
廃校活用しトラウトサーモンを養殖
団体の新たな取り組みであるトラウトサーモンの養殖事業は「障がい者が第1次産業を支える仕組みをつくれないか」との思いから生まれた。2022年に試験的にスタートした同事業は、ピヴォットの喜多島恒幸本部長が専任する。
喜多島本部長は、高階層建物などの給水ポンプ設備の会社に勤めていた経験から、水を供給する仕組みに精通。民間の養殖施設を視察後、廃校校舎内に地下水のくみ上げポンプ、給水システム、ろ過装置などを独学で作り上げた。
設備には廃品回収で集まったユニットバスや物干しざおなどの廃材を一部再利用し、費用をかけないのがモットーだ。
魚への餌は、喜多島本部長がさまざまに試して評価が良かったものを独自に開発し、飼料会社へ特注依頼している。ワクチンは使用せず、魚自身の抵抗力を育む。池入れする稚魚は、大山や霧島などの有力産地から15〜20センチの
魚200尾を仕入れ育成していく。初年度は全てへい死させたが、原因を探り、魚がストレスなく泳げる直径3メートルの円形水槽を導入するなどの対策を施した。これが功を奏し、翌年の2023年は85%、2024年は93%と極めて
高い歩留まりで飼育を成功させた。今は試験段階だが、魚は1年で全長60センチ(重量2キロ)を出荷サイズと見通している。
給水は地下からくみ上げた淡水を利用してかけ流しする。給餌は1日に2回、槽内の清掃も同じく2回行う。「お金をかけずに手間をかけている」のが、ここの養殖スタイル。障がい者は、ろ過フィルターの洗浄や水槽周りの掃除、
給餌などを担当する。「魚も生き物。生死を学ぶ機会にもなる」と喜多島本部長。
今後は、水槽を採算ベースの4基まで増やし、将来的には8基で5000尾の生産を目標に掲げる。一柳代表は「北九州市で生まれた“関門サーモン”として、地域に愛される魚を障がい者らと一緒につくりたい」と目を輝かせる。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2d982f7cb6c537b7f6ed5f54b86d785cab2f79cf?page=2