賭けごとが大好きで、
伝来の仏像を密かに質入れしたことがあるという逸話を持っていた。
また、酒は人後に落ちないほど飲むし、女遊びも大好きというまさに生臭坊主を地で行く男であり、
奥さんにはとっくに見切りをつけられ、離婚こそしてないが別居状態なのだと言う。
小川所長はその奥さんの弟で、所長からすると夏雄は甥っ子ということになる。
「いいから、早く行けよ」
夏雄に邪険に言われ、正月和尚はすごすごと出て行った。
袈裟の裾が襖に挟まり、「あれ?」という声が襖越しにしたかと思うと、
ぐいぐいと袈裟の端が向こう側に引っ張られて消えていった。
その滑稽な動きに、アキちゃんがクスクスと笑う。
ここは本堂ではなく、黒谷家の住居部分の一室だ。庭に面した畳敷きの広い部屋だった。
旅館にあるようなテーブルが真ん中にあり、僕らはそれを囲んで座布団に腰を下ろしていた。
0090非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:38:58.190
ゼルダやりたいからswitch買っていい天堂?
0091非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:38:58.64p
身体が弱いらしいアキちゃんはついさっき正月に見つかり、昼食の後に飲む薬を飲まされて顔をしかめていたが、
機嫌は直ったようだった。
「だめだよ」
正月和尚の足音が去った後で、アキちゃんは笑いながら小さくそう言った。
僕はまた変な感覚に陥る。
さっきヒノキの下で、「またきたね」と言って誰もいない場所を見ながらしきりに頷いていた。それと同じだ。
怪訝な表情を浮かべる僕に、師匠はこう訊いてきた。
「今、この部屋に何人いるか分かるか」
それを聞いて、思わずテーブルについている人間の顔を順番に眺める。
師匠。夏雄。アキちゃん。そして僕。
「四人ですけど」
その答えを確認してから、師匠は夏雄にも同じことを訊いた。
夏雄は、興味なさそうな顔をしながらも、ボソリと言った。
「七人」

はあ?なんでそうなるんだ。
僕は部屋の中をもう一度見回したが、テーブルの回りに座っている人間の他には誰もいなかった。
「惜しいな。八人だ」
師匠はニヤリと笑う。そして僕の方を意味深に見つめる。
霊のことか。
目に見えないそういう存在の数も含めてだと。そういうことなら、僕だって……
視覚ではなく、別の感覚を拡張させ、意識を集中する。
部屋中にその感覚の根を張り巡らせ、人ならぬものの気配がわだかまっているような場所を見つける。
天井付近。なにか、いる。彷徨うものが。
しかし見つけられたのはそれだけだった。僕らと合わせて五人。
しかし夏雄は七人と言い、師匠は八人と言った。これはどういうことなのか。
師匠は続ける。
0093非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:39:16.87p
「と、言いたいところだけど。わたしの答えが正しいとは限らない。さて、おひい様にお訊ねしてみましょう」
慇懃な態度で、師匠はアキちゃんの方に向き直った。そして「今、この部屋には何人いますか」と訊ねる。
アキちゃんは目をぱちぱちとさせ、自分の横にいる夏雄から順に指をさして数え始めた。
「ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう、なな、やあ、ここの、とお……」
指先はテーブルから外れ、なにもない壁際まで進んで、また少し角度を変えながら戻ってくる。
「……にじゅいち、にじゅに、にじゅさん、にじゅし……」
二十七のところで僕を指さし、そのままその小さな指は何もない空間に向かって動き続ける。
「ああ、もういい。もういい」
師匠はアキちゃんを止めた。
え?
なにこれ。
僕は尻の座りが悪くなる感じに襲われ、そわそわしてきた。
何を数えた。何を数えたんだ。
古い木造住宅の匂いが満ちる部屋。
庭に面し、窓ガラスの向こうから爽やかな光が差し込む部屋に、全く別の部屋が重なっているような気がした。
白と黒。ネガとポジ。
そこに、何がいるのか。
0099非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:39:48.99p
だが、そのぞわぞわした感覚はあまりに希薄で、
庭に遊んでいる小鳥たちがチチチ……と鳴くたび、僕はごく当たり前の風景の中にいる自分に気づく。
「幽霊を信じない人間は、よくこう言うな。
 人間が死んで幽霊になるんなら、そこらじゅう幽霊だらけになってしまうじゃないかって。
 ……そうだよ。幽霊だらけさ、この世界は。
 あとは見えるか、見えないかの問題があるだけだ」
師匠は天井の隅を指さした。僕にも感じられた場所だ。
「ああいう、強いのもいれば、そことか、こっちみたいな弱いのもいる。
 残された思念の濃さと、それを受け取る側の精度によって、幽霊と認識されるかどうかが変わってしまう。
 ランドルト環って知ってるだろ。視覚検査で使う、Cみたいな形の切れ目のある円だ。
 お前には、一番下の列にはただ小さな円か、あるいは点が並んでいるようにしか見えないかも知れない。
 けど見える人間には、すべて下向きや横向きのCに見えるんだ」
おい、夏雄。と師匠は僕から視線を外して呼びかける。
「見えてるのは、どれだ」
夏雄はむすっとしたまま、今師匠が示した三ヶ所をなぞるように指さしていった。
天井と、奥の箪笥の端と、押入れに張ってあるカレンダーのあたり。
僕には、天井以外なにも感じられなかった。額から嫌な汗が出てくる。
「四足す三で七人か。惜しいな。箪笥のところは、重なるみたいにしてもう一人いるぞ」
師匠がそう言うと、夏雄は「あん?」と眉を片方上げ、「そうかもな」と欠伸をした。
0106非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:40:20.930
>>95
いろいろあってコンシューマーする暇なかったから人間性を取り戻してくるわ
0107非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:40:21.23p
座布団の上で片膝を立て、腕をその膝の上に乗せている。
客を前にしてするような態度ではなかったが、キチンと座っているところが想像できない男でもあった。
「残された死者の思念に、最初から強い弱いはある。
 それだけじゃなく、時間が経つにつれ、だんだんと薄れていく。経年劣化だ。
 よほど強い後悔だとか、恨みだとかを持っているやつでも、いずれは消えていく。
 逆に言うと、今でも見える古い武士の霊だとかは、マジでやばいやつだ。
 でもその消えていく、ってところにこそわたしや夏雄の限界がある」
師匠は部屋中を見渡すように右手を広げた。

「実際には、消えてないんだ。たぶん。ただ受け取り手の精度が低いせいで、見えなくなっているだけだ。
 一番下だと思っていたランドルト環の列の下に、まだ列があった。
 見えない人間にはただの空白にしか見えないひと列が。
 そういう、存在が極めて薄くなった霊が、この世には満ちている」
僕はふと、虹が頭に浮かんだ。
あの七色の虹は、実際には七色にはっきり分かれている訳ではなく、
赤から紫までの滑らかな光のグラデーションで出来ている。
国や地方によって、虹の色を七色と言うこともあれば、五色、三色、そして二色と捉えることもある。
僕はこの部屋のそれを五色と捉え、夏雄は七色、そして師匠は八色に見分けたのだ。
けれどアキちゃんは、僕らが見分けた色と色の間のさらに微細な狭間を見分けている。
それも、とてつもない数にだ。
何十、何百色という極彩色に。
0115非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:41:04.26p
自分を前にして繰り広げられるなにやら小難しい話を、アキちゃんはふんふんと頷きながら聴いている。
あれほど霊感の強い師匠にも見えない霊を、この子は見ているというのか。
そう言われても信じられない気持ちだった。
「例えば、わたしには薄っすらと顔だけが見える霊でも、この子には全身が、それも服の柄まで綺麗に見えている。
 何百年も昔の霊だってそうだ。
 経年劣化で、ほとんど思念も散って薄くなり、もうこの物質的な世界となんの関わりも持てなくなった霊。
 こちらから見ることも触れることも出来ず、あっちから影響を及ぼすこともできない。
 そういう存在は、もうこの世から消えてしまったのだと言ってもいいと思う。
 でもそういうわたしたち常人の定義する世界と、ほんの薄皮一枚のところに別の景色が広がっているらしい」
常人と来たか。あの師匠が。
だったら僕などなんだというんだ。

「この子の限界がどこにあるのか知りたくて、見えているものを聞き取って似顔絵を描いたことがあるんだ。
 片っ端から描いてると、いるわいるわ……日本史の時間で習ったような日本人の古い服装のオンパレードだ。
 何百年どころじゃないぞ。確実に奈良時代までは遡れる」
どこまで本当なのか分からないが、師匠は興奮したようにそう言うのだ。
「しかし、古墳時代の霊は見当たらなかった。
 単に当時の人口が少ないから、それと遭遇する蓋然性の問題なのかも知れないが、
 あるいは、そのあたりがこの子の限界なのかも知れなかった。でもな」
師匠は少し声を落とした。
「似顔絵の中に、土器の時代や、石器時代の人間らしい姿もあるんだ。
 それがもし正しいなら、古墳時代の霊だけがすっぽりと抜け落ちていることになる。
0117非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:41:24.16p
これは、非常に興味深いことだ。なぜかわかるか」
「さあ」
素直にかぶりを振った。
「黄泉(よみ)という思想のせいだよ。
 これは現代でいう、いわゆる『あの世』とは少し違う。そういう、肉体から離れた魂がたどり着く場所のことではないんだ。
 黄泉は黄泉比良坂(よもつひらさか)で葦原中国(あしはらのなかつくに)、
 つまり日本国と地続きで繋がっている、もう一つの世界なんだ。
 そこは生者の住む国の隣にある、死者の住む国であり、死とは、その移動のことを指している。
 つまり、黄泉という思想をメンタリティとして持っていた時代の日本人にとって、
 死とは肉体を持ったまま黄泉へ行くことであり、
 この生きるものの世界に霊だか魂だかとして迷う、なんていう発想自体がないんだ」
妻であるイザナミを黄泉へ迎えにいったイザナギが、もし葦原中国へ彼女を連れ出すことに成功していれば、
それは肉体を伴った黄泉返り(よみがえり)であり、
死者が生者の世界にやってくることは、すなわち生者になるということだ。
だから幽霊なんていうあやふやなものはありえない。
師匠は秘密を明かすように演技掛かって言う。
「この子の目で見ても、そんな時代の人間の姿がどこにも見当たらないんだ。面白いだろう」
嬉しそうに語る師匠に、夏雄が「ケッ」と言って水を差す。
「用件をとっとと済ませろよ」
師匠には悪いが、僕もこれには同意だった。
興味深い話ではあったが、今はなにしろ今夜九時までに写真のことを調べて松浦に報告しなければならない。
0121非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:41:43.67p
時計を見ると、昼の三時を回っていた。あと六時間か。
師匠は分かったよ、というジェスチャーを返しながら、アキちゃんに話しかける。
「さっきお父さんの袈裟を襖に挟んだのは、お友だちか」
「えー」
アキちゃんは隣のなにもない空間に向かって、イタズラっぽい顔で人差し指を口に立てる。なにかいるらしい。
シーッ、ということか。もちろん僕には全くなにも見えない。
「ひーちゃん、だっけ。夏雄、見えるか」
問われた夏雄も、首を左右に振る。
アキちゃんには、無数に見える霊の中でもひーちゃんという仲の良い友だちがいるそうだ。
もっとも本人は、人間と霊とをあまり区別していないようだったが。
そのひーちゃんは夏雄にも、師匠にも見えないので相当存在の希薄な霊のはずだが、
さっきのように現実に物質的な影響を及ぼすことがあるので不思議なのだそうだ。
そんなことが出来る力の強い霊なら、少なくとも師匠には見えてしかるべきなのに。
「あー、まあいいや。ひーちゃんに、今日はもうイタズラしちゃだめだって言っといて」
アキちゃんは頷いて、顔を横に向けて何ごとか囁いた。
ついさっき、あれほど師匠を嫌っているような態度を取っていたのに、今はやけに素直だ。
後から聞いたのだが、僕という知らない人間が一緒にやって来ていたので、興奮していたらしい。
普段師匠だけで来た時はほとんど喋ってくれないこともあるのだそうだ。
「さて、本題だ」
師匠はそんなアキちゃんの様子を伺いながら、リュックサックから封筒を取り出した。
そして中に入っていた五枚の写真をテーブルの上に並べる。
田村に押し付けられた一枚と、松浦から押し付けられた四枚。
いずれも、数時間前に写真の専門家から心霊写真ではないという結論を下された写真だった。
夏雄とアキちゃんが二人して身を乗り出すように写真を眺める。
「ええと、これはですね」
視線で説明を求められているのに、何も喋ろうとしない師匠に代わって僕が口を開きかける。
しかし、小突かれてそれを止められた。
「細かいことはいいよ」
0126非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:42:28.04p
師匠がそう言うと、夏雄も頷いた。
「ああ。こっちもくだらねえこと聞いて、無駄に関わりたくねえ」
「そう言うと思ったよ。アキちゃん。頼みがあるんだ。あれやってくれないかな。あれ」
師匠はそう言って、右手を写真の上にかざし、撫でるような仕草を見せた。
アキちゃんは師匠と写真を交互に見た後で、夏雄の顔を伺う。
「おい。あれは後から疲れが出るんだよ。簡単に言うな」
夏雄が強い口調でそう言うと、師匠は顔の前で両手を摺り合わせる。
「五枚だけ。五枚だけだから。な、アキちゃん」
そう振られて、アキちゃんは慎重に頷いた。
夏雄は舌打ちをした後、厳しい顔をして、「本当に大丈夫か」と妹に訊ねる。
「最近、元気だし」
黒髪の少女はにっこり笑ってそう言った。
そうしてちらりと僕の方を見て、照れたような表情を浮かべる。
なにをするのだろう。
僕は興味深々で、目の前の展開を見守った。
夏雄は立ち上がり、窓の雨戸を閉め始めた。
師匠は箪笥の上にあった蝋燭を持って来て、マッチで火をつける。
外の明かりを閉め出して、部屋の電気を消すと、蝋燭の光が大きくなった。
重そうな燭台に蝋燭を刺し、それをテーブルの真ん中に移動させる。
襖からの微かなすきま風に火が煽られて、照らされている写真たちが瞬くように揺れる。
なんだかゾクゾクしてきた。
ごく普通の写真でも、こんな風なシチュエーションで見せられたら、なんとも言えず不気味な感じになるだろう。
「じゃあそっちの端から」
ちょうど『写真屋』に見せた時の順に、写真は並べられている。
師匠の言葉にアキちゃんは頷き、少し緊張気味に右手を写真の上にかざした。
0127非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:42:59.00p
飲み会の風景を写した一枚だ。蝋燭の仄かな明かりが小さな手のひらで遮られ、その下の写真は暗くて見えなくなる。
だがそれも一瞬だった。アキちゃんが手のひらを空中で撫でるようにくるくると回したかと思うと、スッと引いたのだ。
蝋燭の明かりの下に写真が再び現れる。
だがその瞬間、なにか力というか、精気というか、そういう目に見えないエネルギーのようなものが、
目の前で消失したような感覚がして、僕はゾクリと鳥肌が立った。

