北のミサイル発射、米国主導の非難声明案に中露が反対…国連安保理の機能不全浮き彫り

 北朝鮮が4日に日本列島上空を通過する中距離弾道ミサイルを発射したことを受け、国連安全保障理事会は5日午後(日本時間6日午前)、公開の緊急会合を開催したが、米国主導の非難声明案に中露が反対し、合意できなかった。北朝鮮は6日朝、中距離弾道ミサイルの発射は米韓合同訓練への「対応措置」だったと言明するとともに、新たに短距離弾道ミサイル2発を発射した。朝鮮半島近海に空母を展開する米軍との間で緊張が高まっている。

 【ニューヨーク=寺口亮一】4日の発射を非難する安保理の報道機関向けのプレス声明をめぐっては、本来ならば弾道ミサイル発射を禁じた決議違反として対北追加制裁の議論も想定されたが、米国が安保理としての一致した意思表示を優先してハードルを下げた側面が強い。それにもかかわらず、中露が反対したことで安保理の機能不全が一層浮き彫りになった。

 公開会合では、日本上空を通過した発射に日本の安全を脅かすとして米欧などから非難が相次いだ。米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使は「米国は、北朝鮮が同盟国や世界を脅かすのを見逃すことはない」と述べて、安保理の結束した対応が必要だと訴えた。

 これに対し、中国の耿爽国連次席大使は「北朝鮮のミサイル発射は(朝鮮半島周辺での)米国などの合同軍事演習の前後に起きている」と語り、米国をけん制した。ロシアも同調した。

 続いて、非公開会合があり、プレス声明について協議したが、国連外交筋によると、中露は「緊張緩和につながらない」として同意しなかった。プレス声明に法的拘束力はないが、発表には全理事国の同意が必要だ。中露は今年5月、北朝鮮の弾道ミサイル発射を巡る米提案の制裁強化決議案に拒否権を行使した。

 会合後、米欧とブラジル、インド、アラブ首長国連邦(UAE)の安保理理事国9か国と日韓の計11か国は4日の発射を「強く非難する」との共同声明を発表した。米国は、安保理として声明を発表するため協議を続ける方針だが、中露が同意する可能性は低い。

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