古川法相は29日午前の閣議後記者会見で、技能実習制度の見直しに向けた論点を発表した。年内にも政府の関係閣僚会議の下に有識者会議を設置し、この論点をたたき台にした具体的な見直しの議論に着手する方針だ。途上国支援を目的に始まった同制度だが、外国人実習生を安価な労働力として使っている実態が存在する。国際的にも批判を浴びており、政府は抜本的な制度の見直しを急ぐ。

発表された論点には、▽実習生の日本語能力が不足し、意思疎通が困難▽不当に高額な借金を負って来日する実習生の存在▽技能実習生の保護と、受け入れ先企業の監督を行う監理団体の相談・支援体制が不十分▽転職の在り方――などの問題点が示された。

技能実習制度は、低賃金を嫌って失踪する実習生が後を絶たず、実習生に対する受け入れ先の暴行やいじめも相次いで発覚している。法務省によると、2021年は約7000人が失踪。制度開始から今年6月末までに325の受け入れ先が認定を取り消された。

古川氏は記者会見で、「国際貢献という目的と人手不足を補う労働力としての実態が 乖離かいり しているとの指摘があり、もっともだと受け止めている。着実に議論を深め、長年の課題を歴史的決着に導きたい」と述べた。

政府は、外国人の単純労働を可能とするために2019年に導入された「特定技能制度」についても、見直しを開始する。在留期間が通算で上限5年の「1号」に対し、家族を帯同しての長期滞在が可能な「2号」資格は現在、「建設」と「造船・舶用工業」の2分野でのみ認められている。人材を更に呼び込むために、「2号」対象分野の拡大を検討する方向だ。

古川氏は今年1月、技能実習と特定技能の両制度に関する勉強会を省内に発足させた。2〜6月、大学教授や弁護士から聞き取りを続け、論点を整理した。

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220729-OYT1T50197/