なんだ。
なんだか分からないが、今、確実になにかが起こった。
僕は写真に目を落とす。飲み会の写真に異変はない。一体なにが起こったのか。
「よく見ろ」
師匠が僕の耳に囁きかける。
「一番左の、白髪のおじさん。目を閉じてるだろう」
そう言われてみると、両目を閉じていた。ストロボに目が眩んだのだろう。
しかし次の瞬間、師匠がその写真を手に取ってなにかを振り払うように空中で数回振った。
そしてもう一度、テーブルの上に置く。
やはり写真の中の飲み会の風景に異変はなかった。いや……
僕の目は一番左の人物に釘付けになる。白髪の男性は目を開けていた。さっき閉じていた姿が、まるで嘘のように。
「最初から目は開けてたよ。覚えとけ、そのくらい」
意味が分からない。手品かなにかなのか。
腑に落ちない僕に、師匠は続ける。
「この子の力だ。誰にも真似は出来ない。その一瞬を永遠に記憶するはずの写真に、後から影響を与える」
死者が、目を閉じるんだ。
師匠はそう囁く。
0130非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:43:21.98p
「今現在、死んでいる人間は写真の中で目を閉じる。そして写っているのが霊的なものであれば、ある変化を起こす」
師匠はアキちゃんに合図をする。
アキちゃんは次の写真に手を伸ばす。そして先ほどと同じように手のひらを回して、スッと引いた。
海辺の家族連れの写真だった。
今度も一見なんの変化もない。両親と子どもの顔を見たが、目は開けたままだった。消えた右膝から先もそのままだ。
師匠が頷くと、アキちゃんは次の写真に手をかざした。
アイスクリームを手にピースサインをしているカップルの写真だ。
二人とも目を開けたままで、女性の肩に乗った誰のものとも知れない手にも異変は見られなかった。
次の、家の前で撮影された写真では、母親が目を閉じた。記憶でも確かに目は開けていたのに。
家の窓の内側に薄っすらと写る男には異変がなかった。
顔はなんとなく見えるが、目元がどうなっているか元々判然としていないので、
閉じているか開けているかは分からなかった。
0133非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:43:40.100
>>100
マヌケは見つかったようだな
0134非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:43:42.69p
ジジジ……
蝋の匂いに混じって、埃が焼ける匂いがした。明かりが揺らめき、テーブルの上の写真に微妙な濃淡を与える。
蝋燭に気を取られた後で、写真に視線を落とすと、母親の目はいつの間にか開いていた。何ごともなかったかのように。
僕は目を擦る。そうしてぱちぱちと何度か瞬きを繰り返す。
「錯覚だ」
思わずそう呟くと、師匠はおかしそうに頷く。
「そのとおりだ。錯覚だよ。こんな蝋燭の頼りない明かりの下でしか起こらない、幻だ」
心霊写真はなかったな。 師匠はまた囁いた。その、ある変化というのが起こっていないからか。
そして……
僕らの視線は最後の一枚に向けられる。
横浜にあった角南家の別邸の一室で、
『老人』を真ん中に、その彼を慕うようにして十人の陸軍青年将校たちが周囲に座る写真。
情報屋の田村が『近代日本史の闇』と称した、あってはならないはずの一枚。
その写真に、アキちゃんはゆっくりと手を伸ばしていく。
僕の心臓は嫌な音を立てている。一歩も動いていないのに、呼吸が乱れる。
なにか、恐ろしいことが起きる予感に襲われて。
蝋燭の明かりが手のひらに遮られ、そしてまた写真が僕らの眼下に現れる。
精気が、エネルギーが抜き取られるように消えた。
その消失感に僕はゾッとする。まるで自分の血を大量に注射針で抜かれたかのようだった。
写真の中の全員が目を閉じていた。揃って、黙祷でもしているように。寒気がした。
アキちゃんが怯えたような声で呟く。
「閉じない」
そうしてもう一度写真に手をかざす。同じような動きをして、また手を下げる。
「閉じない」
また同じ動作を繰り返した。
「どうして」
声が震えている。僕は思わず写真を食い入るようにして見つめる。
なんだ。いったいなにが。
0135非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:44:00.88p
ハッとした。
全員が目を閉じていると思ったが、それは間違いだった。ただ一人だけ、目を開けたままの人物がいたのだ。
一番左の隅に座る男。その襟には軍隊における階級を表す、五本の縞と三つの星。
正岡哲夫大尉。優秀な軍人で、仲間のうちでも最も昇進が早く、彼ら青年将校たちの間の実質的リーダーだった男。
そして、その写真が撮られる、少なくとも二ヶ月以上前に死んでいた男。
得体の知れない感覚に、体中がざわめく。
どういうことなんだ。
戦時中、大逆事件を起こしたかどで、秘密裏に処刑されたという若き将校たち。
そして角南家の当主として君臨し、政界や財界に影響を及ぼし続けた後、今から十数年前に死んだ『老人』。
それらがすべて目を閉じているのに、なぜ正岡大尉が目を開けたままなのか。
死んでいるはずのこの男が写ってしまっているからこそ起きているこの騒動だというのに。
僕は混乱し、師匠の顔を伺う。
さすがに難しい表情を浮かべていたが、ゆっくりと口を開くと、こう言った。
「こいつは、生きている人間じゃないな」
正岡大尉を指さす。
いや、ちょっと待て。死んでいないからこそ、目を開けたままなんじゃないか。それも一人だけ。
僕の困惑を他所に、師匠は続ける。
「こいつは、死者でも生者でもない。作り物だ。だから、目を閉じない。そうだな?」
確認するように問われ、アキちゃんは首を傾げた後、小さく頷いた。
0136非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:44:01.150
>>100
すべてが繋がったな
0139非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:44:47.98p
僕は驚いた。作り物?それはどういう意味なんだ。
写真の偽造のことかと思ったが、写真の専門家があれだけ明確に否定したのだ。それはないように思えた。
ハッとする。人形?精巧な人形が置かれていたのか。
いや、どう見ても普通の生きている人間にしか見えない。そんな人形を作る理由も思い浮かばない。
まさか、この記念写真のためだけに?だったらなおさら座る位置がおかしい。
不慮の事故で、天皇襲撃計画の決行を前に命を落としたリーダーを偲んで、
こうして人形を作り一緒に写真を撮ったというのなら、こんな隅の方に追いやっていいわけがない。
『老人』の隣にいてしかるべきだ。

「Nengraphy……念写だな」
僕は考えがまとまらないうちに、師匠の口から出たその言葉に二の句が継げなかった。
念写だって?あの、ポラロイドカメラを使って目の前にない東京タワーとかを写す手品のことか。
いや、師匠の口ぶりは本当に超能力、あるいは超常現象としての念写を肯定している感じだ。
「そんなことが本当に出来るんですか」
師匠は頷いて、アキちゃんを見た。すると隣の夏雄が強い口調で「駄目だ」と言った。
そのやりとりを傍で見ていて、僕は裏の意味を悟る。唖然としてしまった。
「アキちゃんは、出来るんですね」
「今日はもう駄目だ」
僕に、夏雄の冷たく殺気立った言葉が突きつけられる。
その瞬間、蝋燭の火が消えた。
「あ」
室内は暗くなる。まだ蝋燭の長さは十分にあったはずなのに。
僕は驚いて、一体なにごとが起こったのかと身構える。
闇の中に「ダメだよ」という小さな声が聞えた。ゾクリと、鳥肌が立った。
0143非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:45:03.11p
ついでカチカチ、という音とともに電球の明かりがつく。
師匠が電球の紐から手を離し、すぐさまテーブルの上の写真に取り付く。
姿のない何者かにそれを奪われることを防ごうとするかのようだった。
写真は五枚とも無事だ。
師匠は溜め息をついて、アキちゃんの方を非難するように見た。
「ひーちゃんか。今のは」
ひーちゃんという目に見えない何者かのイタズラだというのか。今の蝋燭が消えたのは。
アキちゃんは頷きながら、疲れた表情を浮かべる。
僕は、さっき蝋燭の明かりの中で見た幻……写真の中の人物が目を閉じるという錯覚のことを思い浮かべた。
あの時、なにかのエネルギーが目の前で消失する感じを受けたが、
あれはひょっとすると、アキちゃん自身の精神力や体力といったものだったのではないだろうか。
テーブルの上の五枚の写真は、なにごともなかったかのように元の姿で並んでいる。
目を閉じていた人物たちは全員目を開いている。『老人』や青年将校たちもだ。
「もう終わりにしてくれ」
夏雄がそう言いながら窓を開け、雨戸を元に戻し始めた。外の光が畳敷きの室内に射し込んで来る。
0150非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:45:38.23p
「自分の部屋に戻ってろ」
アキちゃんは夏雄の言葉に素直に頷き、さして名残惜しそうでもなく立ち上がると、
「ばいばい」と言って僕をちらりと見た後、襖の向こうに去って行った。
『わたしや夏雄なんか及びもつかない、正真正銘の霊能力者だよ』
師匠の言葉が脳裏に蘇る。
僕らにはもう見えない、消えて行く霊を、まるでそこにいるかのように見ることが出来る、底知れない霊感。
死者の見開かれた目を指でそっと閉じさせるように、写真の中の人物にまでそんな影響を及ぼす力。そして念写。
僕は信じられない思いで、その子が去った襖とその先の廊下の方を見つめる。
「もう帰れよ」
雨戸を戻し終わった夏雄がテーブルにそばに立ち、ズボンのポケットに手を入れながらそう言い放った。
「ああ」
師匠は生返事をしながら、青年将校たちの写真に目を落としている。僕も同じように覗き込む。
「念写って本当ですか」
「さあな。可能性の問題だ。人形よりはありえるだろう」
その判断基準が良く分からない。
目を閉じていない正岡大尉だけが、念写によって写しこまれた幻だというのか。実際には彼はその部屋にいなかったと。
そう言えば、今回の五枚の写真では死者が目を閉じるという異常現象は起こったが、
写真の中の霊的なものに起こるという変化は見られなかったようだ。
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2018/11/13(火) 23:46:42.42p
つまり『写真屋』と同じく、心霊写真は一枚もない、という結論が出たわけだが……
「幽霊が写っていた場合、どうなるんですか」
気になって訊いてみたが、師匠は意地悪そうな顔をしただけで答えなかった。
「どっちにしろ、幽霊でもなく、生きている人間でもない彼は、結局つくりものだったってことだ」
師匠は結論付けるようにそう言ったが、僕は別の可能性を考えていた。
正岡大尉がその時生きて写真に写っていて、その後も現在まで生き続けている可能性だ。
だから写真の中の彼の目は閉じなかった。
だがその場合、
なぜ正岡大尉が死を偽り、あるいは偽られ、そしてその後も姿をくらましたままだったのか、という謎は残る。

