ずいぶんと前に亡くなった祖母は旅が好きだった。見知らぬ景色。見知らぬ人々。見知らぬものとの出会いが大好きで——
高い天井で育てば背が伸びると言うように、世界を広く持つことが、人を大きくするのだと——
そして中年期アラサーの夏休み、私も遠くへ旅に出る。家族サービスなのだけれど、これも旅には違いない。
車を乗り継いで、私たちは南の海へ。飯と水着をかばんに詰めて、島を望む岬の山門へ。そこで私が出会うのは——
月の満ち欠け、潮の満ち引き、水面を乱す宿命の周期めぐり —— 瑠璃の宮処にまどろむ龍の、いざなう嵐に私はあらがう。