過酷な仕事の数々

一之瀬さんが取材したM刑務官は、死刑に立ち会う刑務官の中でも過酷な仕事について以下の3つを挙げている。

(1)死刑執行後、落下位置で死刑囚をキャッチする

「死刑囚の体が触れないように、二人一組で押さえなくてはならない」(M刑務官、以下同)

(2)死刑執行後、縄が揺れないように上部で押さえる仕事

「執行室でも縄が揺れないように、死刑囚が死亡する数十分の間、縄を押さえる必要がある」

(3)執行ボタンを押す仕事

「言わずもがな、いくつかのボタンの内にどれか1つが床が抜ける動作のスイッチになっている。手を下したという強いストレスのある仕事です」

多大な精神的負担を伴う執行ボタンを押す仕事だが、じつはボタンを押した後にも、さらなる仕事が待っているのだという。どういうことだろうかーー。


12~15分ほど見届ける

死刑の際、バタンコ(刑場の落下床)の落下地点の地下で、落ちてくる死刑囚を、刑務官がキャッチする。その後しばらくすると、執行ボタンを押した刑務官たちが遺体の回収に向かう。つまり彼らは、死刑囚が完全に死亡するまで立ち会わなければならないのだ。

「落下直後、死刑囚の心臓はまだ動いており、意識は無いが生きている状態です。その心臓がだんだんと動かなくなっていくのを見続けるのは、精神的拷問以外の何者でもない。自分が執行ボタンを押した死刑囚が死んでいくのを12~15分ほど見届けると、全員で遺体を抱え、清拭し棺桶へと横たえるのです」

「刑務官が明かす死刑の秘密」(一之瀬はち)
M刑務官は「自分が手を掛けた遺体を見るのは、言葉では言い表せない恐怖感がありました」と当時を振り返った。

 「ロープを掛けるには、ちょっとしたコツがある。まず1つ目は首の下にロープの革部分が当たるようにすること。これは落下の衝撃でロープが首に擦れて出血しないようにするためです。もう1つは、ロープの結び目が首の横につくようにすること。こうしておくと、落下の際に頭がきれいに下を向く姿になるのです。

 これらのコツを守らないと、落下の際に頚椎(けいつい)が伸びて遺体の首が伸びたり、首が切れて大出血してしまうので注意が必要。しかし、死刑という異常な空気の中、これを行うプレッシャーは半端じゃない…」(M刑務官)

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