正岡大尉が生きていたとして、今一体何歳になるのだろうかと思って、計算をしてみた。
すると、八十過ぎという結果が出た。生きていてもおかしくない年齢だ。
そこまで考えたところで、僕はアキちゃんが僕らに見せた、写真の中の人物が目を閉じるという共通幻想の意味を、
他愛もなく信じていることに気づいて、おかしさが込み上げて来た。
その理由も分かる。師匠がそう信じているからだ。
そこが僕のスタート地点であり、他の道などありはしなかった。少なくとも、そのころの僕には。
「長尾郁子、高橋貞子、そして三田光一……
 東京帝国大学の助教授だった福来友吉が、明治から昭和の始めにかけて見出した霊能者たちは、
 透視能力だけでなく、念写という能力までも実験によって示そうとした。
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2018/11/13(火) 23:47:03.26p
そしてその失敗が、念写を、幽霊写真よりも信憑性においてさらに一段下に置く風潮の元になり、
 その大衆心理は現代まで連綿と受け継がれている。
 どちらも『心霊写真』として括られるものなのに。
 福来博士の念写実験の真贋についてはあえて語らないけど、余計なことをしてくれたものだ」
こんな、面白いものを……皮肉さを口元に表して師匠は呟く。
「でもこの正岡大尉の部分が念写によるものだとしても、誰がそれを撮ったっていうんですか」
写真には写っていないカメラマンが、その念写を行った人物のはずだった。
「さあな。家族か、他に仲間がいたのか。この写真では分からないな。
 でも福来博士の定義では、念者は乾板に直接作用するので写真機は不要とされていた。
 わたしの研究した限りでも、同意見だ。
 乾板写真じゃなく、フィルム写真だろうが原理は同じはずだ。
 シャッターを押した人間にしか、念写を行うことが出来ないというのは、早計だな」
「では誰が念写を?」
「この中の誰かだろうな。姿の見えないカメラマンを含めてだが。
 これが念写だとするならば、欠けた仲間を、あるべき姿として、同じ空間に蘇らせたんだ。
 世に大事を成そうというヒロイズムと高揚感、そこから来る連帯感。
 そして妄想というか、妄念というか、なにかそういうものがあるような気がする」
そう言われて、僕はもう一度写真の中の男たちの顔を眺めた。そして左隅に遠慮がちに座る正岡大尉の姿を。
0171非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/13(火) 23:47:29.05p
もしこれが想定外の念写だというのなら、現像されたものを見て『老人』や青年将校たちは驚いただろう。
死んだはずの正岡大尉が一緒に写っていることに。
そのことは、恐怖よりもむしろ勇気を鼓舞するものだったはずだ。
死してなお、想いを同じくする仲間の姿に、より一層、彼らの団結心は強固なものになったのではないだろうか。
「あ、しまった。こっち見てもらうの忘れてた」
師匠は封筒に残っていた『老人』と青年将校たちの写真のコピーの方を見て、自分のひたいを叩いた。
『老人』の顔が見えない失敗作だ。
『写真屋』のところでもそうだったが、師匠は妙にそのコピーの方にもこだわっている。
きっちりしているのか、なんなのか。なにもおかしいところはないはずなのに。
「夏雄、いまヒマか」
師匠は写真を片付けながら訊いた。
「ヒマじゃねえよ」
「うそつけ。寝癖立ってるぞ」
「おまえもな」
「え、まじで」
確かに少し立っていた。師匠は後ろ髪を触っている。
なんだかこの二人の会話を聞いていると、理由もなくムカムカしてくる自分がいる。
「…………」
師匠はそれから少しのあいだ黙り、そして「またな」と言ってリュックサックを背負いながら立ち上がった。
「ああ」
夏雄は玄関まで僕らを見送った。山門か、せめて参道まで見送るという発想がなさそうな男だった。
師匠が靴を履いて外に出る時も、欠伸をしながら頭を掻いていたが、
僕がそれに続こうとした瞬間、首根っこを凄い力で引っつかまれた。
「おい」
「なんですか」
とっさに睨みつけながら言い返したが、内心はドキドキしていた。
「深入りするな」
ほとんど無表情でそう言われた。
その言葉の意味をどう取るべきか一瞬分からなかった。
師匠に、それも女性としての加奈子さんに近づくな、という脅しなのか。
それとも、この写真にまつわる一件にこれ以上関わるな、という警告なのか。
0175非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/13(火) 23:47:53.59p
「余計なお世話です」
それがどちらにせよ、腹を決めたつもりでそう言い返した。
夏雄は「ガキが」と吐き捨てて、僕の腹を殴った。
昨日、石田組のチンピラみたいな歯抜け茶髪に殴られた場所のすぐ近くだった。一瞬息が止まる。
ほんの撫でる程度に力の抜けた一発だったが、
その拳は一体なにで出来ているのか、というくらいの異様な硬さで、まるで腹に石を落とされたようだった。
なにすんだ。
そう怒鳴ろうと、肺をむりやりこじ開けて息を吸い込んだ時、玄関の外から「なにしてんだよ」という師匠の声が聞えた。
「もう四時になるぞ。早く帰ろう」
「……はい」
僕は夏雄を精一杯睨みつけながら返事をし、靴のつま先で地面を叩いた。
「気をつけて帰れ」
夏雄は僕に対する興味を失ったように、ありていな言葉を吐いて家の中へと踵を返した。
「妹さんによろしく」
僕もさっきの腹パンチなんてなにも効いていない、というていで手を振った。そして外に出て、師匠の後を追う。
なんだあの野郎。暴力馬鹿が。ヤクザと変わらないじゃないか。
そんな悪態を心の中でつきながら、師匠の横に並んだ。
「結局よく分かりませんでしたね」
『写真屋』の天野は心霊写真や偽造写真ではないと言い、
アキちゃんの見せた幻からは焦点になっている正岡大尉が、死者でも生者でもない作り物だ、という答えが導き出された。
師匠は念写だと言うが、精巧な人形なのかも知れないし、
あるいは正岡大尉の死という情報が誤りで、その時も、そして今現在も生きている可能性もあった。
「そうかな。念写でいいじゃないか」
いいじゃないか、という口ぶりに、変に他人事のようなニュアンスを感じて、おや?と思った。
問題はそこじゃない。そう言っているような感じ。
僕の疑念に気づいたように、師匠は続けた。
「松浦がこの写真のコピーをわたしに預けた時点で、もう答えは出てるんだ」
「どういうことですか」
0181非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロ)
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2018/11/13(火) 23:48:24.06p
「『老人』の、角南大悟の顔が潰れてしまっていて見えないとはいえ、
 現存する角南家の別邸で撮影されたと分かる写真に、
 消された大逆事件の首謀者たちが集まっているのが写っているんだ。
 それだけで、とんでもないスキャンダルだ。おいそれと興信所の所員なんかに渡していいはずはない。
 なのに松浦はそうした。脅しつきだったが、そんなものクソくらえだ。
 ようするに、この写真自体にもう価値はなかったんだよ。
 松浦は正岡大尉の死亡時期の問題だけで、一点突破できると踏んでたんだ。偽造写真だと。
 心霊写真だなんていう無駄な説明の必要はない。
 そんなものは、蛇足を通り越して薮蛇もいいところだ。
 ただ偽造写真だというだけで、この写真の持つ毒性は消えることになるんだから」
だったらどうして松浦は、心霊写真かどうかの鑑定を師匠に依頼したのだ。ふに落ちない。
師匠はしたり顔をして言った。
「そこだよ。あいつにとって重要なのは、こんな無価値な古い写真じゃない。
 消えた大逆事件も。そこにいてはいけない、死んだはずの将校も。
 『老人』の角南家のスキャンダルも、なにもかも関係ないんだ。
 ただあいつは……」
そこまで言いかけたところで、ふと口をつぐんだ。
「まて。おかしいぞ」
師匠は緊張した表情になった。
「ただの無価値な写真……関係ない……大逆事件なんか……死んだはずの将校も……関係が……」
ボソボソと呟いた後で、ハッとした顔をして師匠はいきなり振り返ると走り出した。
0186非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロ)
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2018/11/13(火) 23:49:03.02p
参道の石畳を、寺の方に向かって駆け抜ける。
「ちょっと待って下さい」
慌てて後を追ったが、もう姿が見えない。
とっさのことにあっけにとられ、初動が遅れたことと、それ以上に師匠の足が速すぎた。
敷地内にあった黒谷家の住居にたどり着いた時、すでに師匠は玄関に靴を脱ぎ散らかして上がり込んでいた。
僕も靴を脱いで、古い木の香りのする廊下を恐る恐る進んでいると、どこかから声が聞えて来た。
「どうして目が閉じないと、おかしいんだ」
師匠の声だ。どこからだろう。
勝手の分からない、やたらと広い他人の家をしばらくうろうろして、
ようやくたどり着いた時、すでに師匠の用件は終わっていた。
アキちゃんの部屋の前に、本人と夏雄と師匠とが立っていて、
師匠は厳しい顔をしたまま、近づいて来る僕の方をちらりと見た。
0189非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:49:11.010
重箱の隅wwwwwwwwwwwwwwwwwwww
0191非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロ)
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2018/11/13(火) 23:49:26.66p
「帰るぞ」
そう言って、黒谷家の兄妹に「ありがとう」と頭を下げ、玄関のある方に歩き出した。
アキちゃんは怯えたような面持ちでそれを見送っている。
夏雄は仏頂面だ。その目つきにはどこか殺気立ったようなものも感じられた。
「え、え」
僕はその慌しさに戸惑いながらも、師匠の後について歩き出す。
そうして戻って来たばかりの黒谷家を再び後にした。
夏雄はもう見送りには来なかった。
遠ざかっていく寺を振り返りもせず、杉木立の中の参道を再び通って山門のところまで戻る。
許されざるも山門に入った葷酒は、やはり許されざるも山門を出るのだろうか。
古びた門をくぐりながら、ふと意味のない言葉が脳裏に浮かんだ。
門の外に止めてあった車に乗り込むと、僕は師匠に今のやりとりのことを訊ねる。
しかし、むっつりと押し黙って口をへの字に曲げた横顔を見せられた。
どうして目が閉じないと、おかしいのか。
師匠は確かにアキちゃんに訊いていた。わざわざ家に取って返してまで。
「やっぱりあの正岡大尉には、なにかおかしいところがあるんですか」
「少し黙ってろ」
師匠はなにか難しい問題を押し付けられたように厳しい顔をして、そっけなくそう言った。
僕はそれ以上言葉を継げなかった。
師匠に心霊写真の鑑定を依頼した松浦の真意とやらの話も途中のままだ。
僕はもやもやしたまま、見るからに不機嫌になってしまった師匠の横で、居心地悪く助手席のシートに沈み込んでいた。
0198非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロ)
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2018/11/13(火) 23:49:58.78p
市内に戻って来ると、もう夕方の五時を過ぎていた。陽も翳ってきている。
「二手に分かれよう」
師匠はそう言って、街なかで僕を車から下ろした。
「わたしはちょっと調べることがあるから、先に家に帰ってる。お前は図書館で資料を借りて来てくれ。
 あと、スーパーに寄ってなにか買って来い。飯作ってやるから。
 おにぎりとパンしか食ってないから、腹が減ってかなわん」
「事務所じゃなくて、家の方ですね」
資料って、なにを借りて来たらいいのかと訊くと、
角南家のことが分かる郷土史の類を借りられるだけ借りて来い、と言われた。
それから、もしあれば『消えた大逆事件』のことが出ている本も。
頷いたが、僕は気がかりだった。もうタイムリミットまであまり時間がない。これ以上なにを調べる気なのかが分からない。
ひょっとして、師匠はお荷物の僕を捨てて、一人でなにかをしようとしているのではないか。そのことを心配したのだ。
「一人で松浦と会ったりしないで下さいよ」
いくら師匠でも女性なのだ。ヤクザと一人で対面するなんて、危なすぎる。
「分かってる、分かってる」
師匠はうるさそうに手を振ると、僕を捨て置いてさっさと車を出発させた。
0202非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/13(火) 23:50:13.15p
雑踏に残された僕は、仕方がないので図書館まで歩いて行き、
郷土史のコーナーに陣取って、角南家の名前が出てくる本を片っ端から借りて行った。
消えた大逆事件に関する書籍は、マイナー過ぎたのか、あるいは胡散臭い本という扱いのためなのか分からないが、
とにかく図書館には置いていないようだった。
図書館を出ると、近くのスーパーに寄る。
師匠は魚が好きなので、魚を適当に見繕って、あとビールを数本買い込んだ。

荷物が増えたので、少し気だるい思いをしながら師匠の家の方へえっちらおっちら一人で歩いて向かっていると、
急に誰かに肩を叩かれた。
まだ市街地だったが、一本裏の道を通っていたので、あまり人影もないような通りだった。
振り向くと、茶髪で派手な服装をした男がにっこりと笑って立っている。その口に、前歯が一本欠けているのが見えた。
「よう」
気さくにそう声を掛けられた瞬間、うなじの毛が逆立つような危機感が背骨に沿って脳天まで走り抜けた。
ズシリ。
0204非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/13(火) 23:50:32.64p
男の顔が僕の顔のそばまで近づき、その下では右の拳が僕の腹にめり込んでいた。
一瞬、吐瀉物が喉を逆流する、焼けるような感触があった。
身を守ろうと、図書館で借りた袋とスーパーのビニール袋を路上に落として両手で男を押しのけるような動作を取る。
しかし茶髪の男はするりと僕の手をかわすと、さらに近づいて腹の同じ場所を殴った。
それも寸分たがわずだ。今日夏雄に殴られたばかりの場所だった。
いや、少し外れている。昨日殴られた場所だ。この、同じ茶髪の男に。
僕はたまらず、身を折って吐いた。鼻に沁みるような痛さがある。
茶髪は、抵抗力を失った僕を引きずるようにして、近くにあった雑居ビルの一階のドアを開けて、中に入った。
空き店舗なのか、片付けられたなにもない殺風景な部屋に、ダンボール箱がいくつか転がっている。
その中で唯一、二段に積まれているダンボール箱に、僕は思い切り叩きつけられた。
背中に硬い物が衝突する。缶詰かなにかが箱の中にギッシリと入っているらしい。
二段重ねのダンボールは崩れ、僕はその上に倒れ込む。起き上がろうとした時、蹴りが来た。
胸の辺りに当たる。体重を乗せた横蹴りだったので、また吹き飛ばされる。
0206非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/13(火) 23:50:48.14p
仰向けに倒れた僕の上に、茶髪が跨るようにして仁王立ちする。
「写真、出せよ」
見下ろしながら、ヘラヘラと笑う。
返答をする間もなく、顔を斜めから蹴られる。いや、それはほとんど踏みつけに近かった。
頬に走る、皮膚と骨がずれるような痛み。
次の蹴りが来る前に、顔を庇おうと両手を持って行きかけて、しかし咄嗟の判断で茶髪の足を払った。
ぐらりとバランスを崩したところへ、頭突きをするように強引に立ち上がる。
全身で敵を押し込み、その反動を使ってすぐに身体を離す。
一瞬、間が出来たので状況を確認すると、空き部屋の中には自分と茶髪の男の二人しかいないことはすぐに分かる。
次いで武器になりそうなものを探すが、本当にダンボール箱くらいしか見当たらなかった。
こいつは、喧嘩のプロだ。
二人きりで対峙して初めて、皮膚感覚でそれを悟る。
「写真て、なんの、ことだ」
息を整えながらようやくそう言ったが、茶髪は歯の欠けた間抜け面でニヤケたまま馬鹿にしたように首を上下に振った。
0207非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:50:50.540
>>184
なんだよそのHP
0213非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/13(火) 23:51:31.12p
唯一の出入り口は、入ってきたドアだけ。それは茶髪の背後にあった。逃げられない。
そう悟った僕は、思い切り体当たりをしようと突進を敢行する。
しかし、そのスピードが乗り切る前に間合いを詰められ、鼻先にパンチを喰らった。
それも、一発の後、二発、三発と立て続けに。
ジャブだ。左肩を前に出しながら、腰を入れずに左の拳を突き出して来る。早い。とても避けられない。
この男はボクサー崩れなのか。
痛みに思わず目をつぶるやいなや、腹にまた鉛のような重いパンチを叩き込まれた。今度は右の拳だった。
「ぶえ」
無様な声が出て、吐瀉物がまた口からこぼれる。
茶髪は、身を屈めた僕の髪の毛を掴み、まるで吊り下げるように腕を持ち上げながら顔を近づけて言った。
「変態ども御用達の写真屋の次は、写真供養の寺か。分かりやすいなあ、お前ら。
 あのデブに訊いたぜ。お前らがコピーじゃなく、オリジナルの方を持ってるってことはな」
それを聞いて愕然とする。
すべてばれてる。なぜだ。まさか、尾行されていたと言うのか。この男に?
「やっぱり田村の野郎とつるんでやがったのか。
 いや、違うな。俺たちが見失っている田村が、わざわざお前らに写真を預けるわけがない。そんな危険を冒すわけが……
 どうせ押し付けられたんだろう。逃げている間に。事務所に押しかけて来たって時だ」
茶髪はもう一発腹にパンチを入れて来た。息が出来なくなる。下げかけた頭を、無理やり髪の毛を掴まれて起こされる。
「おいおい、なんだっつの。その目はよお。探偵の事務所で俺を睨んでた威勢の良さはどこ行った」
0217非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/13(火) 23:52:01.85p
そう言った瞬間、男のニヤついていた顔の表情が、筋肉ごと作り変えられたように変貌し、
元から細い目がこちらの心中を見透かすかのごとく、冷笑をたたえていた。
「人を見かけで判断してはいけないと、教わらなかったか」
茶髪は唇をあまり動かさず、静かにそう言った。松浦に感じたのと同質の寒気が、僕の身体を襲った。
チャッ、という音がして、空いていた左手にいつの間にかナイフが握られていた。

