中国とロシアの「限界なき」友情にもかかわらず、習近平国家主席はウラジーミル・プーチン大統領に対して、多少なりともいらだっているように思える。その理由を探るには、エネルギーセクターに目を向けてみるといい。
中国経済は今のところ、石炭・石油火力発電に大きく依存しており、ガス発電への移行は長く、コストのかかる道のりだ。
中国はかねて、世界でも石炭火力発電がとりわけ盛んだ。品質には問題があるものの、巨大な石炭の埋蔵量を抱えるためだ。米国や欧州では近年、エネルギーミックスに占める天然ガスの割合がそれぞれ約30%、25%に達している。これに対し、中国は2020年時点で1次エネルギー消費に占めるガスの割合は8.4%にとどまる。石炭は57%だ。
中国では価格統制がとられているため、国内の発電所や石油消費産業に対するコスト圧力は幾分軽減されているものの、大幅なディスカウント水準にあるロシア産石油ですら、中国が19年終盤に支払っていた水準からは約4割増だ。石炭を取り巻く状況はさらに悪い。CEICのデータによると、中国の石炭輸入価格は8月、平均でトン当たり140ドルと、19年終盤の70ドル程度から跳ね上がっている。輸入分の一部は国産品で代用できるかもしれないが、中国産の石炭は往々にして低品質で、発電所は通常、高品質のインドネシア産、またはオーストラリア産の石炭と混ぜて使う必要がある。つまり、一定の痛みは避けられない。
パイプラインが整備され、ディスカウント水準にあるロシア産ガスを大量に運ぶことが可能になれば、いつかは中国のエネルギー集約型産業にも、持続的な恩恵が及ぶだろう。
とはいえ、中国は今のところ、経済が支援を切実に必要としている状況にありながらも、割高な石炭と石油を使うしかない。習氏が苦々しい表情を浮かべているのも無理はないだろう。
https://jp.wsj.com/articles/china-will-benefit-from-cheap-russian-gaseventually-11664147487