中国は2024年、多くの国に対してビザ(査証)要件を緩和するという前例のない措置を講じた。現在は19億人の潜在的な訪問者に対して門戸を開放している。しかし、実際に訪れた観光客は期待を大幅に下回っている。
 外国人観光客の大量流入およびそれに伴う多額の消費は、全く実現していない。政治や貿易を巡り中国と対立することが多い米国や大半の西欧諸国の訪問客は、中国を敬遠している。その代わりに同国を訪れているのは、近隣のアジア諸国や比較的規模が小さい途上国からの観光客だ。
 ブルームバーグ・ニュースが直近の入手可能な政府データを分析したところによれば、24年1-9月の中国への外国人入国者数は計2300万人弱。これは23年の低いベースの約2倍であるものの、19年の同時期の水準の63%にとどまり、中国当局が期待していた完全に近い回復からは程遠い。
 その理由は多岐にわたる。外資系航空会社の国際便の大幅減少、経済・政治関係の変化、欧米諸国での中国のイメージ悪化などだ。
 この影響によって、中国の景気下支え・投資促進能力は制限されるだろう。また、トランプ次期大統領のホワイトハウス復帰で再び緊張が高まる前に、外国に対してイメージ改善をアピールする機会を失うことになる。