「今写真を持っているのは、あの女の方か。惜しかったな。まあいい、お前を囮にして呼び出すとしよう」
脇腹に、刃物の切っ先が突きつけられる。少し。ほんの少し、先端が皮膚を突く程度に。
ナイフを奪おうと動いた瞬間に、それは僕の内臓に深く突き刺さる。そのことがリアルに想像できる。
頭の奥がジーンとして、とても空気が苦い。
「来い」
茶髪は僕を無理やり立たせる。
その立ち上がる動きの間、僕の脇腹に当てられたナイフと、その先端の当たっている皮膚との位置関係に全く変化がなく、
滑らかに水平移動していたことに気づいた瞬間、抵抗する気力が失なわれていった。
この男はナイフの扱いに長けている。街なかでチンケなゴロを巻くチンピラなんかとは一線を画す、プロなのだ。
男が背後から僕の脇腹にナイフを突きつけたまま、空き店舗のドアから出て行く。
指示されるままに雑居ビルの奥へ進むと、エレベーターがあった。そのそばに緑色の公衆電話が据えられている。
「あの女のところに掛けろ」
0219非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/13(火) 23:52:16.07p
そう口にしたタイミングでナイフの先端が初めて前に進み、脇腹にブツリと痛みが走る。
ほとんど思考停止状態で、僕は受話器のフックを上げた。やけに重い。硬貨は男が入れた。
プッシュ式の番号を押しながら、わずかに残った理性が、別の誰かのところへ掛けるべきではないかと囁く。
誰だ。誰のところへ。
しかし、そのわずかな僕の躊躇いを見透かしたように、茶髪が背後から手を伸ばして来て、残りの番号を押してしまった。
師匠の家の電話番号だ。なぜこの男が知っている?
頭が痺れる。
『写真屋』が教えたのか。それとも小川調査事務所を家捜ししていた時に、どこかで番号を見たのか。
きっと後者だろう。その程度のことは抜け目なくやっていそうな気がした。
耳の奥で、呼び出し音が鳴る。もはや止めようがない。
電話が繋がる。一瞬の間の後、僕は茶髪に指示された通りの言葉を一方的に喋った。
田村の隠れ家を見つけたこと。その場所。可及的速やかに来て欲しいということ。
0224非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/13(火) 23:52:36.70p
その場所とは、もちろんこのビルの一階の最初のドアの向こうだ。
僕の声は普通ではなかったはずだった。しかしその震えも、田村を見つけてしまったのならば不自然ではない。
茶髪がフックを叩いた。なにか他のことを言う前に電話を切られてしまった。
「ご苦労」
そうしてまた僕は空き店舗へ戻された。
茶髪はポケットから細いロープを取り出して、
部屋の隅の壁から出ていたパイプのようなものに、僕を後ろ手にして縛り付けた。
ロープは細いが、金属製の綱が織り込んであってとても千切れそうにはなかった。
茶髪はようやく僕から離れ、一度ドアの外に出た後、本の入った袋とスーパーの袋を提げて戻って来た。
僕が路上に落としたものだ。そのまましておくと目立つので回収して来たらしい。
袋を地面に置き、ダンボール箱の上に腰掛けて煙草を吸い始めた。
その横顔にはニヤニヤとした頬の弛緩など跡形もなかった。
横目で僕を油断なく監視しながら、時おり天井に向けて煙を吐いていた。
「僕たちは、松浦さんの依頼を受けて動いていたんだ」
自分でも驚くような弱々しい声だった。
「知ってるさ。心霊写真だって?」
ククク、と茶髪は冷たく笑った。
僕はそこに、ヤクザという徹底した上下関係の世界にあるはずの畏敬の欠片もないことに気づく。
0228非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:52:52.250
>>223
メギドよりはまだわかるからこっちの方が…
0229非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/13(火) 23:52:52.37p
チンピラ上がりから抜け出せず、ただわめき散らすだけの頭の足りない男……
松浦や他の若い衆と一緒にいた時のその印象が、
ただ必要に応じて演じていただけの役割であったということが今はっきりと分かった。
男は、兄貴分の松浦など内心では認めていない。己の力、欲望をひたすら隠し、静かに牙を研いでいる。
そんなイメージがひしひしと伝わって来るのだった。
こいつは、一人で動いている。
独断専行で、つまり松浦に抜け駆けをして写真を手に入れ、一体なにをしようと言うのか。
誰にも気づかれずに研ぎ上がった牙を、使う時が来たとでも言うのだろうか。
ふと気づいたように茶髪は僕に近寄り、ガムテープを口に貼りつけた。
ポケットに入れていた板切れのようなものに、少量を巻きつけてあるのが見えた。驚くような用意周到さだ。
一本だけ欠けた前歯。離れていく時、そこに目が吸い寄せられた。
わざと抜いているのかも知れない。
ふとそう思った時、僕はただの人間を恐ろしいと思う感覚を味わった。とても嫌なものだった。
0231非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:53:14.45p
ふいに茶髪は煙草を踏みつけ、腰を上げる。
ドアの上部はすりガラスになっていて、その向こうに人影らしきものが現れている。
茶髪の左手にナイフが握られ、慎重に歩を進めていく。僕は動くことも、声を上げることもできない。
茶髪が、ドアの前に立った瞬間だった。
凄い音が耳に飛び込んで来た。
すりガラスが砕け散り、ドアの外から突き出された長い腕が、茶髪の顔面を捉えていた。
後ろに吹き飛ぼうかという勢いが、ガクンという不自然な動きに止められる。
腕はそのままさらに伸ばされ、茶髪の胸倉を掴んでいた。
そして間髪入れず、力任せにドアの方へ茶髪は身体ごと引っ張られる。
ガシャン、という音がして残ったすりガラスが割れる。
ドアに引き寄せられて上半身を叩きつけられた茶髪は、獣のようなうめき声を上げた。
ドアが蹴破られ、茶髪は今度こそ吹き飛ばされる。
耳が片方折れた兎が、身を屈めるようにしてドアをくぐって入って来た。
正しくは、首から上に兎の頭の着ぐるみを被っている男だった。
兎はにこやかに笑っている。しかし不気味に目は見開かれ、記号的で空疎な笑いだった。
兎は拘束されている僕の方に一瞥をくれると、起き上がろうとした茶髪に駆け寄って右手を突き出す。
茶髪は不十分な体勢のままそれをかわし、後方にステップして距離を取る。
怒鳴ったり、脅し文句を吐いたり、という無駄なことはしなかった。
0234非通知さん@アプリ起動中 (JP)
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2018/11/13(火) 23:53:16.59H
ロリコンは悪くないだろ殺すぞ
0239非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:53:38.21p
ただ、「誰だ」とだけ短く言って、拳を構えた。
その直前、瞬時に、茶髪は兎と、部屋の隅に転がったナイフを見比べている。拾う隙はないと判断したのか。
兎は無造作に近づいていく。耳を除いてもかなり背が高い。それほどタッパのない茶髪との体格差は相当あった。
自然、茶髪は兎を見上げる形になる。
茶髪の足が動いた。リーチの不利を消すために懐へ飛び込もうとしたのだ。
しかし、次の瞬間、その出足を兎の右足が止めていた。
ローキックだ。
ドシンという肉が叩かれる鈍い音がして、茶髪の身体が膝の辺りから前のめりに沈んだ。
ついで、左のストレートが茶髪の右頬を捉える。
その手が髪の毛を掴み、兎の額の部分が茶髪の鼻柱に叩きつけられる。振り下ろすような頭突きだった。
着ぐるみの柔らかい材質のせいか、ゴスンという控えめな音がした。
そして離れ際、兎の右のパンチがフック気味にボディへと吸い込まれる。

茶髪は苦悶の表情を浮かべて身体をくの字に折った。そのままうずくまり、動かなくなった。
兎はそれを見下ろした後、僕に近づいて後ろ手にパイプと結んであったロープを解いた。
「逃げるぞ」と、うずくまる茶髪をそのままにして、兎は部屋から出ようとする。
僕は口に貼られたガムテープを自分で剥がしながら、図書館で借りた本の袋とスーパーの袋を手に取って後を追う。
「ドアの前に立ってたのが僕だったら、どうするつもりだったんですか」
「…………」
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2018/11/13(火) 23:53:55.37p
兎は答えず、雑居ビルから脱出した。
茶髪に強制されて師匠の家に電話を掛けた時、夏雄がなぜ出たのか。さっぱり分からなかった。
夏雄は寺に残り、僕らは市内へ帰ってきたばかりなのだ。
しかし困惑しながらも、ただ与えられた言葉を吐くしかなかった。
そしてそのことが、僕の置かれた状況が危機的であるということを伝えるすべとなった。
電話に出たのが夏雄だと分かっていながら、なお相手を師匠として語り続けたからだ。
それが得体の知れない雑居ビルへの呼び出しであり、この件にヤクザが絡んでいることと合わせて考えると、
あの暴力馬鹿ならずとも状況はある程度読めたはずだった。
まさか兎がやって来るとは思わなかったが。
脇道の角を曲がると、道端に黒い車が止まっていた。夏雄のスープラだ。
「あの、」
なにか言おうとして、僕は突然眩暈に襲われた。
力が抜けて吐き気が胃の奥から湧いてくる。道の端に身を折って、少し吐く。
体中が痛い。殴られたり蹴られたりした場所が熱を持って存在を主張している。
座り込んでしまいたい衝動に駈られていると、
兎が僕を小脇に抱えるようにして力ずくでスープラまで連れて行き、後部座席に放り込んだ。
煙草の匂いが染み付いているシートに顔から突っ込み、身体を起こす元気もないまま呻く。
兎が運転席に乗り込み、その着ぐるみを脱いだ。
夏雄が前髪から汗を滴らせながら、ダッシュボードのボックスティッシュをこちらに投げて来た。
僕はそれで吐瀉物のついた口元を拭く。
血がついているのに気づいて、顔を触ると、頬の皮膚が少し裂けていた。踏みつけられた時の傷だ。鼻血も出ている。
0247非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:54:12.84p
夏雄は行き先も告げずにスープラを発車させた。
「加奈子さんは」
もう一枚ティッシュを抜きながらそう訊く。
「家にはいなかった」
寺で分かれた後にすぐ僕らを追って来て、そのまま師匠の家に行ったのか。そこに僕が電話を掛けたわけだ。
「加奈子さんは!」
僕は大きな声を出した。蹴られた胸に響いて痛みが走る。
「うるせえな。置手紙があったんだよ。人に会って来るって」
松浦の顔が浮かんだ。
やっぱり会いに行ったのか。一人でかっこつけやがって。何をされるか分かったものじゃないのに!
焦りが脳の回線を焼く。
「誰に会いにいったんです」
「落ち着け、ボケ。自分が帰るまでになにかあったら、西署に電話しろって書いてあった」
「なにかあったら警察に電話しろって、やばい状態に決まってるでしょう!」
「こっちになにかあったら、だ。しかも110番じゃねえよ。二課のデスクだ。刑事に会ってんだよ」
刑事に?
知り合いがいるのは知っていたが、なぜ今?
「知らん」
0260非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:55:13.59p
車はしばらく走ってから止まった。古ぼけた看板が掛かった小さな診療所の前だった。
僕は乗った時と同じように、力づくで後部座席から引っ張り出され、診療所の中へ連れ込まれる。
ギシギシきしむ板張りの薄暗い廊下を通って、診察室らしい一室に入ると、
剥げ上がってでっぷりと太った初老の男が、白衣を着て椅子に腰掛けていた。
「よう、夏っちゃん。右手を怪我した時以来か」
夏雄は黙って僕を差し出した。
その医者は松崎と言った。小川調査事務所の面々ご用達の『あまりうるさいことを言わない』医者らしい。
喧嘩の怪我くらいではなにも訊かずに治療してくれるとのことだった。
尻に銃創がある怪我人がやって来ても、と聞かされたが、聞き間違いだっただろうか。

「はあん。だいぶやられたな」
上着を脱がされて、アザになっている箇所を強く抑えられ、呻いた。
看護婦はいない。松崎医師一人でやっているらしい。
夏雄はそのまま僕を医者に押し付け、帰ろうとした。
「待てよ」
立ち上がろうとしたが、医者に肩を押さえられる。ただの肥満体かと思ったが、凄い力だ。
「とにかく怪我を見てもらえ。浦井のことは心配するな。会えたら連絡してやる」
夏雄はそう言い置いてさっさと行ってしまった。
僕は湿布やら包帯やらを巻かれ、あまり清潔には思えないベッドに寝かされた。
「吐き気さえ治まったらもう大丈夫だよ」と言われたが、
まだふらつきがあり、帰る足もない僕はその診療所で夏雄の連絡を待つしかなかった。
人に言えない怪我を負った連中を相手に商売をしているこの医者なら、
もしかして腹を刺された田村も、あの応急処置の後でやって来た可能性もあると思い、
訊いてみたが「知らない」というそっけない答えだった。
仮に来ていたとしても、そんなことを喋るはずもなかった。
0261非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:55:18.540
副業(バイト)
0263非通知さん@アプリ起動中 (JP)
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2018/11/13(火) 23:55:22.68H
たつきのクソアニメVSけもふれ2

けもガイジがどんだけ暴れ回るか今から楽しみだわ

https://i.imgur.com/nnYc7hg.jpg
0264非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:55:27.81p
診療所に、他の客がやって来る気配はなかった。医者はなにをするということもなく、ずっとテレビを見ている。
横になったまま僕はうとうとしていた。
はるか頭上のあたりに、五枚の写真が浮かんでは消え、浮かんでは消え……
ゆらめく蝋燭の明かり。
閉じない。
どうして。
誰の声だったか。
ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう、なな、やあ、ここの、とお……
正岡大尉。
老人。
とっとと出るぞ、こんな水虫屋敷。
あいつは、見えてるよ。
よもつひらさか。あしはらのなかつくに。
人を見かけで判断してはいけないと、教わらなかったか。
師匠。
加奈子さん。
どんな写真なんだ。けしからん。
実に。
見てみたい。
0266非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:55:46.040
飽きたな
0269非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:55:50.93p
「おい」
「はい」
返事をしてから目を覚ました。
ああ。寝てしまっていたらしい。診療所の窓の外は暗く、もう日が落ちてしまっている。
師匠が僕の横たわるベッドのそばの丸椅子に腰掛けている。
「大丈夫か」
本物の師匠だ。ついさっき別れたばかりなのに、ずっと会えなかったような気がした。
「はい」
身体を起こす。部屋の柱時計を見ると、夜の八時になろうとしていた。
「決着をつけに行くぞ」
パンを買いに行くぞ、とでも言うようなあっさりしたその言葉に、僕はどんな怪我だろうが立ち上がれるような気がした。
「はい」
そう答えると、師匠はニッ、と笑った。


