父は4、5本のタバコにまとめて火をつけて…
 しかし、私の前に立つと、なぜか父はニッコリと満面の笑みを浮かべているではないですか。

「そうですか……、タバコを吸ったんですか……」

 やけに丁寧な口調が、恐怖心を倍増させます。

「タバコはおいしかったですか?」

 わざとらしい口調で、私に聞いてきます。なんと答えていいものか言い淀んでいると、「おいしいから吸ったんですよね」とねちっこく質問を重ねてきました。初めて見る父の姿に戸惑い、固まっていると父は予想だにしない行動に出ました。自分のタバコに火をつけると、私にくわえさせたのです。

「お兄さん、もっと吸ってみたらどうですか?」

 そう言うと、父は4、5本のタバコにまとめて火をつけて、私の口に押し込んできたのです。私は苦しくて、大きく息を吸い込みました。その時、肺に強烈な痛みを感じました。呼吸をしたタイミングで、タバコの煙を吸い込んでしまったようです。私は思わずタバコを吐き出し、涙を流してむせてしまいました。

「な? わかったやろ。タバコなんてロクなもんやないんや。美味しくないやろ? だから、大人になるまで吸うたらアカン!」

 父はピシャリと言いました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4d1439031c51c534ecf4245f13c9524b5f053ea3?page=3