>>361-363
訴えが妄想か事実かは、多方面から情報を聴取し、かつ現代社会の常識に照らして推測して判断します。
だからおっしゃる通り、突拍子もない訴えでも、実は本当だった−ってことがたまにあります。

以前、「誤診」を糾弾する記事でこんなのを見かけたことがあります。
とある中年男性が「だれかにつけられている」とノイローゼになり統合失調症と診断された。
しかし服薬を開始しても症状は一向に良くならない。
そこでその男性は、コラムの著者である自称名医のもとを訪れた。
その医者がよくよくその男性からお話を聞いたところ、男性は以前商売でソ連への駐在経験があり、
あとをつけているスパイは実在した(!?)、患者の話をよく聞かないから最初の医者は誤診したんだ、
というのが、その記事の結論でした。
ある意味ではごもっともな指摘です。

ただ、一般の方向けの記事だったからでしょうが、論点としては片手落ちです。
そもそも医師は探偵じゃありませんので、スパイが実在するかどうかなんてどうでもいいんです。
診断の上でもっとも重要なのは、そう考えるに至った思考過程が、常識に照らしてまっとうかどうかです。
専門用語で言えば、「了解可能性」であり、「真性妄想/二次妄想」の区別です。

最終的にはそれを、その他の症状[抑うつとか物忘れとか]や、その文化的な常識[宗教的なものを含む]と
組みあわせて、総合的に判断して、診断を下すわけです。