師匠のボロ軽四で小川調査事務所に到着した僕らは、松浦を待っていた。
師匠が八時半にここで会う約束を電話で取り付けたという。
ホワイトボードを確認すると、小川所長が帰ってくる時間が今日の夜九時となっている。
しかし九時といえば飛行機の到着の時間のはずなので、実際はまだ一時間程度は猶予がある。
師匠は小川所長が戻って来る前にこの件のカタをつけるつもりなのだ。
無断でヤクザの依頼を引き受けた手前、そうせざるを得ないのだろう。
カタをつけるといっても、依頼部分については半ば出来レースだ。
預かった写真のうち、四枚は心霊写真じゃありません。もう一枚はたぶん念写によるものです。
そう説明したところで、結局は偽造写真として扱われるだけだ。
田村がまだ見つかっていないとしても、躍起になって探し出すモチベーションにはならない。
松浦の真意は別のところにある、というようなことを師匠は言っていたが、それもどうということはないだろう。
問題なのは、田村が持って逃げているはずの写真の現物を師匠が持っていたということだ。
0271非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:56:06.60p
そしてそれを松浦に伝えたであろう茶髪を、本職のヤクザを、夏雄がボコボコにしてしまったということ。これがまずかった。
兎の着ぐるみを被っていたが、僕を助けに来たのだ。こちらサイドの人間に決まっている。
単独行動を取っていた茶髪が、このことを松浦に、あるいは石田組に報告していないのではないか、
という甘い希望はこの際持たなかった。
タダで済むとは思えない。
「黒谷さんは」
師匠に訊くと、「帰した」という答え。
「あいつがいると話がこじれる」
この件は暴力抜きで決着できると判断したのだという。
話がこじれるのは想像できるが、なんだそれは、と僕は思った。
寺から帰る時に、「ヒマか」と訊いたのは師匠の方だ。
関わりたくないのか、夏雄はついて来ることを拒否したのに、結局師匠を心配してやって来ている。
そして身体を張って僕を助けてくれたのに、邪魔になったから帰れ、というのは……
僕は嬉しかったのだ。
あの兎が現れた時。
あの、僕がボコボコにされていた時に。痛ッ。
怪我のことを思い出した途端、傷口が痛み出した。切った頬などより、打ち身のところがキツイ。
特に腹は茶髪、夏雄、茶髪と同じ場所ばかり殴られているから。なんだかムカムカして来た。夏雄の野郎。
しかしまた、これから石田組とどうケリをつけるのか心配になり、落ち込む。
0273非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:56:11.710
>>263
暴れるのってたつき信者だろw
0277非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロ)
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2018/11/13(火) 23:56:25.50p
生きた心地がしない状態で事務所の椅子に座っていたが、心の準備が整わないうちに事務所のドアが開いた。
そして四人の男たちが入って来る。
松浦がいる。そして最初の時にいた年嵩の男と、ゴリラのような顔の男。
あと初めて見る体格の良い男がいた。背は夏雄と同じくらい高く、黒いスーツを窮屈そうに着ている。
ひしゃげたような団子鼻で、人相も相当に凶悪だった。
耳が潰れていて、いわゆるギョーザ耳になっている。かつては柔道の重量級全国大会出場者、というところか。
その男を見て、僕は茶髪が兎にやられた一件が完全に石田組にも伝わっていることを悟った。
しかし彼らが警戒しているその兎は今ここにはいない。最悪の状況だ。
「その化け物に用はない。帰せ」
師匠が自分のデスクから立ち上がり、はっきりそう言い放った。
0278非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:56:31.060
20前半 年収400万 
基本給15万
固定手当4万
夜勤手当3万
交通費1万
残業代7万
休み80 毎日12時間仕事
給与が上がったんだが理由が県の最低時給を下回るかららしい

ブラックだと思ったから辞めたいと思ったんだが親はそこまでブラックじゃないと認識してるみたいで反対されてる
ブラックじゃ無いのかね
0280非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:56:42.380
この文章なに?
0281非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/13(火) 23:56:50.05p
化け物と言われても、団子鼻の男は顔色一つ変えない。
師匠の物言いを咎める喚き声も聞えてこなかった。その役割をしていた茶髪がいないからだった。
「それはそちらの態度次第だ」
松浦が静かに口を開いた。
「写真は渡す。本来、これは田村のものだ。お前たちに渡す義理はないが、この騒動を収めるためにそうしよう」
師匠は懐から写真を取り出し、その場で腕を伸ばして差し出した。
年嵩の男がスッと近づき、写真を受け取る。
手元にやって来た写真を松浦がちらりと一瞥する。
「いいだろう」
室内の緊張感が少し和らいだ気がした。
「だが、田村の居場所はどこだ」
「知らん。写真はやつがお前らに腹を刺されて事務所に転がり込んで来た時に、押し付けられただけだ。
 その後は会っていない。一度電話があったが、居場所を聞く前に切られた」
こっちだって迷惑なんだ!師匠はそう言ったが、写真を最初に松浦に渡さなかった理由にはなっていない。
「なぜ渡さなかった」
やはりそこを訊かれた。
『ヤクザが嫌いだろう』
田村にはそう言われたのだったか。
しかし師匠は、松浦に向かって平然として言った。
「この写真には秘密がある」
「なに?」
松浦が眉根を寄せた。
「あんたにだけ話したい」
師匠は真っ向から松浦を見ている。
「依頼のこともある」
そう続けた師匠に、ようやく松浦は頷いた。
「下で待て」
男たちはその指示を受けて、整然とドアから去って行く。あらかじめ心得ていたようだった。
化け物と呼ばれた男も、全く表情を変えず、ドアの向こうへ消えた。
「そちらは」
松浦は僕を見た。
0286非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/13(火) 23:57:33.66p
嫌だ。絶対にここにいる。
テコでも動かない気だったが、
師匠が「怪我人だ。いいだろう?」と言うと、ふ、と空気が抜けるような笑いを浮かべ、松浦は何も言わずソファに腰掛けた。
「あの歯の抜けた茶髪の男はどうなった?」
師匠がデスクから椅子をソファの方へ回して、そう訊いた。
「あなた方には関係がない」
松浦はそのことについて話す気はない、というようにそっけなく言った。
僕はその様子から、茶髪の独善的行動が松浦の逆鱗に触れたのではないかと想像した。恐らく当たっているだろう。
だとするならば、今ここにいないあの男が、
夏雄にやられた以上の重症を、仲間からの制裁によって負っている可能性さえあった。
「関係ないのだったら、そいつの怪我についても不問だな」
師匠は夏雄の暴行について踏み込んだが、松浦はそれについてもそっけなかった。
「関係がないと言ったはずです」
そうして胸の内ポケットから黒革の財布を取り出して、数枚の一万円札を僕に突きつけた。
一瞬なんのことか分からなかったが、自分の頬に当てられた包帯を手で触り、そう言うことかと気づく。
「やめろ」
師匠は強い口調で言った。
0288非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/13(火) 23:57:49.06p
言われなくても受け取る気などなかった。
なにしろ僕はあの診療所でお金を払っていない。どこにツケられたのか分からないが。
「嫌われたものだ」
松浦は一人ごちて財布を仕舞う。
「では、聞かせてもらいましょう」
ギシリ、とソファがきしんだ。
「まず、依頼の方からだ」
師匠はそう言ってから、机の上に置いてあった自分のリュックサックを持って来て、中から封筒を取り出した。
それから僕に目配せをして、来客用のテーブルを持って来させる。
ソファと机の間に置かれたテーブルに、五枚の写真が並べられた。いや、うち一枚はその複写だ。
あえて師匠は、現物の方ではなく、複写の方で話を進めた。
「そちらの依頼は、
 この横浜にある角南家の別邸で撮られた、1938年か39年の写真に写っている、
 死んだはずの正岡大尉の正体を調べろ、というものだった」
0294非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/13(火) 23:58:12.24p
「そうです」
「心霊写真なのか、それとも他のなにかなのか……」
師匠はゆっくりと写真のコピーを指の腹で撫でた。
「ここに写っている、この正岡大尉に良く似た人物は、今現在も死んでいない」
松浦は、ほう、という顔をした。
「生きていないものは、死なない。このテーブルが死なないように」
コツコツと中指の第一関節で叩く。
「わたしの結論としては、念写だ。こいつは、ここにいる仲間たちの思念によって写し込まれた、命なき存在なんだ」
ね・ん・しゃ。
松浦は馬鹿にするでもなく、なんの先入観もないようにその言葉を吟味しているように見えた。
「だが、ただの精巧な人形がここに置かれていただけなのかも知れない。あるいは、ただの心霊写真なのかも知れない」
師匠はただの、を強調して言った。
「でもそれも大した問題じゃない。なぜならこれは偽造写真だからだ。真実がどうあれ、最初からそう決められている。
 角南一族にダメージを与える致死的な毒にはなりえない」
そうだろう?師匠は松浦の目を真正面から見る。松浦はなにも答えない。
0297非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:58:20.680
>>287
可愛そう
この時間に携帯回線だしどんな生活してるんだ
0299非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/13(火) 23:58:29.46p
「あんたの真意は別にあった。本当の依頼はこっちさ!」
師匠はテーブルを叩いた。いや、その上に並べられている他の四枚の写真をだ。
「海辺の家族連れ。男の子の両膝から先がないのは、ただのシャッター速度の問題だ」
写真はピン、と弾かれテーブルの外に落とされた。
「アイスを食べているカップル。この肩の手はよくあるイタズラだ」
ピン、と弾かれる。
「飲み会の写真。煙草の煙がストロボに照らされ、偶然顔のように見えただけだ」
ピン。
「母親と男の子の写真」
師匠はそう言って写真を手に取った。
「この男の子は、あんただ」
驚いて目を疑った。なぜそうなるんだ?
松浦も驚いているかと思ったが、その表情は逆に冷え切ったように緊張感を湛えている。
0300非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/13(火) 23:58:37.780
まぁ、何も言うまい。
言いたいことはたくさんあるけど。

本当にそれでいいのか。仲間との協力を、仲間との想いを、仲間との絆を。

ゲームが楽しいって思える気持ちを。

やることはやる。それはゲームのためではなく、仲間のため。そのギャップを分かって欲しい。


康一、心のポエム
0304非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/13(火) 23:58:54.32p
「そして母親は、立光会の先代の愛人だった女。あんたを産み、中学校卒業まで私生児として育てていた女だ」
師匠の頬にも緊張があり、こわばっているように見えた。
テーブルを真ん中にして向かい合い、お互いしばし押し黙った。
口を開いたのは松浦だった。
「なぜ分かった」
その言葉には、脅しというよりも純粋な興味が混ざっているようだった。
「わたしは、霊を見ることが出来る。
 それは人の思念、怨念、執念を、五感ではないなにか別の知覚で捉えることが出来るからだ。
 心霊写真にはほとんどそれがない。
 確かに撮影されるまではそういう思念が影響している。だけどネガからプリントされるのは薬品による化学反応だ。
 写真として手元に来た時点で、残念ながらわたしに感知できるような霊ではなくなっている。
 ただの視覚的なものに過ぎない」
心霊写真は苦手だ。寺に向かう車の中で、僕にしてくれたような説明を師匠は繰り返した。
松浦はじっと聞いている。
「しかしこの母子の写真は違った。
 見た瞬間からビンビン来たよ。念だ。念。強烈な思念、怨念、執念。わたしにも感じることが出来るやつだ。
 それがこびり付いて離れない。
0317非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:00:39.370
>>310
それはおまかんでは
0319非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/14(水) 00:00:53.34p
あんたのだよ。その写真を他の写真に混ぜて持って来た、あんたの念だ」
松浦はなにも言わない。
「この、窓のところに薄っすらと写っている男。あんたは、この男のことを知りたかったんだ。
 家の前で写真を撮る母子。
 カメラを構えているのは、近所の人か?
 そして窓辺で薄ら笑いを浮かべてそれを見ている男……目元なんかはよく見えないのに、その口元は分かる。薄ら笑い。
 それがその男の本質であるかのように、だ。
 あんたはこの男がこの時、家の中にいたのか、それとも霊体として写っているのか、それを知りたかったんだ」
違うか?刃物を前にしてなお喉を突き出すような、緊張した声だった。
松浦はまだなにも言わない。その顔から表情が完全に消えている。
写真の中の男の子は、はにかんだようにほんの少し笑みを見せていた。目の前の男にその面影はない。
0326非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:01:31.310
>>312
1000万プレイヤーのゲーム感はこういうことなんか
0328非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/14(水) 00:01:40.98p
「それにこだわる理由も分かる。この男が、あんたの父親だからだ。
 だけどくだんの立光会の先代じゃない。顔つきがまるで違う。
 あんたは立光会の先代の愛人の息子だが、先代の実の子ではなかった。
 そうだろう。あんたの実の父は、薄ら笑いを浮かべているこの男だ。
 言ってやるよ。こいつは霊じゃない。ここにいたんだ。
 あんたら母子と一緒のフレームに入ろうとせず、ただ離れた場所から薄ら笑いを浮かべている。そういう男だ」
師匠は自棄を起こしたように捲くし立てると、
さあ矢でも鉄砲でも持って来い、とばかりに開き直って、腕組みをしながら椅子の背もたれにふんぞり返った。
生きた心地がしない状態で僕は手に汗を握っていた。
松浦はまだなにも口にせず、写真をじっと見ている。男の上半身が薄っすらと見えている窓のあたりを。
「そうか……」
ようやく開いた口からは、そんな静かな言葉だけがこぼれた。
そうしてそっと写真を仕舞う。
師匠はばつが悪そうに頭を掻いている。
立光会の先代の顔つきなんて、昨日の今日まで知らなかったはずだ。
0331非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:02:03.89p
西署の刑事に会いに行ったのはそのためか。
ヤクザ嫌いの師匠が、ヤクザの世界の事情を調べようとすれば、警察しかないのだろう。
松浦はなんの詮索もせず、この件を終わりにした。
『あんたの後ろにあるのは虚無だ』
僕はこの男の持つ虚ろな冷たさが、師匠の言う虚無が、どこから来るのか、おぼろげながら分かった気がした。
松浦が腰を浮かしかけた時、師匠が声を掛けた。
「待てよ。まだ話は終わってない」
「もうなにも話すことはない」
そう言えば、最初に師匠は青年将校たちの写真を指して、この写真には秘密があると言っていた。
思わせぶりだったが、そのことなのだろうか。
しかし、僕にももう、そっちの写真にはあまり価値がないとしか思えなかった。
「聞け。聞いてくれ。重要な話だ」
師匠が身を乗り出す。
「頼む」
その懇願に、松浦は一瞬逡巡したように見えたが、やがてソファーに座りなおした
0338非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:02:36.520
春田康一 (@HarutaKoichi)
2018/11/13 23:57
まぁ、何も言うまい。
言いたいことはたくさんあるけど。

