■テロ攻撃を1年以上前から把握

 ネタニヤフ政権が「テロ計画を知っていた」という衝撃的な事実は、イスラエルの有力紙ハアレツが11月24日に報じた。それによれば、イスラエル軍は数年前に最初の兆候を入手し「1年以上前には、完全な攻撃計画が明らかになっていた」という。

 ニューヨーク・タイムズは6日後の30日、攻撃計画の全容を報じた。同紙が入手した「ジェリコの壁」と呼ばれる文書によれば、ロケット砲による砲撃から始まり、ドローンで監視塔のカメラや自動機関銃を破壊、パラグライダーやオートバイ、徒歩で住民や兵士を殺害していく計画だった。

 これは10月7日に実際に起きたテロと、ほとんど同じである。

 文書は、イスラエル軍の規模や配置、通信連絡基点の場所も正確に記していた。イスラエル軍から機密情報が流出していた可能性も浮上している。イスラエルが、どうやって攻撃計画の文書を入手したか、も不明だ。双方のスパイが暗躍していたのかもしれない。

 ハアレツやニューヨーク・タイムズが報じた背景には、ネタニヤフ政権に打撃になる内部告発が相次いでいた事情がある。

 最初は、11月20日にハアレツが報じた女性兵士たちの告発だった。ガザ国境近くの監視塔で、ガザ内部の状況を監視カメラで警戒する女性偵察兵たちは、数カ月前から「異変」に気づいていた。

■軍事情報機関研究部門の責任者が暴露

 男たちが監視塔や戦車の模型をドローンで攻撃したり、国境フェンスまで走って何分かかるか、ストップウオッチで測っていた。戦車の兵隊を拘束するリハーサルもしていた。また、高級車に乗ってやってきた覆面姿のハマス高官と思しき男たちが、現場で何かを相談している様子も目撃された。

 彼女たちは上層部に異変を報告したが、無視されてしまった。

 それだけではない。軍はテロ前夜、国境を守る特殊部隊を増強したが、最前線にいる彼女たちには、それを連絡しなかった。結果的に、彼女たちは無防備のまま、テロに遭遇し、数十人が殺されたり、誘拐されたりしてしまった。彼女たちは、そんな一部始終を匿名でハアレツに暴露したのである。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d277a73001ce17187f0a64f1298526e343d4474f