【再考・犯罪被害者】〈特報〉「あちゅい」耳から消えぬ娘の声 厳罰化へ東名飲酒事故遺族23年の闘い

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「飲酒運転は悪質な犯罪であると、肝に銘じてハンドルを握ってほしい」。平成11年11月、東名高速で飲酒運転のトラックに追突されて車が炎上、夫婦は3歳と1歳の姉妹を亡くした。事故は危険運転致死傷罪成立のきっかけとなり厳罰化が進んだが、適用のハードルは高い。事故から23年を経た今も、夫婦は悪質運転の根絶に向けて闘い続けている。

「かなこちゃん、ちかこちゃん。久しぶりにあなたたちに風船を飛ばせます。うれしいよ! ママ」



生きていれば、奏子ちゃんは26歳、周子ちゃんは24歳。平成27年の命日以降、受け取った賠償金の一部を2人からの「給料」として事故遺族の支援団体などに寄付している。


事故は11年11月28日、箱根での温泉旅行から千葉市の自宅への帰り道の東名高速上で起きた。飲酒運転で蛇行を続けていたトラックが、郁美さんが運転していた車に追突。車は炎上し、後部座席に座っていた奏子ちゃんと周子ちゃんが亡くなり、保孝さんは全身に大やけどを負った。「あちゅい」と泣く奏子ちゃんの声が、今も頭を離れない。


業務上過失致死傷罪などで起訴された当時55歳の運転手の男に対する判決は懲役4年。失われた幼い2人の命の重さと比べ、納得できる結果ではなかった。「飲酒運転は過失ではない」。夫妻は国会に働きかけ、「危険運転致死傷罪」が2度目の命日の13年11月28日に成立した。


飲酒運転の厳罰化や世論の高まりもあり、11年に1257件だった飲酒運転による死亡事故は、令和3年には152件と大幅に減少。それでもゼロには遠く、郁美さんは「飲酒事故は減少し効果は感じるが、本当に悪質な運転はなくなっていない」と批判する。

3年6月、千葉県八街(やちまた)市で小学生5人が飲酒運転のトラックにはねられ死傷した事故では、職業運転手の常習的な飲酒運転という点が東名事故と酷似し、「無力感を感じた」。事故現場で「飲酒運転を無くします。力を貸してください」などと書き添えた花を手向け、裁判も傍聴した。