その化け物が吉野を追いかけないことを確認すると
沙織も織田たちを置いて立ち上がり逃げ出した

しかし、時間は既に18時

外も薄暗くなっており、病院内は真っ暗に近い状態になっていた

吉野の姿はもう見えず、少しでも光の見える方へがむしゃらに走った

その時

…ガシャーン

沙織は廊下に放置してあった車椅子に脚を引っ掛け、転んでしまい、気を失った

どれくらいの時間が経っただろうか

気がつくと、沙織は真っ暗な闇の中に居た

「なにも思い出せない…」

ズキっ

仰向けで寝ていた状態から身体を起こすと、お尻が少し傷んだ

「私、何してたんだっけ…」

手探りで床を触ってみると、ゴワゴワした手触りの何かの上に居た。そして、少しざらついている

とりあえず、暗いので携帯を探してみる
それはポケットの中に入っていた

急いでライトを付けてみて声を上げた

「ひぇっ…」

そこは病室だった
沙織が寝ていたのは、古びたボロボロのベッドだ

そう認識した途端、肝試しで廃病院に来ていたこと、恐ろしい思いをした事を思い出した

「みんな…いないの?…」

あの化け物に聞こえないように、仲間には聞こえるように、小さい声で呼んでみたが返事は無い

「ふぁ…なんで……ぐっ…」

沙織は声を出来るだけ抑えて泣いた
怖くて動くこともできない
携帯のバッテリーもあと半分しか無い
体育座りをして出来るだけ小さくなって泣いた

何も聞こえない、静かな部屋が恐ろしかった