
「祖国へ帰れ」というネット投稿を差別と訴え、違法と認める判決を勝ち取った在日コリアンの崔江以子(チェカンイヂャ)さん
(51)の裁判を記録した本の出版記念集会が、川崎市内で開かれた。
執筆した崔さんや弁護団が登壇し、判決後もネット上で在日コリアンや埼玉南部のクルド人へのヘイトスピーチが続いていると指摘。
止めるための差別禁止法が必要と訴えた。(安藤恭子)
◆裁判後も続くヘイト…送検されたのは少年だった
本は「『帰れ』ではなく『ともに』―川崎『祖国へ帰れは差別』裁判とわたしたち」(大月書店)。12日の集会には約140人が参加した。
川崎・桜本の共同学習の場「ウリマダン」に集まる在日のハルモニ(おばあさん)たちが動画でメッセージや歌を贈り、
「裁判に勝って良かった」「子どもたちがこの国で生きていける」と祝福した。
90代のハルモニは「嫌というほど民族差別を受けてきたのに、今さら帰れ、殺す…。ヘイトスピーチがひどくなった。
私たち日本でまじめに働き、ちゃんと生きています。許されていいのでしょうか」と訴えた。
崔さんは「『帰れ』という言葉を投げ付けられてきた、みんなの勝利と思っています」と受け止めた。
裁判では、ネットのブログで4年以上にわたり誹謗(ひぼう)中傷をされ精神的苦痛を受けたとして、茨城県の男性に損害賠償を求めた。
昨年10月の横浜地裁川崎支部の判決は「日本国に仇(あだ)なす敵国人め。さっさと祖国へ帰れ」と記した投稿は
ヘイトスピーチ解消法に基づく差別的言動で違法な権利侵害に当たるなどとして、慰謝料194万円の支払いを命じた。
この判決が確定後も、崔さんのネット被害は続いた。今年2月に掲示板に名指しで「日本から出ていけ!」というタイトルのスレッド
(書き込む場所)が立てられ、「消えろ」「汚物」など200余りの差別と侮辱を投稿された。
崔さんは刑事告訴をしたが、9月に侮辱の疑いで書類送検されたのが少年と分かり、衝撃を受けたという。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/361307