本当にそれでいいのか。仲間との協力を、仲間との想いを、仲間との絆を。

ゲームが楽しいって思える気持ちを。

やることはやる。それはゲームのためではなく、仲間のため。そのギャップを分かって欲しい。
0339非通知さん@アプリ起動中 (JP)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:02:38.07H
エロ小説バカにするなよ

タイトル:魔族に支配された村で大好きな女の子が生贄にされそうになってるから女装して身代わりになったハーフエルフ美少年がミノタウロスチンポで性奴隷化した上に大好きな女の子の前でケツアクメをキメさせられる話
作者:藻中こけ

▼あらすじ等
魔族に支配された村で大好きな女の子が生贄として捧げられそうになってるから女装して身代わりになったハーフエルフ美少年がミノタウロスチンポで性奴隷化した上に大好きな女の子の前でケツアクメをキメさせられる話です。
0344非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:03:06.09p
「写真を」
師匠にそう請われて、松浦は一度仕舞った写真を取り出そうとする。
しかし師匠は「そっちじゃない。『老人』の方の写真だ」と言った。
そうして、テーブルの上に写真と、その複写が並んだ。
複写の方は中央部分が黒く潰れていて、『老人』の顔が見えない。
「これがなにか」
師匠は考えを整理するようにしばし視線を落とし、慎重に口を開いた。
「わたしの知り合いに、ある霊能者がいてな」
そうして名前や詳細を出さずに、アキちゃんのことを話し始めた。
僕らの目の前で起きた、写真の人物の目が閉じるという、
あの集団催眠なのか集団幻覚なのか分からない不思議な力のことも。
そうして、写真の原本の方を使って、そのシーンを再現する。
写真の上に手をかざし、手のひらをくるくると回しているのだが、
蝋燭の明かりもないこんな明るい場所ではやけに滑稽に見えた。
松浦の口元に冷笑が浮かんだのを見て、「笑わず聞いてくれ」と師匠は言う。
「『閉じない』『どうして』そう言ったんだ、その霊能者は。
 確かに正岡大尉の目は閉じていなかった。
 だからわたしは、それが生きている人間ではないからではないかと思ったんだ。
0347非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:03:13.320
はるたそなに言ってんの?
0351非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/14(水) 00:03:29.89p
でもよくよく考えるとおかしいんだ。
 他の写真でも、目を閉じた人間と、閉じていない人間がいる。
 飲み会の写真なら、一人のおっさんは目を閉じていたけど、他は閉じていない。
 それ自体には、なにもおかしいことはないはずだ。
 『老人』たちの写真なら、一人は目を開いていて、他は閉じている。
 今はもう死んでいる人もいるし、生きている人もいる。それだけのことだ。
 目を閉じない、なんて言って怯える必要はない。
 確かに古い写真だが、いつごろのものだとか、大逆事件に関わる写真だなんていう背景は一切話していない。
 ましてこの後彼らは処刑されたなんて話は。
 なのになぜ、一人でも目を閉じない人間がいると、おかしいんだ?
 現に青年将校たちの年齢を考えると、今生きていたら八十歳くらいだ。一人くらい目を開けていてもなにもおかしくない」
師匠はそこで言葉を切り、
『閉じない』『どうして』
と繰り返した。
0354非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:03:46.380
BANされたツーラーの中にはるたそフレンズでもいたか?
0355非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:03:47.720
>>349
キム哲
0359非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:03:51.89p
なにが言いたいのか分からず、僕は困惑していた。
やっと松浦たちヤクザとの縁も切れ、この写真にまつわるやっかいごとが終わりかけていたのに、
なにを師匠は言おうとしてるのだろう。
スッ、と師匠の指が写真に向かう。そしてそれは『老人』の顔の上で止まった。
「閉じなかったのは、こいつだ」
ゾクリとした。
なぜか分からないけれど、この二日間で、最大の寒気が前触れもなくふいにやって来た。
心臓が、今初めて動き出したかのようにバクバクと音を立て始める。
「正岡にばかり目をやっていて、わたしも気づかなかった。だけどその霊能者だけは見ていた。
 写真の上から手を離した時、この『老人』だけは、一度閉じた目をもう一度薄っすらと開いたんだ」
寺から帰りかけたところで、いきなり引き返してアキちゃんのところへ走ったのは、そのためか。
『閉じない』『どうして』という、アキちゃんのもらした言葉の齟齬に気づき、その真意の確認のためだった。
そして、アキちゃんが見たものとは……
「半眼だ。言われなくては分からないくらい、薄っすらと。
 それが何度手順を繰り返しても、その度に閉じた目をわずかに開けたそうだ。
0361非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:04:07.700
>>338
何もいうまい→めっちゃ言ってる
これが春田なんだよなぁ
0362非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロ)
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2018/11/14(水) 00:04:14.37p
まるで薄目を開けて、写真の中からこちらを覗いているみたいに……」
そんな現象は初めてだったから、怖くなったそうだ。
師匠はそう言って右の拳を縦にして口元に当て、睨みつけるように写真を見下ろす。
「死んだ人間は目を閉じる。生きている人間は目を開けたまま。では、一度閉じて、薄目を開けるやつは?」
ぶつぶつと言いながら、師匠はリュックサックを手元に引き寄せ、中身を探る。
「そっちのコピー。複写してる時に、途中で田村に写真を奪われたから、真ん中が黒く潰れてるってやつ」
テーブルの方を見ないで師匠は続ける。
「本当に、そうなのかな」
「なんのことです。なにが言いたい」
松浦が怪訝な顔で問い掛ける。
「どうして写真を渡さなかったのかと訊いたな。
 田村から無理やり押し付けられた写真なのに、あんたたちがやって来た時にどうして渡さなかったのか、と。
 正直言うと、昨日、一度目は迷ってた。小川所長に迷惑が掛かるなら、渡してしまおうかとも思った。
 けど、なにか第六感みたいなのが働いてな。黙ってたんだ。
 そして次の日、二度目にあんたらが来た時には、もう渡すつもりはなかった。
 一度目と、二度目の違いがどうして生まれたのか」
0364非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:04:26.730
>>346
うしろの本体も消えて草
0365非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:04:43.970
こんなもんもっと別のプライベート垢でやれよ
昔からグラブルの宣伝したり企業のこと喋ったり馬鹿なんじゃねえのか?
ネットリテラシーなさすぎなんだよ
0366非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/14(水) 00:04:52.00p
ごそごそとやっていた手の動きが止まる。
ゆっくりとリュックサックから半透明なクリアファイルが出てくる。中になにか入っている。
「初日、つまり昨日の夜、コピーをな。取ってみたんだ。
 持ち歩くにも、あんたたちとやりとりするにも、あった方が便利だと思って。
 そしたら、こうだ」
クリアファイルから、写真のコピーが出て来た。
だがそれを見た瞬間、僕の身体には鳥肌が立った。
コピー用紙の中央が真っ黒に潰れている。『老人』の顔を中心に。まるで同じだった。松浦が持って来たものと。
「まさかそれが」
松浦の目がクリアファイルに注がれる。クリアファイルの中にはまだ用紙が入っていた。
「なんだこれは、と思ってな。いろんな所でコピーをとったよ。コンビニを回ったり、文具屋を回ったり。そのすべてがこれだ」
テーブルの上に、コピー用紙がばら撒かれる。
目を疑った。すべてだ。すべてまったく同様に、『老人』の顔を中心にして真っ黒く潰れている。
いや、よく見るとその黒い部分は、すべて微妙に形が違う。生物に、個体ごとの差異があるように。
「複写を途中で止められたから起きた焼きミスなんかじゃないんだ。これは。まともじゃない。もっと恐ろしいものだ」
松浦も食い入るようにコピー用紙を次々手に取っている。
オリジナルからコピーされた写真のすべてから、『老人』の顔が消されている。
「消された大逆事件とやらでお縄になった青年将校たちが、
 どうして北一輝の名前を、つまり『老人』角南大悟の名前を割らなかったか、考えたことがあるか」
0368非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:05:26.420
>>365
そういうところが康一の魅力
0371非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/14(水) 00:05:33.65p
松浦がコピーから目を離さず、答えなかったので師匠は続ける。
「どういう思想を植えつけられたのか知らないが、首謀者の名を明かさなかったのには、二つの理由が考えられる。
 一つは、首謀者への畏敬から、罪が及ぶのを防ぐため。
 そしてもう一つが、彼らの計画が、そして思想が、まだ生きる望みがあったためだ。
 首謀者が無事で、かつそのまま軍に知られなければ、自分たちの失敗の後でもまだ思想は達成できる。
 その捨石になるためだ」
だがこいつは。と師匠は、原本の方の『老人』の顔を見つめる。

「こいつは、そんな大逆事件などなにもなかったかのように、戦後は商売を広げ、角南家を大きくする。
 政財界にも手を伸ばし、フィクサーとも呼ばれる存在になる。
 思想はどこにいった?青年将校たちを決起させたイデオロギーは?論理は?そんなものが本当にあったのか?
 青年将校を駆り立てた言葉は、もう誰も知らない。こいつは…………」
化け物だ。師匠は吐き捨てるように言った。
あの団子鼻のヤクザに言った言葉と同じだったが、その重さは全く違っていた。
「わたしが念写だと思ったのには、そういうわけもあった。
 こいつにとっては、ただあるべき姿に修正しただけだ。自分の描いた地図の通りにだ。
 岩川大尉が死んでいれば岩川が。もう一人のなんとかって大尉が死んでいれば、そいつがここに現れていただろう。
 亡霊のように。
 そう思えばなぜかしっくり来るんだ」
0374非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/14(水) 00:05:49.16p
写真の中の『老人』は、当時まだ五十代だと言うのに、
眉間と頬には深い皺が刻まれ、すべてを知り尽くした賢人のような威厳が備わっていた。
だがその威厳は、尊大さを併せ持ち、わずかに上げた顎が目に映るすべてを見下しているかのように見えた。
「腹を刺された田村。その揉み合いになった時に怪我をしたという、あんたのところの若い衆。
 歯抜けの茶髪野郎にボコボコにされたこいつ。お返しにボコボコにされた茶髪野郎……
 この写真に関わった人間が、昨日今日の二日間でかなりの怪我を負っている。他にもいるんじゃないか」
そう振られ、松浦はハッと気づいたような顔をして、「弁護士が」と言いかけた。そのまま口をつぐむ。
「なんだ、弁護士先生もどうにかなったのか。面白いな。深く関わった人間で無事なのは、わたしとあんたくらいじゃないか。
 こいつはよっぽど強い守護霊を持ってないと、対抗できないらしい」
ははは、と師匠は笑ったが、松浦はその冗談を笑いもせず、射るようにスッと目を細めた。
師匠はばつが悪そうに視線を逸らすと、テーブルの上に散乱したコピー用紙を片付け始める。
「こいつは燃やすよ。あんたも、そのオリジナルをどうするつもりか知らないが、手放した方がいい。
 今は握りつぶすつもりだと言っても、あんたらの稼業は、明日はどっちに向くか分からないんだろう。
 だからと言って、ずっと持っているのはまずい」
0378非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロレ)
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2018/11/14(水) 00:06:10.83p
実にまずい。師匠はそう繰り返したが、忠告は聞かれる様子はなかった。
松浦は写真を懐に仕舞い、今度こそ腰を浮かせる。
「無視かよ。幽霊やら怨霊やらという生易しいものじゃないぞ。こいつは」
「では、なんですか」
師匠は言葉に詰まった。
「分からない。死んでいるのに、死んでいない。
 死してなお、その思想が生きている、とかそういう抽象的な話じゃない。
 なんらかの存在として、この世にある。そんな気がする。
 半眼に薄っすら開かれた目。今も死の淵の向こうから、この世を覗いている」
御霊(ごりょう)……
ふと、その言葉が頭に浮かび、僕はぼそりと口にする。
師匠と松浦がこちらに顔を向けたので、「いや、その」と手を振った。
師匠の言う怨霊という言葉から、
歴史上の凄まじい祟り神であった、菅原道真や崇徳上皇、そして平将門などのことがふいに連想されたのだ。
世に怨念を撒き散らした彼らはまた、諡号をされ、神として祀り上げられることで鎮められた。
だがその鎮魂は、恐怖に蓋をしたものであり、
彼らの怨念がいつまた世に溢れ出すか分からないという畏怖の上に成り立っている。
「御霊か」
0382非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/14(水) 00:06:35.82p
師匠はそう呟いて考え込んだ。
松浦は、ふ、と笑い、スーツのズボンに出来たわずかな皺を手で払った。
「お嬢さん、お話が出来て楽しかった。
 約束の報酬は、この事務所の正規の料金分でも、受け取ってくれないのでしょうね」
「わたしが欲しいのは、ヤクザのいない日常だ。もう二度と顔を見せないでくれ」
最後まで師匠は口調を改めなかった。
松浦は顔色を変えることもなく、ただ「さようなら」と言って僕らに背を向けた。
ドアノブに手を触れかけた時、じっと見ていた師匠が声を上げる。
「なあ、一つだけ教えてくれ」
「……なんです」
松浦は上半身を捻って顔を半分こちらに向けた。
「本家立光会の先代の落し種だって噂。わざわざ広めてるのは、あんたか?」
挑発的なその言葉に、松浦はなにも答えなかった。
ただじっと師匠の方を見た後で、全く別のことを言った。
0384非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:06:55.430
どうせリネかなんかの固定がやめたとこなんだろうな
0385非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:06:57.140
康一の思い……確かに受け取ったぜ!

