通常の訓練だと言われて参加したら、ウクライナ侵攻だった──そんな恐ろしい経験をしたロシア兵が、戦場で見てきたものをSNSで公開したことで話題になっている。状況をまったく把握していない指揮官、錆びついた古い武器、そして物資不足ゆえに起きる略奪……彼の綴った手記に残されているのは、まったく統率の取れていないロシア軍の実態だった。

フィラティエフが負傷して第一線から退いたのは4月上旬のことだ。それから5週間、ウラジーミル・プーチン大統領の残虐な侵略が引き起こした惨状に思い悩み、戦争の真実を母国に伝えることでそれを止めることができればと、記憶を綴ることにした。



2月24日:無計画な戦争に突入

午前4時頃、目を開けると轟音や地響きが聞こえた。火薬のにおいもする。トラックから外を見ると、砲撃で空が明るく照らされていた。

何が起きているのか。誰が、どこから、誰に向かって撃っているのか。何もわからなかったが、食料、水、睡眠の不足からくる倦怠感は消えた。目を覚ますためにタバコに火をつける。

車列の10~20キロ前方から砲撃が行われていることがわかった。皆が目を覚ましてタバコを吸い始め、誰かが「始まったぞ」とつぶやいた。作戦が必要だ。

夜が明け、午前6時頃だろうか。日が昇ると、ヘリコプターと航空機それぞれ十数機と、走っていく装甲戦闘車両が見えた。戦車も現れ、掲げられたロシア国旗の下に何百もの装備品が積まれていた。

午後1時には広大な原野に移動し、乗っていたトラックは泥に埋もれた。私は緊張していた。広い原野の真ん中に30分も立ち止まっている大規模な隊列は、格好の標的だろう。敵に気づかれたら終わりだ。

大勢がトラックから降りて煙草を吸い始め、辺りを見回した。ヘルソンに向かい、ドニエプル川に架かる橋を占拠せよという命令だった。

何か世界規模のことが起きていることは理解できたが、具体的に何かはわからない。頭の中でいろいろな考えが巡る。ただウクライナを攻撃するだなんて、無理だろう。

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https://courrier.jp/news/archives/300562/