【北京時事】東京電力福島第1原発の処理水が海洋放出されてから、24日で1カ月。中国では国営メディアが連日「核汚染水」と報じ、日本製品の買い控えが広がった。一方で、水産物などの需要落ち込みは中国の業者も直撃。低迷する自国経済に打撃として跳ね返っている。

 「日本の商品は扱っていない」。中国の商品販売サイトにはこんなただし書きが記載されるケースが出ている。ある出品者は「少しでも売れるようにするためだ」と話した。

 中国政府は処理水を対日圧力のカードに利用してきた。国営メディアは8月下旬、放出に反対する専門家の見方を集中的に報道。日本産水産物の全面禁輸も発動した。8月の日本産魚介類の輸入額は前年同月比70%減と、7月の33%減からマイナス幅が拡大した。北京市の日本食レストランの経営者は「客足は以前の半分程度だ」と肩を落とす。

 もっとも、影響は中国政府の予想を超えて広がったもようだ。日本製品の不買に加え、日本人学校に石が投げ込まれる事件が発生。塩の買い占めも起き、業界団体が「食塩は安全だ」と呼び掛ける事態につながった。

 北京市内の京深海鮮市場を22日に訪れると人影はまばら。ある男性店主は「日本産は扱っていないが、売り上げは8割減った」と話した。中国メディアは漁業者の生計に「不確実性が高まっている」と報道。処理水関連のニュースは9月以降、顕著に減っており、水産関係者は「政府が騒ぎ過ぎた」と恨めしそうに話した。

 8月下旬に予定されていた公明党の山口那津男代表の訪中が直前に延期されるなど、政治外交面の影響は大きい。一方、景気が冷え込む中で、中国政府は経済的な悪影響を避けたい考えで、対日ビジネスは引き続き強化する方針だ。

 だが、日本企業の間では中国への不信感が高まっている。北京の日系食品メーカー幹部は「このままでは将来の投資計画に影響が出るかもしれない」と顔を曇らせた。

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