(哲也)本当にそれでいいのか。仲間(スタッフ)との協力を、仲間との想いを、仲間との絆を。
ゲームが楽しいって思える気持ちを。 やること(仕事)はやる。
それはゲームのためではなく、仲間のため。
そのギャップを分かって欲しい。
0386非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/14(水) 00:07:03.92p
「私が見ている世界は、あなたの見ている世界と似ているだろうか」
また、どこかで。独り言のようにそう口にしてドアを開けた。
その後ろ姿が消えて行くのを、僕と師匠は静かに見送った。


松浦が去った後、夜九時半になる前に僕らは小川調査事務所を出た。
なんだか疲れ果てていて、今所長が帰って来てしまったら逐一何があったか説明するような元気はなかったのだ。
何ごともなかったかのように事務所を片付け、慌しく雑居ビルを出ると、
一階の喫茶店ボストンの入り口に、カクテルグラスの絵のプレートが掛けられているのが見えた。
髭のマスターが脱サラして始めたこの店は、昼間は喫茶店で、夜はバーになる。
そのガラス戸から漏れる淡い光を見ていると、なんだか飲みたい気分になったので、そっと師匠にジェスチャーを送る。
0388非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/14(水) 00:07:18.81p
さすがにこのボストンでは小川所長に見つかる可能性があったので、別の店に行くつもりだったが、
師匠は背負ったリュックサックの肩口の捩れを直しながら、「用があるから」とそっけなく言った。
「僕も行きます」
嫌な予感がした。この人はまだなにかする気なのか。そんな予感が。
いや、正直に言う。黒谷に、夏雄に会わせたくなかった。少なくとも二人きりでは。今はだめだ。
「勝手にしろ」
歩き出した師匠を追う。打撲を受けた場所がきしみ、痛みが走る。だから今はだめだ。
深入りするな、と言われた。だから今はだめだ。
なのに助けられた。だから今はだめだ。
無力感が込み上げて来た。
だから今は。
「結構歩くぞ」
振り返って言う師匠に、「大丈夫です」と痛みを隠す。
歩きながら師匠は松浦のことを少し話した。西署の刑事に聞いたことを。
0395非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/14(水) 00:08:10.96p
「あいつは若いころ、日ごろからいがみ合ってた親戚筋の若い衆と、本格的にやりあったことがあった。
 攫って監禁してぶちのめしたらしいんだが、最終的に殺しはしなかったんだ。
 腕を一本もぎとっただけだった。
 だけど、そのもぎとるまでに腕の付け根を縛ってな。血を止めて腐らせたんだ。
 その腕に蛆の卵を埋めたらしい。孵化しなかったら、殺すって宣言して。
 その相手の男は、自分の腕の肉を喰い破って蛆の幼虫が顔を出すのを、ひたすら願っていた。
 まるで薬物中毒者が見るような悪夢を」
「男はどうなったんです」
「助けられた時にはおかしくなっていたらしい。残ったもう一本も、もぎ取ってくれと喚いていたそうだ」
蛆が出てくるからだ。そう思ったに違いない。
松浦の蛇のような冷たい顔を思い出して、背中におぞ気が走る。
そんな人間に。そんな人間と分かっていながら、師匠は怯みながらも決して引かなかった。
どうすればそんな師匠のようになれるのか。
僕はそのことを考えながら歩いた。
0401非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/14(水) 00:08:31.66p
繁華街を離れ、住宅街へと進む。路上に明かりは少ない。
時々ぽつりと立っている街灯が、リュックサックを背負った背中を浮かび上がらせる。
やがて古びたアパートの前で止まる。見覚えのないアパートだ。
師匠は一階の右端の部屋のドアをノックした。返答はない。しかし格子の嵌った小さな窓からは明かりが漏れている。
少し強く叩く。時間が過ぎる。
ドアがほんの少し開く。師匠はすぐに半歩分離れる。
「誰だ」
見たことのない男の顔が半分だけ覗いた。警戒した表情。師匠はにこりと笑って言った。
「松浦に電話してくれ。探偵が、田村と話をしたがっていると」
男はギョッとした顔をした。そこへ間髪入れず畳み込む。
「小川調査事務所の浦井だ。松浦と田村から聞いているんじゃないか。
 心配するな。石田組の人間じゃないよ。もちろん他の組でもない。こんなかわいいヤクザがいるか?」
師匠の軽口に、男は慌てたように「待て、少し待て」と言ってドアを閉めた。
混乱している様子だった。
0403非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/14(水) 00:08:55.64p
それは僕も同じだ。一体どういうことだ。ここに田村がいるのか。逃げているはずの田村が。
この男は誰だ?松浦との関係は?そもそもなぜ師匠が田村の居場所を知っているんだ。
唖然としていると、やがてドアが開く。さっきより大きくだ。
「入れ。二人だけだな」
男が警戒した表情のままそう言った。
「ああ」
師匠は顎をしゃくって僕を促す。そうして後に続いてアパートの部屋の中に入った。
玄関には靴が一足だけ転がっていたが、師匠はそれを踏み越えて土足のまま部屋に上がる。
僕もわけのわからないままそれに続いた。
台所の奥にあった居間は狭く、三人の男が壁際にいた。
ドアを開けた男と、もう一人見知らぬ男。そして田村。田村以外は靴を履いたままだった。
「よう。元気そうだな」
「ああ」
田村は後ろ手に縛られてしゃがんでいた。しかし不敵な表情をして口唇の端を上げてみせる。
0404非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:08:56.350
>>397
手動?
0407非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/14(水) 00:09:09.12p
「写真は渡したぞ」
「ああ、聞いた」
「悪かったな」
「仕方ねえよ」
田村はくくく、と笑った。
「俺もヤクザは嫌いだが、こうなっちまえば背に腹は代えられない」
「あんたらもヤクザか」
師匠は壁際に立つ二人の男に訊いた。どちらも油断なくこちらの一挙手一投足を見つめている。
「……」
男たちは曖昧に首を振るだけで答えなかった。
「松浦の子飼か。田村のことは石田組のやつらにも秘密ってことだな。
 心配しないでくれ。誰にも喋らないよ。あの男の怖さは知っている」
師匠は一方的にそう言って、田村に向き直る。
「このヤサが見つかったのはいつだ。今日の午前中、わたしに電話して来た時にはもうこいつらがいたんだな。
 電話は松浦の指示か」
「よけいなことは訊くな」
田村が口を開こうとすると男たちが鋭く制した。
0412非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/14(水) 00:09:39.01p
師匠は男たちを睨みつけてから、別のことを訊ねる。
「あの写真はどこで手に入れた」
今度は止められる前に、すぐ答えた。
「取材源は明かせない」
「なるほどな。守秘義務か。でもそれが通用していたら、こんなのん気な面会なんてできてないだろ。
 今ごろどこか誰も知らない場所で、腕に蛆虫の卵でもうえつけられてるはずじゃないか」
田村の顔から血の気が引いたのが分かった。
「やめろ」
壁際から男たちが一歩前に出る。
僕も師匠の前に立ち塞がるように足を踏み出した。まだ体中が痛いが、そんなことは一瞬頭から飛んでいた。
「ああもう、やめやめ。暑苦しい。おまえ、松浦に口を割ったな。でもそれで正解だ。投げちまえ、こんなヤバいネタ。
 多分おまえが思ってる以上に、この件は危険だ。化け物と蛇の喰い合いに巻き込まれるようなもんだ。
 おっと、分かった分かった。もう帰るよ」
詰め寄ろうとする男たちに師匠は両手を上げる。
「なあ、最後に一つだけ訊かせてくれ」
「なんだ」
田村は精一杯の虚勢を張って、後ろ手のまま挑発的に返事をする。
「おまえの死んだ兄貴なら、このネタ最後まで追ったのか」
驚いた顔をした後、田村はゆっくりと考え、そして素直にこう答えた。
「いや。手を引いただろう」
0416非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:10:19.45p
師匠は満足そうに頷いた。
「小川さんもだ。絶対に途中でケツまくってるよ。で、二人で肩を落として夜のボストンに行くんだ。ヤケ酒だよ。ツケで」
ははは。田村が笑った。
「そうだ。たぶんそうだ」
師匠も笑っている。
「解放されたら、今度飲みに行こうぜ」
「ああ」
田村は頷いた後、少し胸を張って「またな、バイトのお嬢さん」と言った。

そうして僕と師匠はその部屋を後にする。
無事に出られるような気がしなかったが、思いのほか二人の男は立ち塞がろうとしなかった。
代わりに師匠を呼び止めて、「あの人から伝言だ」と言った。仏頂面をしたままで。
「丸山警部によろしく、と。
 それからもう一つ、
 『素人やらせとくには惜しい。だが、こっちの世界に来るのはもっと惜しい。
 お互いに、いつの間にか背負っていたくだらないものを、いつかすっかり下ろしてしまったら、また話をしよう』」
師匠はその言葉に「ケッ」と顔をしかめて、踵を返した。
「待って下さい」
僕は後を追った。
なんの変哲もないアパートが遠ざかり、住宅街を元来たとおり歩いて行く。
民家の屋根が暗いシルエットを不揃いに並べているその向こうに、繁華街の明かりが薄っすらと見える。
僕は身体に響くのを我慢して足を速め、師匠の隣に並んだ。
「田村はどうしてあそこにいたんですか。松浦たちはずっと探してたんじゃないんですか」
師匠は足を止めずにボソリと答える。
「田村のとっておきの隠れ家だったんだろ。すぐにばれたみたいだけど。
0419非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/14(水) 00:10:33.02p
多分、石田組はこのことを知らないよ。松浦だけだ。知っていたのは」
「なんで松浦は、知ってて知らないふりしてたんですか」
「決まってるだろ。田村を見つけてしまったら、小川調査事務所に来る口実がなくなるからだ」
「は?どういうことですか」
「だから、松浦はわたしに、あの母親と子どもの写真を見せるためだけに、すべてを動かしてたんだよ」
唖然とした。信じられない。僕は空気が抜けたように笑った。
「仲間へのエクスキューズ。わたしへのエクスキューズ。そして恐らく自分自身へのエクスキューズ。
 馬鹿だなあ。馬鹿。ああいう勘違いした完璧主義者は、いつか大ポカをやらかすぞ」
「ちょっと待って下さい。
 今日の昼間に松浦たちが帰った後に、掛かってきた田村からの電話も、松浦の指示だったんですか」
0423非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/14(水) 00:10:59.51p
「多分な。
 石田組のやつらから逃げてた田村が、うちの事務所でわたしに写真を押し付けたとこまでは、仕込みじゃないだろう。
 で、その日の夜だかに、隠れ家が松浦の個人的な網に掛かってしまって、とっつかまったんだ。
 わけも分からないまま写真を持っているわたしは、田村から連絡がない限りあそこを動けない。
 だから、松浦はあの電話を掛けさせた。
 怯えてる。もうしばらくは連絡もないだろう。わたしにそう思わせて、依頼の方に取り掛からせたんだ」
「でもなんで、そんなことが分かったんです」
「なんでだと思う?」
分かるわけがない。さっぱり分からない。
「松浦が、わたしに『老人』の顔が潰れているとは言え、角南家の別邸だと分かる写真のコピーを預けた時点で、
 写真自体が偽造で無価値なものだと断定できているって話はしたろ。
 もちろん実際は、それが心霊写真だろうがなんだろうが、だ。
 でもそれだと、まだ論理に瑕疵がある」
「瑕疵、ですか」
こんな無茶苦茶な話にそんなもの一つや二つあったところで、という気がしたが、「それはなんです」と訊ねた。
「写真が一枚とは限らないってことだ」
「え?」
0425非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロ)
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2018/11/14(水) 00:11:20.30p
驚いた。全く考えてなかった。
「あの一枚だけなら、死んでいるはずの正岡大尉が写っているという事実で、偽造を主張できるけど、
 もし他に、正岡大尉が写っていない写真が現存していれば、話が変わってくる。
 そしてそれを田村が持っていたとしたら、写真の持つ毒性は復活するんだ。
 次の衆議院議員選挙に出るっていう、角南家の秘蔵っ子の命取りになりかねない、スキャンダルの元がな。
 角南家を強請るにしても強請らないにしても、写真自体は握りつぶす腹の石田組が、
 そんな危険な写真を、わたしなんかに預けて出歩かせると思うか。
 どこからどういう噂が立つか分からない。
 わたしが持っているコピーのオリジナルが偽造だとしても、
 偽造ではない、少なくともそう断定できない別の証拠写真がどこかにあるんなら、
 そんな噂ごときでも危険性が跳ね上がるんだよ」
0429非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロ)
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2018/11/14(水) 00:11:40.96p
それに、わたしならこうする。と言って、師匠は何かを破るジェスチャーをする。
僕はハッと気づいた。というか、なぜ今まで気づかなかったんだ。
正岡大尉がいる左端を破れば、偽造問題の根拠がなくなるじゃないか。
一部が破損していたとしても、後のフィクサー、角南大悟が消えた大逆事件に関わっていたという、
揺るがし難い証拠写真になってしまう。
「松浦が、そんなことに気づかない男とは思えない。
 そんなやつがわたしにコピーを預けたんだ。田村はすでに手の中に落ちてると考えていい。
 あの時点でもう、スキャンダル写真の問題は解決していたんだよ。
 後はすべて松浦の手のひらの上だ。わたしも含めてな」
忌々しそうに師匠は吐き捨てる。
そうか。
田村を捕らえて、写真の入手先のことを吐かせた上で、他の写真の存在などの問題をクリアできると判断したのなら、
残る不確定要素は師匠の持つコピーと、そしてオリジナル写真だけだ。
「今日の午前中に、松浦がうちの事務所にやって来る前に、すでに田村は吐かされてるんだから、
 当然、わたしがオリジナル写真を持っていることは知っていた。
 知っていて泳がせていたことになる。もちろん監視つきだ。尾行していたのがあの茶髪のチンピラだけとは限らない」
「なんのために」
0431非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロ)
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2018/11/14(水) 00:11:51.77p
答えは最初から出ていた。そこに戻るのか。馬鹿な。
「あの母親と子どもの写真を鑑定させるためだ。松浦とわたしにとって、自然な形でだ」
なんなんだ、あのヤクザは。
いや、ヤクザの範疇を逸脱しているとしか思えない。
かけている天秤が全く釣り合っていないことに気づいていないのだろうか。いや、釣り合っているのか。やつにとっては。
異常だ。どこか故障しているとしか思えない異常さだった。
こっちの頭がおかしくなりそうだ。
最後に残っていた疑問をようやく口にする。
「どうして田村の隠れ家が分かったんです」
日中、僕とずっと行動していたのだから、
おそらく寺から戻って来て二手に分かれた後に、どこかで情報を入手したのだろうが、
石田組にも知られていないあの場所をどうして知ることが出来たのか、不思議でならなかった。
0433非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロ)
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2018/11/14(水) 00:12:07.59p
ところが師匠は、驚くようなことを言った。
「知ったのは今日の朝だよ。お前もいた時だ」
今日の朝だって?
それは小川調査事務所で朝から用もなくデスクに肘をついていた時のことか。一体その時どうやって?
「服部だよ。あの根暗野郎。昨日田村が腹を刺されてうちに転がり込んで来た時、いつの間にかいなくなってたろ。
 あいつ、田村が出て行った時、どこかに隠れててそのまま尾行したんだよ。
 大した理由もなく。なんとなく、とかで。変態だ、変態。所長に尾行のテクを褒められていい気になってんだ。
 多分、事務所に『田村が見つかった』って電話したのは、服部だ。
 ヤクザどもが田村を追ってるのに気づいて。うちの事務所もやばい状態になってると考えたんだろ。
 助け舟のつもりかあの野郎」
師匠が日ごろ本人に面と向かって言わない辛らつな言葉を吐きまくる。
「で、追っ手から逃げ切った田村が、隠れ家に入ったところまで見てたんだよ。
 それであいつどうしたと思う?
0437非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/14(水) 00:12:27.20p
今朝、所長から電話があっただろう。 田村が捕まってなかったから、石田組のやつらが来る前に帰れって。
 それであの根暗、ワープロ立ち上げたまま帰ったろ。
 消そうとして画面見たら、田村の名前と住所が書いてあったよ。
 クソったれ。所長に報告せずに、わたしに投げたんだ。
 おかげで振り回されて散々な目に合ったよ」
散々な目にあったのは僕もだ。だったら今日、最初から師匠は田村の居所を知っていたんじゃないか。
もうなにがなんだか分からない。
「田村が松浦の網に掛かった後、別の場所に移された可能性も高かった。
 でもこの隠れ家が、石田組の網からは完全に外れているとしたら、そのままそこに監禁している可能性もあった。
 五分五分といったところか。無駄足にならなくて良かったよ」
あいつも多分、腕の一本も落とさずに済むんじゃないか。師匠は無責任にそう言う。
僕は足元に転がっていた空き缶を蹴飛ばした。勝手にしろ、という気分だった。
一歩進むたびに、身体のどこかが痛かった。そのたびに、苛立ちが募っていく。隣の師匠の方を見たくなかった。
0440非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロル)
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2018/11/14(水) 00:12:42.81p
そして一歩進むたびに、その苛立ちが、
師匠と夏雄が一緒にいるところを見るたびに感じているものと同質のものではないか、という気がしてきて、
余計に僕の心はかき乱される。
師匠は多分、松浦の冷酷な瞳の後ろに広がる虚無に、ひかれている。
ヤクザであるあいつが嫌いだという事実と同じくらいの確かさで。
そのことが、どうしようもなく僕を苛立たせるのだった。
『私が見ている世界は、あなたの見ている世界と似ているだろうか』
頭の中で、松浦の去り際の言葉が繰り返し再生される。
繰り返されるたび、その言葉の音色は希薄になり、やがて意味だけが残される。
僕は行く手に伸びる暗い夜道をじっと見据える。僕らのほか、歩く人の姿はない。
だがその光景も、師匠の目には全く別の様相を見せているのかも知れない。
無数のうつろな人影が闇に漂う不確かな光景が……
アキちゃんの見る世界。師匠の見る世界。松浦の見る世界。そしてこの僕の見る世界。
どれが正しいなんてことは、きっとないのだろう。
ただどれも少し似ていて、そして違っているのだ。
『お互いに、いつの間にか背負っていたくだらないものを、いつかすっかり下ろしてしまったら、また話をしよう』
去り際の言葉が消えていった後で、入れ替わりに松浦の最後の伝言が脳裏をよぎった。
0443非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロ)
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2018/11/14(水) 00:12:57.50p
馴れ馴れしい言葉だ。素面でよくこんなセリフを吐けるものだ。
苛立ちが再び湧き上がる。
しかし僕は、その言葉の中に微妙な違和感を覚えていた。
なんだ。なにが気になるんだろう。なにかがぴたりと嵌った感じ。あまりに状況を射抜いているような……
そこまで考えた瞬間、僕は立ち止まって師匠の背中を指さしていた。
師匠は怪訝な顔をしていたが、すぐにハッと気づいたように背中のリュックサックを下ろした。
焦ったのか、ジッパーを開けるのに手間取る。
そしてようやく差し入れた手が中を探り、また出てきた時には白い封筒が握られていた。
封筒はかなり厚い。簡単には折れないくらいに。
師匠は歯軋りをして、複雑な表情を浮かべたまま呟いた。
「下請けの下請けをやってるような零細興信所の規定料金、買いかぶりすぎだ」
いつの間に入れたんだ!
僕は驚愕する。
0445非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:13:05.350
平成30年11月12日

