【台北、北京時事】台湾を取り囲む6カ所の海空域での中国軍の軍事演習が5日、開始から2日目に入った。台湾国防部(国防省)によると、中国軍機と軍艦が幾度も台湾海峡の中間線を越えて訓練を行った。台湾軍は直ちに警報を発し、航空偵察部隊や軍艦を派遣して対応。国防部は「高度に挑発的な行為だ」と中国軍を批判したが、蔡英文総統は抑制的な対応に努めている。
 演習は7日までの予定。初日の4日には、26年ぶりに台湾周辺海域に向け弾道ミサイル11発が発射され、一部が台湾上空を通過して日本の排他的経済水域(EEZ)に落下する異例の事態となった。中国軍が発射した弾道ミサイルが台湾本島の上空を通過したのは初めて。ペロシ米下院議長の訪台に反発した中国の軍事的威嚇は、1995~96年の台湾海峡危機をしのぐ水準になっている。
 ただ、台湾政府と住民は冷静だ。蔡総統は4日夜に発表したビデオ談話で「前例の無い脅威にさらされている」と語る一方で、「軍はすでに戦闘準備態勢を強化している」と毅然(きぜん)とした態度を示した。蔡氏は5日も公務を通常通りこなし、午前中に出席した民間イベントでは「皆さんが安心して、冷静を保たれることを望みます」と呼び掛けた。
 演習に関する最新情報を随時更新している台湾メディアも「初めての弾道ミサイル本島通過」に関しては抑制的な報道ぶりだ。国防部は中国軍が発射した弾道ミサイルの軌道については公表しておらず、日本の防衛省が4日夜、「4発が台湾上空を通過したと推定される」と先に発表。国防部はこの後、「大気圏外を飛行しており(台湾への)危害はない」と公表しなかった理由を説明した。
 国防部が設立したシンクタンク、国防安全研究院国防戦略・資源研究所の蘇紫雲所長は中央通信社に、台湾本島上空を通過した弾道ミサイルについて、高度が250キロを超えており、軍事的脅威としては小さく「領空侵犯ではない」と指摘。中国軍が台湾の人々を動揺させるために「『心理戦』の側面」から、上空にミサイルを飛ばしたと解説した。
 ミサイルは人口が最も集中している台北市上空を通過したとみられるが、5日の同市は平常通りのにぎわいを見せた。台湾北部を管轄する観光当局は「観光客は減っておらず、港湾でも軍事演習エリアを避けるために到着が遅れた船舶はごく少数だった」と語った。

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