越前福井藩に双子六兵衛というめっちゃ弱い侍がいた。
臆病者で知れ渡っていてこのせいで妹の縁談の話も来ないぐらい。
あるとき、三国一の武芸者仁藤昂軒が藩に指南役として召抱えられたものの、揉め事があり藩士を切り殺してしまった。そしてそのまま行方をくらませたのだった。
怒った殿様は上意討ちを命じる。
しかし藩中誰も名乗りをあげない。
その時、双子六兵衛が臆病者の汚名をすすぐために上意討ちの刺客に名乗り出たのだった。

六兵衛は急ぎ旅支度をして武芸者を追った。
しかし相手は武芸の達人仁藤五郎太夫昂軒。
六兵衛の腕では到底勝てる相手ではない。
ある時、昴軒ににらまれ、思わず「人殺し!!」と叫んだ。すると周囲のみんなが慌てて逃げだす。
これ見て「この手でいこう」と固く決意する。
昴軒が立ち寄る宿屋、飯屋、茶店、すべてで「この侍は人殺しだ!」と叫びまくる。
六兵衛のあまりのしつこさに辟易する昴軒。
堪らず追いかけるがこの六兵衛、足だけは異様に速かった。

ついに昴軒 精魂尽き果てて言った。
「俺はもう生きるのが嫌になった、ここで腹を切る。」
急な展開に六兵衛は驚く「ちょ、ちょっと待ってください。勝手に腹を切られるのは困ります。」
昴軒は眉を顰める。「では、俺と仕合うか?」
六兵衛は飄々と答える。「滅相もない、私があなたに勝てるわけがないじゃないですか。」
昴軒は刀を置きつつ聞いた。「では俺はどうすればよいのだ!!!!!」
我が意を得たりとニンマリとした六兵衛、ついぞ見せたこともないようなふてぶてしくも炯々とした眼光を昴軒に向けた。「あなた様は武士をお捨て下さい。私にあなたの髻を切らせて下さい。そうすれば私は上意討ちを果たしたことになります。」
六兵衛は昂軒の髻を切り落とした。

天下の臆病者双子六兵衛w
見事に上意討ちをはたせりwww