株式会社Cygames
取締役 木村唯人様
ならびにグランブルーファンタジーに携わっているスタッフの皆様

反省文

 このたびは、外部ツールviramate、CheatEngine、GranblueAccelerator、Mygranble、GBFsupporter、Orcheed、Lryia、グラブルマルチバトルツール、Zooeybot、Sarasabot、pokerbotを使ってしまい、誠に申し訳ございませんでした。
 とても不便なUIでユーザーである私たちを何時間も遊ばせてることでもっと楽にプレイしたいと思ったことが直接の原因です。
 Twitterで何度も外部ツールに関するアナウンスされている時点で、すぐにでもツールを削除し使用中止すべきだったと深く反省しております。
 前回BANされなかったので削除を躊躇してしまったのですが、結果としてグラブルに一日何十時間もの時間をかけていること知り、自らの甘さを痛感いたしました。
 今後はこのようなことがないよう、スマホの使用徹底に心がけます。また、古戦場に挑む際には、ツールに頼らずカフェインを大量摂取し肉稼ぎを心がけたいと存じます。
 二度と同じミスを犯さぬよう明日にでもパソコンは処分する所存です。本当に申し訳ございませんでした。

今後は二度と違反行為を今後行わない事に同意します。
 ID番号 村民



https://dotup.org/uploda/dotup.org1691508.jpg
0448非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/14(水) 00:13:20.18p
さっき事務所でテーブルに写真を並べて話し合っていた時だ。それしか考えられない。
リュックサックも確かに口を開けたまま近くに置いていた。しかし僕も師匠も全く気づかなかった。そんなそぶりさえ。
ぶつかりざま、写真を師匠の服に滑り込ませた田村とは全くレベルの違う技だ。
師匠は抑え切れない怒りを全身に漲らせ、リュックサックを背負いなおす。
「化け物に、喰い殺されろ」
押し殺した声でそう吐き捨てると、足を強く踏み鳴らしながら歩き出した。
後を追う僕の目の前に、一万円札がひらひらと舞いながら落ちて来る。宙に放り投げられた、くだらないものたちが。
何枚あるのか、数え切れない。
そんなものが舞う、街の明かりが遠く幻のように見える暗い道を、僕らは振り返らずに歩いた。
0454非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:13:45.820
広江礼威、来春ゲッサンで戦場描く新連載!「ブラック・ラグーン」新刊は来週発売

「ブラック・ラグーン」の広江礼威による新連載「341戦闘団(仮)」が、2019年春にゲッサン(小学館)にてスタートする。
「341戦闘団(仮)」は、戦場で命を散らす若者たちの青春戦争活劇。大国同士の戦火渦巻く最前線、大地を驀進する戦闘団の陣頭に“その人”はいた。
なお11月19日には月刊サンデーGX(小学館)で連載されている、「ブラック・ラグーン」の約4年半ぶりとなる新刊11巻が発売。通常版に加え、「ロアナプラお土産セット付き」の限定版も同時発売される


うおおおおおおお
0462非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:14:28.750
誰の何にキレてんのかわかんないところ草
0467非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:14:46.040
ササ消えたな
0470非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:14:58.360
DOとアーカルム触った時はグラブルがちで終わるんじゃねーかと思ってた
0486非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:16:39.550
>>454
ロシアババアの話か?
0505非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:18:24.840
HRT時代はスレンデとコロマグがクソだクソだとぐちぐち言ってた記憶くらいしかない
0514非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:19:17.070
康一のせいにして作り直したのにまたゴミだしてきた哲也さんw
0519非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:19:32.960
>>513
いやーw
0528非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:20:00.100
スカイジャーニー
0536非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:20:59.090
ビシージもビシージで処理落ちしたりしてゲームとして微妙だったよな
人が集まると透明化したり
0537非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:21:01.440
ブレクソはほんと何一つ面白くない
β版って付けてるから許してみたいな雰囲気出そうとしてるけど調整してこれが面白くなるとはとても思えない
0544非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:21:36.400
まずは本編から派生した作品「スカイジャーニー」について発表があった。「グランブルーファンタジー」の世界のスピンオフ作品となっており、現在のゲーム画面とは全く異なったゲームになるという。
仲間になったキャラクターを好きに主人公にできる。サイドストーリーをもつRPGで、絶賛開発中。年末頃にはゲームの概要が発表できる予定だというので、楽しみに待っていよう。

ゲーム本編に登場する新たなコンテンツとして紹介されたのは“ディフェンドオーダー”。突発的にモンスターが攻め込んでくる大規模マルチバトルで、数日間隔で行われるとのこと。
ゲーム内の常設コンテンツとして追加される。ディフェンドオーダーでの特別の報酬もあり。2周年までに実装を目指しているそうだ。

新イベント”アーカルムの転生”についても紹介。10体の星晶獣と契約者とのストーリーで、毎月更新される予定。複数のグループで行うバトルで、イベント開始時にどの契約者とのストーリーを進めるかを選ぶことができる。
それによりその契約者と対になる星晶獣を入手できるとのこと。
0550非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:22:28.870
パンツ工場長草
0552非通知さん@アプリ起動中 (ササクッテロラ)
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2018/11/14(水) 00:23:12.09p
https://twitter.com/harutakoichi/status/1062358753435996160?s=21

まぁ、何も言うまい。
言いたいことはたくさんあるけど。

本当にそれでいいのか。仲間との協力を、仲間との想いを、仲間との絆を。

ゲームが楽しいって思える気持ちを。

やることはやる。それはゲームのためではなく、仲間のため。そのギャップを分かって欲しい。
https://twitter.com/5chan_nel (5ch newer account)
0561非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
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2018/11/14(水) 00:24:05.160
>>555
ソーンとシルヴァの合体技
0569非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:24:35.870
汗が精子臭いんだが
0579非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:25:53.210


例えばその圧倒的な映像クオリティー でアニメファンを驚かせたCygamesの 『神撃のバハムート GENESIS』。
通 常をはるかに上回る予算で制作されている。
ビデオソフトがヒットしたとは 聞かないが、同社がゲーム広告に投じ る予算に比べればアニメ製作は大きな 負担ではないとみられる。

ビデオソフトがなくても、業界はうまく回るよう にもみえる。
0588非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:26:52.080
春田は夢を見させることだけは一流だが
実態が伴わない
0593非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:27:36.020
康一のアーカルムに対しては作り直せ(まともに遊べるように調整しろ)って思ったけど
キムカルムに関しては一生ゲーム制作に関わって欲しくない気持ちしか抱かなかった
0610非通知さん@アプリ起動中 (アウアウエー)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:28:41.55a
>>572
だって戦闘しかやってなくてRPGじゃないもの
シナリオ見てくれないから不貞腐れたとか言うけど、
RPG作る自覚あるなら話をちゃんと作って、
それに沿ったゲームシステム作らないとこうなるのは必然なんだわ
0612非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:28:49.500
みんなファバロの活躍を楽しみにしてた
アーミラをなんとかするのかと思ったら?
0622非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:29:30.930
>>617
いやーいないですw
0629非通知さん@アプリ起動中 (スッップ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:30:17.58d
グラフェス嘘松トリオやなこれは間違いない
0631非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:30:46.330
Pの仕事って予算取ってきたりゲームの先の事についての展開についてこう言うの作りましょうとか言ったり広報だったりでしょ
実際に現場仕切ってゲーム内容作るのはDの仕事だよ
0634非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:31:26.960
正直エレシュキガルも1日か2日で落ちると思うよ
あいつもアビーと同じでガチャは盛り上がったけどそれから1年全く使いどころなかったからね
アビー以上に空気化したしみんな気持ちが冷めてる
0639非通知さん@アプリ起動中 (スッップ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:31:37.57d
>>625
アビー復刻だと一回も1位取れてないから死亡やな
0648非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:32:44.390
ニートとかロスいから無理
0656非通知さん@アプリ起動中 (スッップ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:33:25.64d
はるたそどうしたの?
カバオがゆるせないの?
0669非通知さん@アプリ起動中 (スッップ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:34:22.22d
>>618
そのクソゲーで動画作ってるってマジ?
0746非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:41:17.890
色々やったみたいだけど古戦場でツーラーがイキってたら草だよね
0768非通知さん@アプリ起動中 (JP)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:42:53.90H
みにゅりん
@rinrin6161

気になる男の部屋に初めて行った時 「ゴムある?」 って聞いてみて

もしコンドームを出されたら ソイツはヤル気マンマンなので帰った方がいい

もし、ヘアゴムを出されたら ソイツからは女の匂いがプンプンするので帰った方がいい

もし、輪ゴムを出されたら ソイツは安全だから残っても大丈夫
0774非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:43:43.460
天上団の団長までやって最後は不正BANは草
オラ不正してねぇって団長に訴えてなら団長が運営に掛け合うと頑張りだして慌ててる奴も草
あほしかいねぇ
0777非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:44:14.670
春田康一@HarutaKoichi

まぁ、何も言うまい。
言いたいことはたくさんあるけど。

本当にそれでいいのか。仲間との協力を、仲間との想いを、仲間との絆を。

ゲームが楽しいって思える気持ちを。

やることはやる。それはゲームのためではなく、仲間のため。そのギャップを分かって欲しい
0801非通知さん@アプリ起動中 (JP)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:47:03.08H
精力剤飲んだらキンタマカッカして寝れん
0814非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:48:05.060
自身が治める筈だった国を他国に占領され父親は知らない間に殺され婚約者を目の前で何も出来ずに殺された王子に向かって
「今一番つれぇのは目が見えなくなったイグニスなんだぞ!」
はないでしょ
0845非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:51:10.230
ノクトはまぁ投げ捨てていいから
ルナフレーナを最期のDLCにするべきだったよな

何でアーデンさんなんだろうな
まぁヒスゴリより好きだけどなアーデンさん
0862非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:52:50.590
木村唯人@KimuraYuito
ついでにこの流れで言うけど近畿大のスマブラ部の加納くんは
おれの下品ななりすましアカウントを運営してて卒業できるか心配に思う。
そしてこのツイートはすぐ消す予定


下品とはこれである

木村唯人名言bot? @KaoKimoi_Munou 10月7日
学生時代、授業中キンタマの裏ずっと触ってたらイジメられましたね?。
その腹いせに作ったのがシャドウバースです。

木村唯人名言bot @KaoKimoi_Munou 48 分48 分前
ほおれ二丁挿しぃ!!...イグッ!!

木村唯人名言bot? @KaoKimoi_Munou3 時間3 時間前
おじさんの固いの当たってるの...わかるか?イグッ!!
0902非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:57:17.930
>>891
なにこれww
0913非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 00:58:18.550
この文見る限りグラブルのライターより文才あるよね?

学生時代、授業中キンタマの裏ずっと触ってたらイジメられましたね?。
その腹いせに作ったのがシャドウバースです。
0946非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 01:01:59.120
全部阿部が悪い
0973非通知さん@アプリ起動中 (ワッチョイ)
垢版 |
2018/11/14(水) 01:03:51.370
まあ貼ってあるツイートより酷いのいっぱいあったからなあ
哲也とか春田も絡みで出てきてたし、自分一人じゃないから法的措置の踏ん切りついたのでは
10011001
垢版 |
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10021002
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