夫の一匡さんは九州大学卒業後、本田技術研究所に約40年勤務し、長年、自動車の安全に関する研究を続けてきたエンジニアでした。
自身でまとめたワークシートの中に、『2050死者ゼロ目標に感銘を受け、何とか実現させたいともがく日々』という記載もありました。
*「2050死者ゼロ」に関しては、以下の記事を参照
Honda | 2050年交通事故死者ゼロに向けた、先進の将来安全技術を世界初公開
それだけに、多恵子さんは悔しさがこみ上げると言います。
「主人は車の安全についての研究が主な仕事でした。歩行者の安全、同乗者の安全など、多方面からホンダの掲げた交通事故ゼロの目標に向けて、日々取り組んでいました。交通事故被害をなくすため、信念を持って仕事を続けてきた人が、こんなかたちで、無謀な運転によって一方的に命を奪われるとは……。主人の気持ちを思うと本当に無念でなりません。私には車という武器を持って殺されたとしか思えないのです」
5月19日、多恵子さんは弁護士と共に宇都宮地検を訪れ、一通の「意見書」を提出しました。そこにはこう記されています。
『被告人についての訴因として、危険運転致死が相当であり、宇都宮地方裁判所宛に訴因変更を申請されたく、本書をもって意見する』
書面を受け取った検察は、検討の上早めに返事をしたいと答えたそうです。
「危険運転致死傷罪」に対する司法の解釈が揺れる中、大分で発生した以下の事故では、地検が訴因変更を申請し、大分地裁はそれを認めています。